市場の失敗とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・市場と経済の分析
ひとことで言うと
- 完全競争市場は、価格メカニズムを通じて資源を効率的に配分する機能を持っています(パレート効率性)。
- しかし、不完全競争・外部性・公共財・情報の非対称性の4つの場面では市場がうまく働かず、これを市場の失敗といいます。
- 市場の失敗は、課税・補助金・規制・政府による供給など、政府が介入する根拠になります。
この記事では、証券アナリスト1次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「市場の機能と市場の失敗」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅲ/市場と経済の分析 |
|---|---|
| 大分類 | (1) 市場メカニズムと企業行動 |
| 協会の学習ポイント | 市場メカニズムの機能性と市場の失敗が生じる原因(4つの類型)について説明できる。 |
市場の失敗とは
市場メカニズムの機能
完全競争市場では、需要と供給が一致する点で価格と数量が決まります。このとき、買い手の支払意思額(需要曲線の高さ)と売り手の限界費用(供給曲線の高さ)が一致し、消費者余剰と生産者余剰の合計である社会的余剰が最大になります。誰かの満足を下げずに他の誰かの満足を上げることができない状態をパレート効率的といい、完全競争市場の均衡はパレート効率的であるとされます(厚生経済学の第1基本定理)。
市場がうまく働かない4つの類型
ただし、この結論は完全競争の条件がそろっていることが前提です。条件が崩れると、市場に任せても効率的な結果にならず、市場の失敗が生じます。代表的な原因は次の4つです。
① 不完全競争(独占・寡占):企業が価格支配力を持つと、生産量を絞って価格を引き上げるため、取引量が過小になり死荷重が生じます。
② 外部性:ある経済主体の行動が、市場取引を通さずに他者へ影響を及ぼすことです。工場の公害のような外部不経済では生産が過大に、教育や予防接種のような外部経済では過小になります。
③ 公共財:国防や一般道路、灯台のように、非競合性(皆が同時に使える)と非排除性(お金を払わない人を排除できない)を持つ財です。お金を払わずに利用するフリーライダーが生じるため、市場では十分に供給されません。
④ 情報の非対称性:売り手と買い手が持つ情報に差がある状態です。中古車市場のように質の悪い財ばかりが残る逆選択や、保険加入後に注意を怠るようなモラルハザードが起こります。
整理しておきたいポイント
| 類型 | 何が起こるか | 主な対策 |
|---|---|---|
| 不完全競争 | 価格が高く、取引量が過小 | 独占禁止法などの競争政策、価格規制 |
| 外部不経済 | 生産・消費が過大 | ピグー税、排出規制、排出量取引 |
| 外部経済 | 生産・消費が過小 | 補助金 |
| 公共財 | フリーライダーで供給が過小 | 政府が税金で供給 |
| 情報の非対称性 | 逆選択、モラルハザード | 情報開示、保証、シグナリング、免責・自己負担 |
外部性については、交渉費用がかからず所有権がはっきりしていれば、当事者どうしの交渉で効率的な結果が実現できるというコースの定理もあわせて押さえておきましょう。
具体例で確認
ある工場が製品を作るとき、川を汚して下流の漁業に被害を与えているとします。工場は自社の生産費用(私的限界費用)だけを見て生産量を決めますが、社会全体では漁業の被害分も費用です(社会的限界費用 = 私的限界費用 + 外部費用)。
- 市場に任せると、工場は私的限界費用と価格が一致する点まで生産するため、社会的に望ましい量より多く生産してしまいます。
- そこで政府が、1単位あたりの外部費用に等しい税(ピグー税)をかけると、工場の費用が社会的費用と一致し、生産量は社会的に最適な水準まで減ります。
証券分析の世界でも、企業と投資家の間には情報の非対称性があります。情報開示制度や監査は、この問題を和らげて市場を機能させるためのしくみといえます。
試験で問われやすいポイント
- 市場の失敗の4つの類型(不完全競争・外部性・公共財・情報の非対称性)を正しく挙げられるかが問われます。
- 外部不経済では過大生産、外部経済では過小生産という方向を逆にしないよう注意しましょう。
- 公共財の性質は非競合性と非排除性です。どちらか一方だけの財(クラブ財、共有資源)と区別しましょう。
- 逆選択(契約前の情報格差)とモラルハザード(契約後の行動が見えない)の違いがひっかけになりやすいです。
- 対策の組み合わせ(外部不経済→ピグー税、公共財→政府供給など)も確認しておきましょう。
要点まとめ
- 完全競争市場の均衡は社会的余剰を最大にし、パレート効率的
- 市場の失敗は不完全競争・外部性・公共財・情報の非対称性の4類型
- 外部不経済は過大生産でピグー税、外部経済は過小生産で補助金
- 情報の非対称性は逆選択(契約前)とモラルハザード(契約後)
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
