ひとことで言うと

  • NPV(正味現在価値)は、将来のキャッシュフローの現在価値の合計から初期投資額を引いたもので、NPV>0なら投資する価値ありと判断します。
  • IRR(内部収益率)は、NPVがちょうどゼロになる割引率で、IRR>要求収益率なら投資する価値ありと判断します。
  • IRR法には、IRRが複数存在したり存在しなかったりする、投資規模の違いを反映できないなどの限界があります。

この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「NPV・IRRとIRR法の限界」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計
大分類 (2) リターン、利回り
協会の学習ポイント 正味現在価値(NPV)や内部収益率(IRR)の計算手法と内部収益率法の限界について理解する。

NPV・IRRとは

NPV(正味現在価値)

NPVは、投資によって将来得られるキャッシュフローを、要求収益率(資本コスト)で割り引いて合計し、そこから今支払う投資額を差し引いた値です。NPVがプラスなら、その投資は要求収益率を上回る価値を生み、投資家の富を増やすと考えます。NPVは金額で表される点が特徴で、複数の案から1つを選ぶ場合は、NPVが最大の案を選びます。

IRR(内部収益率)

IRRは、NPVをゼロにする割引率です。「この投資は年何%で回っているか」を表すの指標で、債券の最終利回り(複利)と同じ考え方です。IRRが要求収益率を上回れば投資を採用します。一般的な計算では試行錯誤(補間)が必要で、試験では選択肢の値を当てはめてNPVがゼロに近くなるものを探す方法も有効です。

IRR法の限界

  • IRRが複数ある・存在しない:途中でキャッシュフローの符号が2回以上入れ替わる(投資→回収→追加支出など)と、NPV=0となる割引率が複数出ることや、1つもないことがあります。
  • 規模の違いを反映しない:率の指標なので、投資額1億円でIRR15%の案より、10億円でIRR12%の案のほうがNPVは大きい、ということが起こり得ます。
  • 再投資の前提:IRR法は、途中で受け取ったキャッシュフローをIRRと同じ率で再投資できることを暗に仮定しています。NPV法は要求収益率での再投資を仮定しており、こちらのほうが現実的とされます。
  • 相互排他的な案で結論が食い違うことがあり、その場合は原則としてNPV法を優先します。

押さえておきたい公式

NPV = − I0 + CF1 ÷ (1 + k) + CF2 ÷ (1 + k)2 + … + CFn ÷ (1 + k)nkは要求収益率(資本コスト)
0 = − I0 + CF1 ÷ (1 + IRR) + … + CFn ÷ (1 + IRR)nこの式を満たす割引率がIRR
記号 意味
I0 初期投資額
CFt t年後のキャッシュフロー
k 要求収益率(資本コスト、割引率)

具体例で確認

例1:NPVとIRR

今100万円を投資し、1年後40万円、2年後50万円、3年後30万円を回収するプロジェクトを、要求収益率8%で評価します。

  1. 40 ÷ 1.08 ≒ 37.04万円
  2. 50 ÷ 1.082 ≒ 42.87万円
  3. 30 ÷ 1.083 ≒ 23.81万円
  4. NPV = 37.04 + 42.87 + 23.81 − 100 ≒ +3.72万円 → 採用

割引率を変えてNPVがゼロになる点を探すと、IRRは約10.1%です。IRR(約10.1%)>要求収益率(8%)なので、IRR法でも採用という結論になります。

例2:IRRが2つあるケース

今100万円を支出、1年後に230万円を受け取り、2年後に132万円を支出する案では、割引率10%でも20%でもNPVがゼロになります。このようにIRRが一つに定まらないと、IRR法では判断できません。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「正味現在価値(NPV)・内部収益率(IRR)の計算手法とIRR法の限界を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • NPVとIRRの定義と採用基準(NPV>0、IRR>要求収益率)が基本として問われます。
  • IRRはNPV=0となる割引率であり、選択肢を代入して確かめる解き方が有効です。
  • IRR法の限界(複数解・解なし、規模の無視、再投資の前提)を問う正誤問題に注意しましょう。
  • NPV法とIRR法で結論が食い違う場合はNPV法を優先する、という点がよく狙われます。
  • 割引率が上がるとNPVは下がるという関係も押さえておきましょう。

要点まとめ

  • NPV=将来CFの現在価値合計−投資額、プラスなら採用
  • IRR=NPVをゼロにする割引率、要求収益率を超えれば採用
  • IRR法は複数解・規模の無視・再投資の前提という限界がある
  • 結論が食い違ったらNPV法を優先する

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。