ひとことで言うと

  • FCFF・FCFEは利益と同じではなく、設備投資・運転資本・非資金費用によって利益とずれます。
  • 借入れの増減はFCFEを変えますがFCFFは変えません。配当・自社株買い・増資は、FCFEの「使い道」や資金の出入りであり、FCFEそのものは変えません。
  • 予測では、売上高などをもとに各項目を見積もる方法や、目標負債比率を使ってFCFEを求める方法が使われます。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「FCFF・FCFEと利益・資本政策、予測」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (4) 株式価値評価モデルの活用
協会の学習ポイント FCFF・FCFEと企業利益、資本政策との関係、FCFF・FCFEの予測方法について理解する。

FCFF・FCFEと資本政策とは

FCFF・FCFEを使った株価評価では、「利益とキャッシュフローはどう違うのか」「財務の方針(資本政策)が変わるとキャッシュフローはどう変わるのか」「将来の値をどう予測するのか」を理解しておくことが大切です。この学習ポイントは、この3点をまとめて扱っています。

企業利益との関係

当期純利益は会計上の儲けであり、そのまま株主に払える現金ではありません。減価償却費のような現金支出を伴わない費用は足し戻し、事業の維持・拡大に必要な設備投資や運転資本の増加は差し引きます。成長企業では設備投資や運転資本が膨らみやすく、利益が大きくてもFCFEがマイナスになることがあります。

資本政策との関係

借入れを増やすと、その年のFCFEは借入額だけ増えますが、将来は利息と返済が必要になります。一方、FCFFは資金調達の方法に左右されないため、借入れの増減では変わりません。配当や自社株買いは、株主に帰属するFCFEを実際に株主へ払い出すかどうかの問題なので、FCFE自体は変えません。増資も、借入れの純増額とは異なり、FCFEの計算には通常含めません。また、財務レバレッジを高めるとFCFEは増えやすい一方で、株主のリスクが高まり株主資本コストも上がる点を忘れないようにしましょう。

予測の方法

1つは、基準年のFCFFやFCFEに成長率を掛けて伸ばす簡便な方法です。もう1つは、売上高の予測を起点に、利益率、設備投資と減価償却費、運転資本(売上高に対する比率など)を項目ごとに見積もる方法です。FCFEの予測では、借入れの純増額を毎年予測するのが難しいため、純投資(設備投資−減価償却費+運転資本の増加)のうち一定割合を負債で賄うという目標負債比率の仮定がよく使われます。

押さえておきたい公式

FCFE = 当期純利益 − (1 − DR) × (設備投資 − 減価償却費) − (1 − DR) × 運転資本の増加目標負債比率DRで純投資の一部を借入れで賄う場合
借入れの純増額 = DR × (設備投資 − 減価償却費 + 運転資本の増加)
記号 意味
DR 目標負債比率(純投資のうち負債で賄う割合)
設備投資 − 減価償却費 純設備投資

具体例で確認

G社の来期予想は、当期純利益500、設備投資350、減価償却費200、運転資本の増加50です。純投資の40%を借入れで賄う方針です(単位:百万円)。

  1. 純投資:350 − 200 + 50 = 200
  2. 株主資本で賄う分:(1 − 0.4) × 200 = 120
  3. FCFE = 500 − 120 = 380
  4. 確認:借入れの純増額 = 0.4 × 200 = 80、FCFE = 500 + 200 − 350 − 50 + 80 = 380(一致)

同じ企業が借入れをせず(DR=0)自己資金だけで投資すると、FCFE = 500 − 200 = 300となり80減ります。FCFFはどちらの場合も変わりません。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「FCFF/FCFE・DCF法・株式価値評価を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 借入れの増加はFCFEを増やすがFCFFは不変、配当・自社株買いはFCFEを変えない、という区別が問われやすいです。
  • 目標負債比率を使ったFCFEの予測式と、(1 − DR)を掛ける対象(純投資)を正しく扱えるかが狙われます。
  • 利益が大きくても、設備投資や運転資本の増加でFCFEが小さく(マイナスに)なるケースの理由を説明させる形が考えられます。
  • レバレッジを上げるとFCFEは増えても株主資本コストも上がるという両面を、記述式で説明できるようにしておきましょう。

要点まとめ

  • 利益とFCFの差は非資金費用・設備投資・運転資本から生じる
  • 借入れの増減はFCFEを変えるがFCFFは変えない
  • 配当・自社株買いはFCFEの使い道であり、FCFE自体は変えない
  • FCFEの予測では目標負債比率の仮定がよく使われる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。