ひとことで言うと

  • 予想損失(EL:Expected Loss)は、信用リスクによって平均的に見込まれる損失で、EAD × PD × LGDで求めます。
  • 予想外損失(UL:Unexpected Loss)は、損失が平均からどれだけぶれうるかを表す標準偏差で、リスクの大きさ(必要な資本)の目安になります。
  • ELは銘柄ごとに単純に足し合わせられますが、ULはデフォルト相関によって分散効果が働くため、単純合計より小さくなります。

この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「予想損失と予想外損失」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析
大分類 (7) 社債投資と信用リスクの分析
協会の学習ポイント 信用リスクによる債券ポートフォリオの予想損失と予想外損失の算出方法と解釈方法を理解する。

予想損失と予想外損失とは

社債ポートフォリオでは、いくつかの銘柄がデフォルトして損失が出ることを前提に管理します。そのとき「平均的にどれくらい損をするか」と「運が悪いとどれくらいまで損が膨らむか」を分けて考えるのが、予想損失(EL)と予想外損失(UL)の考え方です。

予想損失(EL)

ELは、デフォルト時のエクスポージャー(EAD)、デフォルト確率(PD)、デフォルト時損失率(LGD=1 − 回収率)の積として求めます。ELは「平均的に発生するコスト」なので、本来は信用スプレッドや貸出金利、引当金でカバーすべきものと解釈されます。ポートフォリオ全体のELは、各銘柄のELをそのまま合計すれば求められます。

予想外損失(UL)

実際の損失は毎年ELどおりには発生せず、デフォルトが重なる年には大きく膨らみます。このぶれの大きさを損失の標準偏差で表したものがULです。ULは平均を超えて発生しうる損失なので、自己資本などのバッファーで備えるべきリスクと解釈されます。さらに、損失分布の裾(テール)を見て、一定の信頼水準で起こりうる最大損失(クレジットVaR)を考えることもあります。

ポートフォリオのULとデフォルト相関

複数の銘柄を組み合わせると、すべてが同時にデフォルトする可能性は低いため、ポートフォリオのULは各銘柄のULの単純合計より小さくなります(分散効果)。ただし、同じ業種・同じ景気要因に左右される銘柄が多いとデフォルト相関が高くなり、分散効果は小さくなります。ULを管理するには、銘柄数だけでなく業種や地域の集中にも注意が必要です。

押さえておきたい公式

EL = EAD × PD × LGDポートフォリオのELは各銘柄のELの合計
UL = EAD × LGD × √{PD × (1 − PD)}LGDを一定とした場合(デフォルトの有無をベルヌーイ分布とみなす)
ULP = √(Σi Σj ρij × ULi × ULj)ρij:銘柄間の損失の相関(i=jのときは1)
記号 意味
EAD デフォルト時のエクスポージャー(投資額・債権額)
PD 一定期間(通常1年)のデフォルト確率
LGD デフォルト時損失率(1 − 回収率)
ρij 銘柄iとjの損失の相関係数

具体例で確認

額面10億円の社債(PD=2%、LGD=60%)を考えます。

  1. EL = 10億 × 0.02 × 0.6 = 0.12億円(1,200万円)
  2. UL = 10億 × 0.6 × √(0.02 × 0.98) = 6億 × 0.14 = 0.84億円(8,400万円)

同じ条件の社債をもう1銘柄加えた2銘柄ポートフォリオでは、ELは0.24億円(単純合計)です。ULは相関によって次のように変わります。

  • 相関0:√(0.842 + 0.842) ≒ 1.19億円
  • 相関0.2:√(0.842 × 2 + 2 × 0.2 × 0.84 × 0.84) ≒ 1.30億円
  • 相関1:0.84 + 0.84 = 1.68億円(分散効果なし)

ELに比べてULがかなり大きいこと、そして相関が高いほどULが単純合計に近づくことがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • EL=EAD×PD×LGDと、LGD=1−回収率の関係は必須です。回収率とLGDの取り違えに注意しましょう。
  • ULは損失の標準偏差で、√{PD(1−PD)}を使う計算手順が問われやすいです。
  • ELは単純合計できるが、ULは相関を考慮して合成するため単純合計以下になる、という違いが狙われやすいです。
  • ELはスプレッドや引当金でカバーするコスト、ULは自己資本で備えるリスク、という解釈の違いを説明できるようにしましょう。
  • 2次の記述式では、ポートフォリオのEL・ULを計算させたうえで、相関や集中リスクの影響を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • EL=EAD×PD×LGD(平均的な損失、スプレッドや引当でカバー)
  • UL=損失の標準偏差(ぶれの大きさ、資本で備える)
  • ポートフォリオのELは単純合計、ULは相関を考慮して合成
  • デフォルト相関が高いほど分散効果は小さくなる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。