モンテカルロ法と格子法とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・デリバティブ分析
ひとことで言うと
- モンテカルロ法は、乱数を使って原資産価格の経路を多数発生させ、ペイオフの平均を無リスク金利で割り引いてオプション価値を求める方法です。
- 格子法は、二項ツリーや三項ツリーなどの格子の上で、満期から後ろ向きに価値を計算する方法です。
- どちらもBS式のような解析解がない経路依存型・アメリカン型・複雑な条件のオプションを評価するための数値計算手法です。
この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「モンテカルロ法・複雑な格子法」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析 |
|---|---|
| 大分類 | (3) オプション取引の仕組みと評価 |
| 協会の学習ポイント | モンテカルロシミュレーションや複雑な格子法を利用したオプション評価手法を理解する。 |
モンテカルロ法と格子法とは
ブラック=ショールズ式で評価できるのは、主に単純なヨーロピアン・オプションです。平均価格で決まるアジアン・オプション、途中で消滅するバリア・オプション、途中行使できるアメリカン・オプションなどは、きれいな式で解けないことが多くあります。そこで使われるのが、コンピュータを使った数値計算による評価手法です。
モンテカルロ・シミュレーション
リスク中立の世界で原資産価格がどう動くかをモデル化し、乱数(標準正規乱数)を使って満期までの価格の経路を何千、何万本と発生させます。各経路でオプションのペイオフを計算し、その平均を無リスク金利で割り引けば、オプション価値の推定値になります。
長所は、経路依存型のオプションや、複数の原資産にかかわる多次元の問題でも比較的簡単に扱える点です。短所は、精度を上げるには多くの試行が必要で計算に時間がかかる点と、将来から逆算して最適な行使を判断する必要があるアメリカン・オプションが苦手な点です(回帰を使う工夫などの発展的な手法もあります)。推定誤差は試行回数Nの平方根に反比例して小さくなるため、誤差を半分にするには試行回数を4倍にする必要があります。対照変量法などの分散減少法で効率を上げる工夫も使われます。
格子法(二項・三項モデルなど)
格子法は、原資産価格が取りうる値を格子(ツリー)状に並べ、満期のペイオフから後ろ向きに期待値をとって割り引いていく方法です。二項モデルは各ノードで「上昇・下落」の2方向ですが、三項モデルでは「上昇・横ばい・下落」の3方向に分岐させることで、少ない期間数でも精度を上げやすくなります。後ろ向きに計算するため、各ノードで行使価値と比較できるアメリカン・オプションの評価が得意です。一方、平均価格のように経路全体の情報が必要なオプションは、そのままでは扱いにくくなります。
押さえておきたい公式
| 項目 | モンテカルロ法 | 格子法(二項・三項) |
|---|---|---|
| 計算の向き | 現在から将来へ経路を発生 | 満期から現在へ後ろ向き |
| 得意なもの | 経路依存型、多資産 | アメリカン(途中行使) |
| 苦手なもの | アメリカン(工夫が必要) | 強い経路依存型、多資産 |
| 精度の上げ方 | 試行回数を増やす、分散減少法 | 期間を細かくする、三項化 |
具体例で確認
株価100円、権利行使価格100円、残存1年、無リスク金利5%、ボラティリティ20%のヨーロピアン・コールを、あえて4本の経路だけで評価してみます。(r − σ2 ÷ 2) × T = 0.03なので、ST = 100 × exp(0.03 + 0.2 × ε)です。
- ε = 1.0 → ST ≒ 125.86円、ペイオフ25.86円
- ε = −0.5 → ST ≒ 93.24円、ペイオフ0円
- ε = 0.3 → ST ≒ 109.42円、ペイオフ9.42円
- ε = −1.2 → ST ≒ 81.06円、ペイオフ0円
- 平均8.82円を割り引くと、8.82 × e−0.05 ≒ 8.39円
BS式による正解は約10.45円なので、4本では大きくずれます。同じ計算を乱数で1,000本行うと標準誤差は約0.46円、10万本では約0.05円まで小さくなり、推定値はBS価格の近くに収束していきます。
試験で問われやすいポイント
- モンテカルロ法の手順(リスク中立の世界で経路を発生→ペイオフの平均→無リスク金利で割引)がよく問われます。
- モンテカルロ法は経路依存型に強くアメリカン型が苦手、格子法はアメリカン型に強いという得意・不得意の対比が確認されやすいです。
- 誤差が√Nに反比例する(誤差を半分にするには試行回数4倍)という性質や、分散減少法の目的も押さえましょう。
- 経路を発生させるときに、現実の期待収益率ではなく無リスク金利をドリフトに使う点がひっかけになりやすいです。
- 記述式では、評価対象のオプションの性質に応じてどちらの手法を選ぶべきかを、理由とともに説明できるようにしておくと安心です。
要点まとめ
- モンテカルロ法=乱数で経路を多数発生させ、ペイオフ平均を割り引く
- 格子法=二項・三項ツリーで満期から後ろ向きに計算する
- モンテカルロは経路依存型・多資産に強く、格子法はアメリカン型に強い
- モンテカルロの誤差は試行回数の平方根に反比例する
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
