税効果会計の日本基準とIFRSの違いとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- 税効果会計の基本的な考え方(一時差異に税率を掛けて繰延税金資産・負債を計上する)は、日本基準とIFRS(IAS第12号)で共通しています。
- 大きな違いは繰延税金資産の回収可能性の判断方法で、日本基準は企業を5つに分類する具体的な指針に沿って判断し、IFRSは「課税所得が生じる可能性が高い範囲」という原則で判断します。
- ほかに、連結上の未実現利益に適用する税率や、使用する税率の考え方にも違いがあります。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「税効果会計の基準差」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (7) 税効果会計 |
| 協会の学習ポイント | 税効果会計について、日本基準とIFRSの相違点を理解する。 |
税効果会計の基準差とは
税効果会計は、会計上の利益と税務上の課税所得のずれ(一時差異)を調整し、税引前当期純利益と法人税等の対応関係を適切にするための会計処理です。日本基準もIFRSも「資産負債法」の考え方をとり、将来減算一時差異には繰延税金資産、将来加算一時差異には繰延税金負債を計上する、という骨格は同じです。
そのうえで、財務分析で押さえておきたい違いがいくつか残っています。とくに繰延税金資産は「将来、税金を減らせる」という見込みにもとづく資産なので、その計上の判断基準の違いは、純資産や利益の水準に直接影響します。
① 繰延税金資産の回収可能性
日本基準では、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」にもとづき、過去の課税所得の状況や将来の見通しなどから企業を分類1〜分類5に区分し、分類に応じて計上できる範囲を判断します。たとえば、安定して十分な課税所得を計上している企業は原則として全額計上でき、重要な税務上の欠損金が続いている企業は原則として計上が認められない、というように判断の枠組みが具体的に定められています。
IFRSでは、将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性が高い(probable)範囲で認識するという原則が示されているだけで、日本基準のような企業分類はありません。企業ごとの状況にもとづいて判断するため、同じ状況でも計上額が日本基準と異なることがあります。
② 連結上の未実現利益の消去と税率
親子会社間の取引で生じた未実現利益を消去するとき、日本基準では売却元で支払った税金を繰り延べる考え方をとり、売却元の税率を使います。IFRSでは資産を保有する購入側の税率を使います。税率の異なる国の子会社との取引が多い企業では、この違いが税金費用に影響します。
③ 使用する税率
日本基準では、決算日までに国会で成立した税法にもとづく税率を用います。IFRSでは、報告期間末までに制定された、または実質的に制定された税率を用います。税制改正のタイミングによっては、どの時点で繰延税金資産・負債を再計算するかが両基準でずれることがあります。
整理しておきたいポイント
| 論点 | 日本基準 | IFRS(IAS第12号) |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 資産負債法 | 資産負債法 |
| 繰延税金資産の回収可能性 | 企業分類(分類1〜5)に応じて判断する具体的な指針がある | 課税所得が生じる可能性が高い範囲で認識(原則ベース) |
| 未実現利益消去に係る税率 | 売却元の税率 | 購入側(保有側)の税率 |
| 使用する税率 | 決算日までに成立した税法の税率 | 制定または実質的に制定された税率 |
| 貸借対照表の表示 | 投資その他の資産・固定負債に表示 | 非流動項目として表示 |
具体例で確認
日本の親会社P社(実効税率30%)が、海外子会社S社(税率20%)に商品を販売し、期末にS社の在庫に未実現利益100が残っているとします。
- 日本基準:売却元P社の税率30%を用い、繰延税金資産は100×30%=30となります。
- IFRS:在庫を保有するS社の税率20%を用い、繰延税金資産は100×20%=20となります。
同じ取引でも、計上される繰延税金資産と税金費用が10異なります。また、業績が不安定な企業では、回収可能性の判断の違いから、繰延税金資産の計上額そのものが大きく変わることもあります。IFRS適用企業と日本基準適用企業の実効税率や自己資本比率を比べる際には、こうした違いを意識しましょう。
試験で問われやすいポイント
- 日本基準の回収可能性は企業分類(分類1〜5)による判断、IFRSは「可能性が高い範囲」という原則ベース、という対比が基本です。
- 未実現利益の消去に使う税率は、日本基準が売却元、IFRSが購入側。逆に覚えないよう注意しましょう。
- 繰延税金資産の計上額が変わると、当期純利益・純資産・ROE・自己資本比率に影響する流れを説明できるようにしておきましょう。
- 記述式では、基準差が財務指標の比較可能性にどう影響するかを文章で説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- 税効果会計の骨格(資産負債法)は日本基準とIFRSで共通。
- 回収可能性は、日本基準が企業分類による具体的な指針、IFRSが原則ベースで判断。
- 未実現利益の消去に係る税率は、日本基準が売却元、IFRSが購入側。
- 基準差は純資産や実効税率の比較に影響するため、分析時に注意する。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
