ひとことで言うと

  • クレジットリスク(信用リスク)は、債券の発行体や取引相手が約束どおりに支払えなくなる(デフォルトする)ことで損失を被るリスクです。
  • 評価の基本はデフォルト確率(PD)デフォルト時損失率(LGD=1−回収率)エクスポージャー(EAD)の3つで、期待損失=PD×LGD×EADと表します。
  • 管理には、与信限度の設定、担保・ネッティング、分散、CDSなどによるヘッジが使われます。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「クレジットリスクの評価と管理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (3) ポートフォリオの構築とリスク管理
協会の学習ポイント クレジットリスクの基本的な概念と評価・管理手法について理解する。

クレジットリスクとは

クレジットリスクは、社債・貸付金・デリバティブ取引などで、相手方が元利金や決済金を支払えなくなることによる損失のリスクです。デフォルトそのものだけでなく、格付けの引下げや信用スプレッドの拡大によって保有債券の時価が下がるリスク(スプレッド・リスク、格付け遷移リスク)も広い意味で含まれます。デリバティブ取引の相手方の信用リスクは、カウンターパーティ・リスクと呼ばれます。

評価の3つの要素

  • デフォルト確率(PD):一定期間(通常1年)にデフォルトする確率。格付けごとの過去のデフォルト実績、財務データを使った統計モデル、株価と負債から推定する構造型モデル(マートン・モデル)などで推定します。
  • デフォルト時損失率(LGD):デフォルトした場合に回収できない割合で、1−回収率です。担保や債権の優先順位(シニアか劣後か)で大きく変わります。
  • エクスポージャー(EAD):デフォルト時点でのリスクにさらされた金額。貸付なら残高ですが、デリバティブでは市場の動きで将来の金額が変わるため、将来のエクスポージャーも見積もります。

期待損失と非期待損失

平均的に見込まれる損失が期待損失(EL)で、本来は金利や信用スプレッドなどの収益で賄うべきコストです。一方、期待を上回って発生しうる損失が非期待損失(UL)で、これに備えるのが自己資本です。ポートフォリオ全体では、個々の債務者のデフォルトの相関(景気悪化時にまとめてデフォルトしやすいか)が非期待損失の大きさを左右し、信用VaRなどで計測されます。信用損失の分布は、ほとんどの場合は小さな損失ですみ、まれに非常に大きな損失が出る、右に長く裾を引いた形になるのが特徴です。

管理の手法

主な管理手法は、①債務者・業種・国ごとの与信限度(リミット)を設け集中を避けること、②担保や保証の取得、デリバティブのネッティングや担保(証拠金)のやり取りでエクスポージャーを減らすこと、③分散、④CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などでリスクを移転すること、⑤格付けや信用スプレッドの継続的なモニタリングです。

押さえておきたい公式

期待損失(EL) = PD × LGD × EADLGD = 1 − 回収率
信用スプレッド ≒ PD × LGDリスク中立で他のプレミアムを無視した近似(年率)
PD デフォルト確率
LGD デフォルト時損失率(1−回収率)
EAD デフォルト時のエクスポージャー

具体例で確認

ある社債に10億円投資しており、1年間のデフォルト確率が2%、デフォルト時の回収率が40%と見込まれるとします。

  • LGD = 1 − 40% = 60%
  • 期待損失 = 2% × 60% × 10億円 = 1,200万円(投資額の1.2%)
  • 信用スプレッドの目安 ≒ 2% × 60% = 1.2%

実際の社債スプレッドは、この期待損失に加えて、損失のばらつきに対するリスク・プレミアムや流動性プレミアムを含むため、通常はこれより大きくなります。また、デフォルトすれば損失は6億円(10億円×60%)にのぼるため、期待損失だけでなく、集中を避けて非期待損失を抑える管理が重要です。

試験で問われやすいポイント

  • 期待損失=PD×LGD×EADの計算と、LGD=1−回収率の変換は確実にできるようにしましょう。
  • 期待損失はスプレッドなどの収益で賄うコスト、非期待損失は自己資本で備えるリスク、という区別が問われやすいです。
  • 信用損失の分布は右に裾の長い非対称な形で、デフォルト相関が高いほどポートフォリオの非期待損失が大きくなる点を押さえましょう。
  • 担保・ネッティング・与信限度・分散・CDSといった管理手法と、それぞれがPD・LGD・EADのどれを下げるのかを整理しておくと有効です。
  • 記述式では、信用スプレッドとデフォルト確率・回収率の関係を計算させたり、スプレッドが期待損失より大きい理由を説明させたりする形が考えられます。

要点まとめ

  • クレジットリスクは発行体や取引相手のデフォルト、格下げ・スプレッド拡大による損失のリスク。
  • 評価の3要素はPD、LGD(1−回収率)、EAD。期待損失=PD×LGD×EAD。
  • 期待損失は収益で、非期待損失は自己資本で備える。
  • 与信限度、担保・ネッティング、分散、CDSなどで管理する。

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