ひとことで言うと

  • エマージング(新興国)市場には、先進国と比べて政治・制度リスク、流動性リスク、資本規制、情報開示の不十分さなどの固有のリスクがあります。
  • 新興国通貨は変動が大きく、危機時に急落しやすいうえ、金利が高いためヘッジコストも大きくなりがちです。
  • 通貨の管理には、NDF(ノン・デリバラブル・フォワード)やプロキシー・ヘッジなど、新興国向けの手法が使われます。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「エマージング市場のリスク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (6) 国際証券投資と為替管理、資産配分
協会の学習ポイント エマージング市場に固有のリスクとエマージング通貨エクスポージャーの管理方法について理解する。

エマージング市場のリスクとは

エマージング市場は、高い経済成長への期待や先進国との相関の低さから、分散投資の対象として注目されます。一方で、先進国市場を前提にしたリスク管理では捉えきれない固有のリスクがあります。

主な固有リスク

  • 政治・カントリー・リスク:政権交代による政策の急変、資産の接収、地政学的な緊張など。
  • 制度・ガバナンスのリスク:会計基準や情報開示、少数株主の保護、法制度の執行が十分でないことがあります。
  • 流動性リスク:売買が少なく、売りたいときに売れない、大きな価格変動を招くといった問題が起こりやすいです。
  • 資本規制リスク:外国人投資の制限や、資金の送金・本国への回収の制限が導入されることがあります。
  • 分布の特徴:リターンの分布が正規分布から外れ、急落(ファット・テール)が起こりやすく、危機時には市場どうしの相関が高まって分散効果が薄れがちです。

エマージング通貨の特徴と管理

新興国通貨は変動が大きく、平時は高金利によるキャリー収益が得られても、世界的なリスク回避の局面では一斉に急落しやすいという特徴があります。金利差が大きいため、先進国通貨に比べてヘッジコストも高くなります。

また、資本規制のために通貨の受け渡しができない国では、満期に元本を交換せず差額だけをドルなどで決済するNDF(ノン・デリバラブル・フォワード)が利用されます。流動性の高い別の通貨で代わりにヘッジするプロキシー・ヘッジもありますが、両通貨の動きがずれるベーシス・リスクが残ります。ヘッジのコストと効果を比べて、あえてヘッジしない(通貨リスクも収益源と考える)判断がとられることもあります。

整理しておきたいポイント

手法 内容 注意点
為替予約(受渡しあり) 通常の先渡取引でヘッジ 高金利通貨ほどヘッジコストが大きい
NDF 元本を交換せず差額をドルなどで決済 規制下の通貨でも使えるが市場の厚みに差がある
プロキシー・ヘッジ 相関の高い流動性のある通貨でヘッジ ベーシス・リスクが残る
通貨オプション 急落だけに備える 変動が大きくプレミアムが高い

具体例で確認

ある新興国の短期金利が10%、円の短期金利が0.5%だとします。この国の債券を円ベースでフルヘッジすると、ヘッジコストはおおむね金利差の約9.5%になり、債券の高い利回りの大部分が打ち消されます。

そこでこの投資家は、通貨は一部だけヘッジし、残りは高金利を収益源として保有することにしました。ただし、世界的な金融不安で投資資金が新興国から一斉に流出すると、株価・債券価格・通貨が同時に下落し、損失が重なる可能性があります。また、その国が資本規制を導入すれば、資金を引き揚げたくても送金できないおそれもあります。こうした点を踏まえ、投資比率の上限や流動性の確保、NDFの活用などを事前に決めておくことが重要です。

試験で問われやすいポイント

  • エマージング市場固有のリスク(政治、制度・ガバナンス、流動性、資本規制)を列挙できるか。
  • 危機時に相関が上昇し、分散効果が弱まる点。
  • 高金利通貨はヘッジコストが大きく、ヘッジするとキャリーの妙味が消えやすいこと。
  • NDFの仕組み(差額決済)と、プロキシー・ヘッジのベーシス・リスク。
  • 記述式では、新興国通貨エクスポージャーの管理方法を、コストとリスクの両面から説明できるようにしておきましょう。

要点まとめ

  • 新興国には政治・制度・流動性・資本規制などの固有リスクがある。
  • リターン分布は急落が起こりやすく、危機時は相関が高まる。
  • 新興国通貨は変動が大きく、ヘッジコストも高い。
  • NDF、プロキシー・ヘッジ、オプションなどを、コストと効果を比べて使い分ける。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。