ひとことで言うと

  • FCF(フリー・キャッシュフロー)は、事業が生み出す現金から必要な投資を差し引いた、すべての資金提供者(株主と債権者)に分配できる現金です。
  • FCF = 税引後営業利益(NOPAT)+ 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増加で予測します。
  • 予測したFCFをWACCで割り引き、予測期間後のターミナル・バリューを加えて事業価値を求めます。

この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「FCFの予測と事業価値の評価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス
大分類 (4) 投資の意思決定
協会の学習ポイント フリー・キャッシュフロー(FCF)の予測と事業価値の評価方法について理解する。

FCFの予測と事業価値の評価とは

事業価値は、その事業が将来生み出すFCFの現在価値の合計です。ここでいうFCFは、株主だけでなく債権者も含めたすべての資金提供者に帰属するキャッシュフローで、フリー・キャッシュフロー・トゥ・ザ・ファーム(FCFF)とも呼ばれます。そのため、割引率には株主資本コストと負債コストを加重平均したWACCを使います。

FCFの組み立て方

出発点は営業利益(EBIT)です。支払利息を差し引く前の利益を使うのは、資金調達の方法(負債か株式か)の影響をキャッシュフローから切り離すためです。これに「負債がないとした場合の税金」をかけて税引後営業利益(NOPAT)を求めます。負債の節税効果はWACCの中で考慮するので、FCFには含めません。

次に、現金の支出を伴わない減価償却費を足し戻し、将来の事業のために必要な設備投資運転資本の増加を差し引きます。成長する企業では売上の増加に伴って売掛金や在庫が増えるため、運転資本の増加が現金の流出になる点が重要です。

予測の手順と事業価値

一般的には、売上高の予測から始め、利益率、設備投資と減価償却の関係、運転資本の回転期間などの前提を置いて、5〜10年程度の予測期間のFCFを見積もります。予測期間より先は、一定の成長が続くと仮定したターミナル・バリュー(継続価値)でまとめて評価します。こうして求めた事業価値に、事業に使っていない現預金や投資有価証券などの非事業資産を加えると企業価値になり、そこから有利子負債などを差し引くと株主価値が求まります。

押さえておきたい公式

FCF = EBIT × (1 − t) + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増加EBIT×(1−t)が税引後営業利益(NOPAT)
事業価値 = Σ FCFt ÷ (1 + WACC)t + TVn ÷ (1 + WACC)nt=1〜nが予測期間
TVn = FCFn+1 ÷ (WACC − g)定率成長を仮定したターミナル・バリュー(WACC>gが前提)
記号 意味
EBIT 営業利益(利払前・税引前の利益)
t 法人税率(実効税率)
WACC 加重平均資本コスト
TVn 予測最終年度n時点のターミナル・バリュー
g 予測期間後の永久成長率

具体例で確認

ステップ1:1年目のFCF

営業利益200、税率30%、減価償却費50、設備投資70、運転資本の増加20とします。

  1. NOPAT:200 × (1 − 0.3) = 140
  2. FCF:140 + 50 − 70 − 20 = 100

ステップ2:事業価値

FCFが1年目100、2年目105、3年目110、4年目以降は2%で成長し、WACCは7%とします。

  1. 予測期間のFCFの現在価値:100 ÷ 1.07 + 105 ÷ 1.072 + 110 ÷ 1.073 ≒ 93.46 + 91.71 + 89.79 ≒ 274.96
  2. 3年目末のTV:110 × 1.02 ÷ (0.07 − 0.02) = 2,244
  3. TVの現在価値:2,244 ÷ 1.073 ≒ 1,831.77
  4. 事業価値:274.96 + 1,831.77 ≒ 2,106.73

事業価値の約87%をターミナル・バリューが占めており、長期の前提が評価結果を大きく左右することがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • FCFの計算式(NOPAT+減価償却費−設備投資−運転資本の増加)と、各項目の符号が問われやすいです。
  • 税金はEBITに対して計算し、支払利息や節税効果はFCFに入れない(WACCで考慮する)点がひっかけになりやすいです。
  • 運転資本は「残高」ではなく増加額を差し引く点に注意しましょう。
  • 事業価値→企業価値(非事業資産を加算)→株主価値(有利子負債を控除)という流れを押さえましょう。
  • 記述式では、予測表を与えられてFCFと事業価値を計算させ、計算過程を示させる形や、TVの比重が大きいことの問題点を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • FCFは株主と債権者の両方に分配可能な現金で、WACCで割り引く
  • FCF=EBIT×(1−t)+減価償却費−設備投資−運転資本の増加
  • 事業価値=予測期間のFCFの現在価値+TVの現在価値
  • 非事業資産を加えて企業価値、有利子負債を引いて株主価値

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