繰延税金資産の回収可能性とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- 繰延税金資産は、将来の税金を減らす効果のうち、実際に回収できる(将来の課税所得と相殺できる)見込みがある分だけ計上できます。
- 日本では会社を過去の業績などで分類1〜5に分け、回収可能と認める範囲を決める実務が定着しています。
- 業績悪化で回収可能性が下がると繰延税金資産を取り崩し、税金費用が増えて純利益が減ります。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「繰延税金資産の回収可能性」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (7) 税効果会計 |
| 協会の学習ポイント | 繰延税金資産の回収可能性を理解する。 |
繰延税金資産の回収可能性とは
税効果会計では、会計上の資産・負債と税務上の資産・負債の差額(一時差異)や税務上の繰越欠損金について、将来の税金への影響を繰延税金資産・負債として計上します。たとえば、会計上は費用にした引当金が税務上はまだ損金にならない場合、将来損金になった期に税金が減るため、その効果を繰延税金資産として計上します。
ただし、税金が減るのは将来その会社に課税所得があるときだけです。赤字が続いて課税所得が出なければ、減らすべき税金そのものがなく、繰延税金資産は「絵に描いた餅」になってしまいます。そのため、繰延税金資産は将来の税金を減らす効果が見込める範囲、つまり回収可能性がある分だけ計上します。回収が見込めない部分は評価性引当額として控除されます。
回収可能性を判断する材料
- 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得(本業の稼ぐ力による将来の課税所得)
- タックス・プランニングに基づく課税所得(含み益のある資産の売却予定など)
- 将来加算一時差異の解消見込み
企業の分類(日本の実務)
日本の適用指針(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針)では、過去や当期の課税所得の状況、繰越欠損金の有無などから会社を5つに分類し、分類ごとに回収可能とする範囲の目安を定めています。
整理しておきたいポイント
| 分類 | 会社の状況のイメージ | 回収可能とする範囲の目安 |
|---|---|---|
| 分類1 | 過去・当期とも将来減算一時差異を十分上回る課税所得 | 原則として全額 |
| 分類2 | 臨時的な原因を除き、安定的な課税所得 | 解消時期をスケジューリングできる分 |
| 分類3 | 臨時的な原因を除き、課税所得が大きく増減 | おおむね5年以内の課税所得の見積り内 |
| 分類4 | 重要な税務上の欠損金がある等 | 翌期の課税所得の見積り内 |
| 分類5 | 継続的に重要な欠損金が発生 | 原則として回収可能性なし |
具体例で確認
実効税率30%の会社で、税引前当期純利益1,000、当期の法人税等(納付額)300とします。期首の繰延税金資産は300でしたが、業績悪化で分類が引き下げられ、回収可能と判断できるのは180だけになりました。
- 取崩額:300−180=120。繰延税金資産を120減らし、同額を法人税等調整額(税金費用の増加)として計上します。
- 税金費用合計:300+120=420
- 当期純利益:1,000−420=580(取崩しがなければ700)
- 税負担率:420÷1,000=42%で、法定実効税率30%を大きく上回ります。
逆に業績が回復して分類が引き上げられると、繰延税金資産が追加計上され、税金費用が減って利益が押し上げられます。税負担率が法定実効税率から大きく離れているときは、こうした回収可能性の見直しがないか確認することが分析の基本です。
試験で問われやすいポイント
- 回収可能性の判断根拠が「将来の課税所得」であることと、その3つの源泉を押さえましょう。
- 取崩しは法人税等調整額を通じて税金費用を増やし、純利益と純資産を減らすという影響の方向が問われやすいです。
- 取崩し後の税負担率(実効税率との差)を計算させる問題に注意しましょう。
- 分類1〜5の考え方と、分類が下がるほど計上できる範囲が狭くなる点が論点です。
- 2次の記述式では、繰延税金資産が大きい企業の利益の質や自己資本の実質を説明させる形も考えられます。
要点まとめ
- 繰延税金資産は将来の課税所得で回収できる見込みの分だけ計上する。
- 回収できない分は評価性引当額として控除する。
- 日本の実務では会社を分類1〜5に分けて回収可能な範囲を判断する。
- 取崩しは税金費用を増やし、純利益・純資産を減らす。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
