ベクトルの微分とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・数量分析と確率・統計
ひとことで言うと
- ベクトルの微分とは、関数を各成分で偏微分した結果を、1本のベクトルとして並べて書く表記法です。
- 重要な公式は ∂(a’x)/∂x = a と、対称行列Aについての ∂(x’Ax)/∂x = 2Ax の2つです。
- ポートフォリオ分散 w’Σw の最小化など、最適化問題を簡潔に解くために使います。
この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「ベクトルの微分」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計 |
|---|---|
| 大分類 | (10) ベクトルと行列 |
| 協会の学習ポイント | 関数を成分とするベクトルの微分表記、簡単な関数の計算ができる。 |
ベクトルの微分とは
ポートフォリオの分散 f(w) = w’Σw は、ウェイト w1, …, wn という複数の変数の関数です。このような関数の最小値や最大値を探すには、各変数で偏微分して0とおくのが基本です。ベクトルの微分は、このn個の偏微分を縦に並べて1本のベクトル(勾配ベクトル)として書く方法です。
∂f/∂w = (∂f/∂w1, ∂f/∂w2, …, ∂f/∂wn)’ と定義すると、「すべての偏微分が0」という条件を ∂f/∂w = 0(ゼロベクトル)と1本の式で書けます。
1次式(内積)の微分
f(x) = a’x = a1x1 + … + anxn をxiで偏微分するとaiです。これを並べると ∂(a’x)/∂x = a となり、1変数の「(ax)’ = a」とそっくりの形になります。ポートフォリオの期待リターンw’μをwで微分すればμです。
2次形式の微分
f(x) = x’Ax の微分は一般に (A + A’)x ですが、Aが対称行列(A’ = A)なら ∂(x’Ax)/∂x = 2Ax となります。1変数の「(ax2)’ = 2ax」に対応する形です。分散共分散行列Σは対称なので、∂(w’Σw)/∂w = 2Σw が成り立ちます。
最適化への使い方
たとえば「w’1 = 1(ウェイトの合計が1)のもとで w’Σw を最小化する」問題は、ラグランジュ関数 L = w’Σw − λ(w’1 − 1) をwで微分して0とおき、2Σw − λ1 = 0 という条件を得ます。これを解くと最小分散ポートフォリオが求まります。また、ポートフォリオ標準偏差σpをwで微分した Σw ÷ σp は、各資産の限界リスク寄与として使われます。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| x、w | 変数ベクトル(ウェイトなど) |
| a | 定数ベクトル |
| A、Σ | 定数行列(Σは対称な分散共分散行列) |
具体例で確認
Σ = [[0.04, 0.01], [0.01, 0.01]]、w = (0.6, 0.4)’ のとき、f(w) = w’Σw の微分を求めます。
- 公式で計算:2Σw = 2 × (0.04×0.6 + 0.01×0.4, 0.01×0.6 + 0.01×0.4)’ = 2 × (0.028, 0.010)’ = (0.056, 0.020)’
- 展開して確認:f = 0.04w12 + 0.02w1w2 + 0.01w22
- ∂f/∂w1 = 0.08w1 + 0.02w2 = 0.048 + 0.008 = 0.056
- ∂f/∂w2 = 0.02w1 + 0.02w2 = 0.012 + 0.008 = 0.020
公式と成分ごとの偏微分が一致しました。資産1のウェイトを少し増やしたときのほうが、分散が大きく増えることがわかります。
試験で問われやすいポイント
- ∂(a’x)/∂x = a、∂(x’Ax)/∂x = 2Ax(Aが対称のとき)の2公式を正しく使えるかが中心です。
- Aが対称でないときは (A + A’)x になる点、また係数の「2」を落とすミスに注意しましょう。
- ラグランジュ乗数法と組み合わせて、2Σw − λ1 = 0 のような1階の条件を導出させる問題に備えましょう。
- 公式の結果を成分ごとの偏微分で検算できると、計算問題で確実に得点できます。
- 記述式では、目的関数と制約式を書き、微分して0とおく導出過程を示すことが求められます。
要点まとめ
- ベクトルの微分は、各成分での偏微分を並べたベクトル
- ∂(a’x)/∂x=a、∂(x’Ax)/∂x=2Ax(A対称)
- ポートフォリオ分散w’Σwの微分は2Σw
- 最小分散ポートフォリオの導出など最適化問題で使う
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
