ひとことで言うと

  • ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルは、株式のリターンを「市場」「規模(小型株かどうか)」「バリュー(割安株かどうか)」の3つの要因で説明するモデルです。
  • マクロ経済ファクター・モデルは、景気・インフレ・金利などのマクロ変数の「予想外の変化」をファクターとして、リターンを説明するモデルです。
  • どちらもCAPMの「ベータ1つだけ」という考え方を、複数の要因に広げたものです。

この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「3ファクター・マクロファクター」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (1) 現代ポートフォリオ理論
協会の学習ポイント 株式マルチファクター・モデル(ファーマ=フレンチの3ファクター・モデル、マクロ経済ファクター・モデル)の仕組みと概要を理解する。

ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルとは

CAPMでは、個別株式の期待リターンは市場ポートフォリオに対するベータだけで決まるとされます。しかし実際の株式市場では、時価総額の小さい株式(小型株)や、株価純資産倍率(PBR)が低い株式(バリュー株)が、ベータだけでは説明できないほど高いリターンをあげる傾向が観察されてきました。これらはアノマリーと呼ばれます。

ファーマとフレンチは、こうした現象を取り込むため、市場ファクターに規模ファクター(SMB)バリュー・ファクター(HML)を加えた3ファクター・モデルを提案しました。

3つのファクターの中身

  • 市場ファクター:市場ポートフォリオのリターンから安全利子率を引いた超過リターン(CAPMと同じ要因)。
  • SMB(Small Minus Big):小型株ポートフォリオのリターンから大型株ポートフォリオのリターンを引いたもの。
  • HML(High Minus Low):簿価時価比率(B/M、PBRの逆数)が高い株式(バリュー株)のリターンから、低い株式(グロース株)のリターンを引いたもの。

各銘柄は、この3つのファクターに対する感応度(ファクター・エクスポージャー)を持ちます。SMBへの感応度がプラスなら小型株的な値動き、HMLへの感応度がプラスならバリュー株的な値動きをする銘柄だと解釈できます。感応度は、銘柄の超過リターンを3つのファクターで時系列回帰して推定するのが一般的です。

マクロ経済ファクター・モデル

マクロ経済ファクター・モデルは、鉱工業生産などの景気指標、インフレ率、金利、為替レートといったマクロ変数を共通ファクターとするモデルです。ポイントは、ファクターとして変数の水準そのものではなく予想外の変化(サプライズ)を使うことです。予想されていた変化はすでに株価に織り込まれているため、リターンを動かすのは予想とのズレだと考えます。

マクロ経済ファクター・モデルでも、ファクターの値(マクロ変数のサプライズ)は観察でき、各銘柄の感応度は過去データの時系列回帰で推定します。これに対し、企業の規模や業種、PBRなどの属性をエクスポージャーとして使い、ファクターのリターンをクロスセクション回帰で推定するものはファンダメンタル・ファクター・モデルと呼ばれ、区別して整理しておくとよいでしょう。

押さえておきたい公式

E(Ri) − Rf = bi[E(RM) − Rf] + siE(SMB) + hiE(HML)ファーマ=フレンチの3ファクター・モデル(期待リターンの形)
Ri = ai + βi1F1 + βi2F2 + … + βikFk + εiマクロ経済ファクター・モデル(F はマクロ変数の予想外の変化)
記号 意味
Rf 安全利子率
bi, si, hi 市場・SMB・HMLに対する銘柄 i の感応度
SMB 小型株リターン − 大型株リターン
HML 高B/M(バリュー)株リターン − 低B/M(グロース)株リターン
βik k番目のマクロ・ファクターに対する感応度
εi 銘柄固有の要因(残差)

具体例で確認

安全利子率1%、市場の期待超過リターン5%、SMBの期待値2%、HMLの期待値3%とします。ある銘柄の感応度が b=1.1、s=0.5、h=−0.4 のとき、期待リターンは次のようになります。

  • 市場要因:1.1 × 5% = 5.5%
  • 規模要因:0.5 × 2% = 1.0%
  • バリュー要因:−0.4 × 3% = −1.2%
  • 期待リターン:1% + 5.5% + 1.0% − 1.2% = 6.3%

この銘柄は小型株的な性格(sがプラス)を持つ一方、HMLへの感応度がマイナスなのでグロース株寄りの値動きをすると解釈できます。

試験で問われやすいポイント

  • SMBは「小型 − 大型」、HMLは「高B/M(バリュー)− 低B/M(グロース)」。引き算の向きやB/MとPBRの逆の関係が狙われやすいです。
  • 感応度とファクターの期待値を掛けて足し合わせる期待リターンの計算。マイナスの感応度の扱いに注意しましょう。
  • マクロ経済ファクター・モデルのファクターは、変数の水準ではなく「予想外の変化」である点。
  • マクロ経済ファクター・モデル(ファクター値が観察可能・感応度を時系列回帰で推定)とファンダメンタル・ファクター・モデル(属性がエクスポージャー・ファクター・リターンを推定)の違い。
  • 3ファクター・モデルは、CAPMで説明できない小型株効果・バリュー株効果を取り込む目的で考案されたという位置づけ。

要点まとめ

  • 3ファクター・モデルは市場・規模(SMB)・バリュー(HML)の3要因でリターンを説明する。
  • 感応度がプラスなら小型株的・バリュー株的な値動きをすると解釈できる。
  • マクロ経済ファクター・モデルは景気・インフレ・金利などの予想外の変化をファクターに使う。
  • どちらもCAPMを複数ファクターに拡張したマルチファクター・モデルの代表例。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。