ひとことで言うと

  • スチュワードシップ・コードとは、機関投資家が投資先企業との建設的な対話(エンゲージメント)などを通じて企業価値の向上や持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的なリターンを高めるための行動原則です。
  • 日本版は金融庁の有識者検討会が2014年に策定し、その後改訂が重ねられています。法的拘束力はなく、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法をとります。
  • 企業側の行動原則であるコーポレートガバナンス・コードと「車の両輪」の関係にあります。

この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「スチュワードシップ・コード」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (4) 機関投資家の資産運用
協会の学習ポイント 機関投資家とスチュワードシップ・コードの役割について理解する。

スチュワードシップ・コードとは

「スチュワードシップ(stewardship)」は、他人から預かった財産を責任をもって管理する「受託者としての責任」を意味します。スチュワードシップ・コードは、年金基金や保険会社、運用会社などの機関投資家が、投資先企業の状況を的確に把握し、対話や議決権行使を通じて企業価値の向上を促すことで、最終的な資金の出し手(顧客・受益者)の利益につなげるための原則を示したものです。英国で2010年に策定されたものが先行例で、日本版は2014年に策定されました。

プリンシプルベースとコンプライ・オア・エクスプレイン

このコードは、細かいルールを一律に課すのではなく、原則の趣旨に沿って各機関投資家が自らの状況に合わせて行動するプリンシプルベース・アプローチをとっています。また、コードを受け入れるかどうかは各機関投資家の任意で、受け入れた場合も、ある原則を実施しないのであればその理由を説明すればよいというコンプライ・オア・エクスプレイン(実施せよ、さもなくば説明せよ)の手法がとられています。

主な内容

原則では、スチュワードシップ責任を果たすための方針の策定・公表、利益相反の適切な管理、投資先企業の状況の把握、目的をもった対話を通じた認識の共有と問題の改善、議決権行使の方針と行使結果の公表、顧客・受益者への定期的な報告、そして対話や判断を適切に行うための実力を備えることなどが求められています。改訂を通じて、ESG要素を含むサステナビリティの考慮や、議決権行使助言会社などへの対応も盛り込まれてきました。

コーポレートガバナンス・コードとの関係

企業側が守るべき原則を示したコーポレートガバナンス・コード(2015年策定)と、投資家側の原則であるスチュワードシップ・コードは、企業と投資家の建設的な対話を促す「車の両輪」と位置づけられています。

整理しておきたいポイント

項目 スチュワードシップ・コード コーポレートガバナンス・コード
対象 機関投資家(受入れは任意) 上場企業
目的 対話を通じた企業価値向上と受益者のリターン向上 企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上
手法 プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレイン プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレイン
位置づけ 法令ではないソフトロー 法令ではないが取引所の上場規則を通じて適用

具体例で確認

ある運用会社がスチュワードシップ・コードの受入れを表明しているとします。この運用会社は、自社のスチュワードシップ方針をウェブサイトで公表し、投資先企業に対しては、資本効率の低さや取締役会の構成について経営陣と面談を重ねて改善を求めます。株主総会では、あらかじめ公表した基準に沿って議決権を行使し、その結果を開示します。

また、この運用会社は親会社グループの企業にも投資しているため、議決権行使に利益相反が生じないよう、第三者委員会のチェックを受ける体制を整えています。一方、ある原則について自社の運用スタイル上実施が難しい場合は、その理由を公表して説明します。これがコンプライ・オア・エクスプレインの実際の姿です。

試験で問われやすいポイント

  • スチュワードシップ・コードの目的は、対話などを通じた投資先企業の企業価値向上と顧客・受益者の中長期的リターン向上である点が問われやすいです。
  • 法的拘束力はなく受入れは任意で、実施しない原則は理由を説明すればよい(コンプライ・オア・エクスプレイン)というしくみに注意しましょう。
  • 細則主義ではなくプリンシプルベースであることが狙われやすいです。
  • 対象が機関投資家(スチュワードシップ・コード)か上場企業(コーポレートガバナンス・コード)かの取り違えに注意しましょう。
  • パッシブ運用の投資家も対話や議決権行使を通じてスチュワードシップ責任を果たすことが求められる点を押さえましょう。

要点まとめ

  • スチュワードシップ・コード=機関投資家が対話等を通じて企業価値向上を促すための行動原則
  • プリンシプルベースで、コンプライ・オア・エクスプレインの手法をとる
  • 方針の公表、利益相反管理、議決権行使結果の公表、受益者への報告などが柱
  • コーポレートガバナンス・コードと「車の両輪」の関係

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。