ひとことで言うと

  • 企業の資金調達は、株式による株主資本(エクイティ)と、借入や社債による負債(デット)に大きく分かれます。
  • 株式公開(IPO)とは、株式を証券取引所に上場し、不特定多数の投資家が売買できるようにすることです。
  • 上場すると資金調達力や知名度が高まる一方、情報開示の義務やコスト、買収リスクも負うことになります。

この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「資金調達と株式公開」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス
大分類 (1) 株式会社のしくみ
協会の学習ポイント 株式会社の資金調達と株式公開制度について理解する。

資金調達と株式公開とは

企業が設備投資や運転資金に使うお金を集めることを資金調達といいます。調達の方法は、まず内部資金(内部留保や減価償却費など、事業から生まれた自分のお金)と外部資金(外から集めるお金)に分かれ、外部資金はさらに株式発行による株主資本と、銀行借入・社債発行による負債に分かれます。

株主資本と負債の違い

負債は、あらかじめ決まった利息と元本を返済する義務があり、返せなければ倒産につながります。その代わり、債権者は株主より先に支払いを受けられるためリスクが小さく、要求するリターン(負債コスト)は低めです。支払利息は税務上の損金になるため、節税効果もあります。

株主資本には返済義務がなく、配当も業績に応じて決められます。その代わり、株主は残った利益や財産を最後に受け取る立場(残余請求権者)なのでリスクが大きく、要求リターン(株主資本コスト)は負債より高くなります。また、新株を発行すると既存株主の持分比率やEPSが薄まる希薄化が生じることがあります。

直接金融と間接金融

株式や社債のように、投資家から直接お金を集める方法を直接金融、銀行が預金者から集めたお金を貸し出す方法を間接金融と呼びます。日本はかつて銀行借入中心の間接金融の比重が大きいといわれてきました。

株式公開(上場)の意味

株式公開とは、証券取引所の審査を経て株式を上場し、市場で誰もが売買できるようにすることです。初めて上場することをIPO(新規株式公開)といい、このときに新株を発行する公募や、既存株主が持株を売り出す売出しが行われます。上場後は、市場から追加の資金を集める公募増資もしやすくなります。

整理しておきたいポイント

項目 株式公開のメリット 株式公開のデメリット
資金面 市場から大きな資金を調達しやすくなる 上場維持や開示のための費用がかかる
株主面 創業者などが株式を換金しやすくなる 株主が増え、買収(敵対的TOBなど)の対象になりうる
経営面 知名度・信用力が高まり、人材採用にも有利 四半期ごとの業績など短期的な評価にさらされやすい
規律面 市場の監視によって経営の透明性が高まる 法定開示・適時開示の義務や内部統制の整備が必要

このほか、株式の発行方法には、広く一般から募る公募、既存株主に持株数に応じて割り当てる株主割当、特定の相手に割り当てる第三者割当があります。

具体例で確認

成長中の未上場企業A社が、新工場のために30億円を必要としているとします。選択肢は、①銀行から借りる、②社債を発行する、③上場して公募増資を行う、などです。

①や②なら既存株主の持分は薄まりませんが、毎年の利払いと元本返済が必要になり、業績が落ち込んだときの負担が重くなります。③なら返済義務はありませんが、新株の分だけ創業者の持株比率が下がり、上場後は有価証券報告書などの開示や、株主からの厳しい目にさらされます。A社は、事業の安定性、既存株主の意向、今後の資金需要などを踏まえてこれらを組み合わせることになります。

試験で問われやすいポイント

  • 株主資本と負債の違い(返済義務・利息の損金算入・請求権の順位・要求リターンの高低)が問われやすいです。
  • 一般に負債コスト<株主資本コストとなる理由を、リスクの大きさから説明できるようにしましょう。
  • 内部資金/外部資金、直接金融/間接金融の区別と具体例の組み合わせがひっかけになりやすいです。
  • 公募・株主割当・第三者割当の違いや、新株発行による希薄化に注意しましょう。
  • 株式公開のメリット(資金調達・知名度)とデメリット(開示コスト・買収リスク)を正しく選べるかが問われます。

要点まとめ

  • 資金調達は内部資金と外部資金、外部資金は株主資本と負債に分かれる
  • 負債は返済義務があるが低コストで節税効果がある、株主資本は返済不要だが高コスト
  • 株式公開(上場)で資金調達力・知名度が高まる
  • 上場すると開示義務・コストや買収リスクも負う

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。