ひとことで言うと

  • サステイナブル成長率は、新株発行をせず、財務体質(負債比率など)を変えずに、内部留保だけで達成できる成長率です。
  • 計算式は g = ROE × 内部留保率(1 − 配当性向)。ROEが高く、配当性向が低いほど高くなります。

この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅱ「財務分析」の学習ポイントのひとつ「サステイナブル成長率」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (10) 財務分析の基礎
協会の学習ポイント サステイナブル成長率とROEの関係を理解する。

サステイナブル成長率とは

サステイナブル成長率(持続可能成長率)とは、企業が外部から新たに株式で資金を調達せず、稼いだ利益のうち配当しなかった部分(内部留保)を再投資することによって、無理なく持続できる成長率のことです。「今の稼ぐ力と配当政策のままなら、どのくらいのペースで成長できるか」を示す目安になります。

なぜ ROE × 内部留保率 になるのか

当期純利益のうち配当しなかった分は、利益剰余金として自己資本に加わります。新株発行がなければ、自己資本の増加率は「内部留保額 ÷ 期首自己資本」です。内部留保額は当期純利益 × 内部留保率、当期純利益は期首自己資本 × ROE なので、自己資本の増加率は ROE × 内部留保率 になります。

さらに、財務レバレッジ(総資産÷自己資本)を一定に保つなら、負債も自己資本と同じ率で増やせるので、総資産も同じ率で増えます。総資産回転率と売上高利益率も一定なら、売上高と利益も同じ率で成長します。こうして、自己資本の増加率がそのまま企業全体の成長率になるわけです。

前提条件と使い方

この計算は、①新株発行をしない、②ROE(利益率・回転率・レバレッジ)が一定、③配当性向が一定、という前提に立っています。実際の成長目標がサステイナブル成長率を上回る場合は、ROEを高める、配当性向を下げる、負債を増やす(レバレッジを上げる)、増資をする、といった手当てが必要になります。株式評価の定率成長モデルで成長率 g を推定するときにもよく使われます。

押さえておきたい公式

サステイナブル成長率 g = ROE × 内部留保率内部留保率 = 1 − 配当性向。ROEは期首自己資本に対する当期純利益で考える
g = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ × 内部留保率ROEをデュポン分解した形。どの要素を変えれば成長率が変わるかが分かる

具体例で確認

期首自己資本1,000億円、ROE12%、配当性向40%の企業を考えます。

  • 当期純利益 = 1,000 × 12% = 120億円
  • 配当 = 120 × 40% = 48億円、内部留保 = 72億円
  • 期末自己資本 = 1,000 + 72 = 1,072億円(増加率 7.2%)

公式では g = 12% ×(1 − 0.4)= 7.2% です。翌期もROE12%が続けば、純利益は 1,072 × 12% ≒ 128.6億円となり、前期の120億円から7.2%増えます。財務レバレッジを一定とすれば、総資産や売上高も7.2%ずつ伸びていく計算です。配当性向を20%に下げれば、g = 12% × 0.8 = 9.6% まで高まります。

試験で問われやすいポイント

  • g = ROE ×(1 − 配当性向)の計算。配当性向と内部留保率を取り違えないようにしましょう。
  • 前提条件(新株発行なし、財務レバレッジ・ROE・配当性向が一定)を問う正誤問題。
  • 成長率を高める方法(ROE向上、配当性向の引き下げ、レバレッジ上昇)の方向性。
  • 定率成長モデルの g や、PBR =(ROE − g)÷(r − g)とのつながりも確認しておきましょう。

要点まとめ

  • サステイナブル成長率は、内部留保だけで財務体質を変えずに達成できる成長率。
  • g = ROE × 内部留保率(1 − 配当性向)。
  • ROEをデュポン分解すれば、利益率・回転率・レバレッジと成長率の関係が分かる。
  • 新株発行なし、ROE・配当性向一定などの前提を押さえる。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。