ひとことで言うと

  • 大数の法則:標本数nを大きくすると、標本平均は母平均に近づいていくという法則です。
  • 中心極限定理:nが十分大きければ、母集団がどんな分布でも、標本平均の分布は正規分布で近似できるという定理です。
  • 標本平均は平均μ、標準偏差σ ÷ √nの正規分布に近づき、これが区間推定や検定の土台になります。

この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「大数の法則と中心極限定理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計
大分類 (6) 推定と検定
協会の学習ポイント 大数の法則と中心極限定理について理解する。

大数の法則と中心極限定理とは

推計統計では、標本平均を使って母平均を推測します。このとき「標本平均はどれくらい母平均に近いのか」「標本平均はどのような分布に従うのか」という疑問に答えてくれるのが、大数の法則中心極限定理です。

大数の法則

大数の法則は、同じ分布から独立に取り出した標本の数を増やしていくと、標本平均が母平均μに限りなく近づくという法則です。サイコロを何度も振ると、出た目の平均が3.5に近づいていくのが身近な例です。保険会社が多数の契約を集めることで支払額を予測しやすくなるのも、この法則のおかげです。

中心極限定理

中心極限定理は、平均μ・分散σ2の母集団から大きさnの標本を無作為に取り出すと、nが十分大きいとき、母集団の分布の形にかかわらず、標本平均x̄の分布が平均μ、分散σ2 ÷ nの正規分布で近似できるという定理です。

母集団が左右非対称な分布でも、標本平均の分布は正規分布に近づくという点が重要です。このおかげで、母集団の分布がわからなくても、標準正規分布表を使って標本平均に関する確率を計算し、区間推定や仮説検定を行えます。目安として、nが30程度以上あれば正規近似が使われることが多いです。

2つの違い

大数の法則は標本平均が「どこに近づくか(母平均)」を述べ、中心極限定理は標本平均が「どんな分布でばらつくか(正規分布)」を述べています。両者はセットで理解すると覚えやすいでしょう。

押さえておきたい公式

x̄ 〜 N( μ, σ2 ÷ n )(nが大きいとき近似的に)中心極限定理
Z = (x̄ − μ) ÷ (σ ÷ √n)標本平均の標準化。σ ÷ √nが標準誤差

具体例で確認

ある株式の月次収益率の平均が1%、標準偏差が8%とします(分布の形は正規分布とは限りません)。無作為に64カ月分の収益率を取り出して平均をとります。

  1. 中心極限定理より、標本平均は平均1%、標準偏差8 ÷ √64 = 1%の正規分布で近似できます。
  2. 標本平均がマイナスになる確率:Z = (0 − 1) ÷ 1 = −1より、1 − Φ(1) = 1 − 0.8413 ≒ 約15.9%
  3. 標本数を256カ月に増やすと標準誤差は8 ÷ 16 = 0.5%となり、Z = −2より、マイナスになる確率は約2.3%まで下がります。

標本数を増やすほど標本平均が母平均の近くに集まる様子(大数の法則)と、その分布を正規分布で計算できること(中心極限定理)が確認できます。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「標本平均・分散・標準偏差の計算と大数の法則・中心極限定理を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 大数の法則(標本平均→母平均)中心極限定理(標本平均の分布→正規分布)の違いが問われやすいです。
  • 中心極限定理は母集団が正規分布でなくても成り立つ点がひっかけのポイントです。
  • 近づくのは「標本そのものの分布」ではなく標本平均の分布である点に注意しましょう。
  • 標本平均の分散はσ2 ÷ n、標準誤差はσ ÷ √nで、nが大きいほど小さくなります。
  • 中心極限定理が区間推定・仮説検定で正規分布を使える根拠になっていることを押さえましょう。

要点まとめ

  • 大数の法則:nを増やすと標本平均は母平均に近づく
  • 中心極限定理:nが大きければ標本平均は正規分布で近似できる
  • 母集団の分布の形は問わない
  • 標本平均の標準誤差はσ ÷ √n

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。