回帰係数のt検定とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・数量分析と確率・統計
ひとことで言うと
- 単回帰の仮説検定では、推定した傾きb̂が偶然ではなく、母集団の傾きbがゼロでないといえるかをt検定で調べます。
- 検定統計量はt =(b̂ − b0)÷ SE(b̂)で、自由度n−2のt分布に従います。
- b=0が棄却されれば、「XはYの説明に役立っている(統計的に有意)」と判断します。
この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「単回帰の仮説検定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計 |
|---|---|
| 大分類 | (7) 回帰分析(単回帰) |
| 協会の学習ポイント | 単回帰分析における仮説検定について理解する。 |
単回帰の仮説検定とは
最小二乗法で求めた切片â や傾きb̂は、手元の標本から計算した推定値です。別の期間のデータを使えば、違う値になるでしょう。つまり推定値にはばらつきがあり、b̂がゼロでなくても、真の傾きbはゼロ(XとYは無関係)かもしれません。そこで、推定値のばらつきの大きさである標準誤差SE(b̂)を基準にして、b̂がゼロから十分に離れているかを検定します。
検定の手順
最も基本的なのは、H0:b=0、H1:b≠0という両側検定です。誤差項が互いに独立で、平均0・分散一定の正規分布に従うという前提のもとで、t = b̂ ÷ SE(b̂)は自由度n−2のt分布に従います。|t|が臨界値を超えればH0を棄却し、傾きは有意と判断します。目安として、標本が大きく有意水準5%の両側検定なら、|t|がおおむね2を超えると有意になります。
ゼロ以外の値との比較
帰無仮説の値はゼロに限りません。たとえば、マーケット・モデルで推定したベータが「1と異なるか」を調べたければ、H0:b=1とし、t =(b̂ − 1)÷ SE(b̂)を計算します。切片についても同様に、â ÷ SE(â)でゼロかどうかを検定できます。
他の検定との関係
単回帰では、傾きがゼロかどうかのt検定は、無相関検定や分散分析のF検定と同じ結論になり、F = t2が成り立ちます。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| b̂ | 傾きの推定値 |
| SE(b̂) | 傾きの推定値の標準誤差 |
| SSE | 残差の二乗和 |
| n − 2 | 自由度(切片と傾きの2つを推定する分だけ減る) |
具体例で確認
例1:ベータの検定
ある銘柄の月次リターンを市場リターンで回帰し(n=62か月)、傾き(ベータ)1.3、その標準誤差0.25を得ました。自由度60のt分布の両側5%臨界値は約2.000です。
- H0:b=0の検定:t = 1.3 ÷ 0.25 = 5.2 > 2.000 → 棄却。市場リターンは銘柄のリターンの説明に役立っている。
- H0:b=1の検定:t = (1.3 − 1) ÷ 0.25 = 1.2 < 2.000 → 棄却できない。ベータが1と異なるとまではいえない。
例2:データから標準誤差を求める
データ(X, Y)=(1, 2)、(2, 4)、(3, 5)、(4, 4)、(5, 5)では、b̂ = 0.6、SSE = 2.4、Sxx = 10でした。s = √(2.4 ÷ 3) ≒ 0.894、SE(b̂) = 0.894 ÷ √10 ≒ 0.283、t = 0.6 ÷ 0.283 ≒ 2.12です。自由度3の臨界値(約3.182)を下回るため、5%水準では有意といえません。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「無相関検定・分散分析への応用・単回帰分析の仮説検定を理解する」)。
試験で問われやすいポイント
- 傾きの検定統計量t=b̂÷SE(b̂)と、自由度n−2が問われやすいです。
- 帰無仮説がb=1のようにゼロ以外の場合に、分子から引く値を変えることを忘れないようにしましょう。
- 回帰結果の表(係数・標準誤差・t値)から有意かどうかを判断する読み取り問題が考えられます。
- 単回帰では傾きのt検定・無相関検定・F検定の結論が一致し、F=t2となる点を押さえましょう。
- 検定は誤差項の独立・分散一定・正規性といった前提に依存する点にも注意しましょう。
要点まとめ
- 傾きの検定はt=(b̂−b0)÷SE(b̂)、自由度n−2
- b=0が棄却されればXはYの説明に有意に役立つ
- SE(b̂)=s÷√Sxx、s=√(SSE÷(n−2))
- 単回帰ではF=t2で、無相関検定とも結論が一致する
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
