ひとことで言うと

  • 企業の戦略は、会社全体の方向を決める全社戦略(企業戦略)、個々の事業でどう競争に勝つかを決める事業戦略(競争戦略)、それを支える機能別戦略という階層で考えます。
  • 全社戦略の中心は「どの事業を行うか(ドメイン)」と「経営資源をどう配分するか」です。
  • 事業戦略の中心は、特定の市場で「どうやって他社に勝つか」という競争優位の築き方です。

この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「経営戦略と事業戦略」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス
大分類 (2) 企業の事業・競争戦略
協会の学習ポイント 企業の経営戦略と事業戦略の基本的な考え方について理解する。

全社戦略と事業戦略とは

経営戦略とは、企業が目的を達成するために、外部環境と自社の経営資源をふまえて定める長期的な方針や計画のことです。その出発点には、企業が何のために存在するかを示す経営理念や、めざす将来像を示すビジョンがあります。経営戦略は、扱う範囲によっていくつかの階層に分けて考えるのが一般的です。

全社戦略(企業戦略)

全社戦略は、複数の事業を持つ企業全体として「どの事業領域で戦うか」を決めるものです。自社の活動範囲を定めるドメイン(事業領域)の設定、どの事業を伸ばし、どの事業から撤退するかという事業ポートフォリオの決定、そして資金・人材などの経営資源の配分が主なテーマです。成長の方向を整理する枠組みとしては、製品(既存・新規)と市場(既存・新規)を組み合わせたアンゾフの成長ベクトル(市場浸透・市場開拓・製品開発・多角化)がよく知られています。

事業戦略(競争戦略)

事業戦略は、ある特定の事業・市場の中で「どうやって競合に勝つか」を決めるものです。顧客は誰か、どのような価値を提供するか、コストの低さで勝つのか差別化で勝つのか、といった競争のしかたを定めます。ポーターの競争の基本戦略(コスト・リーダーシップ、差別化、集中)は、この事業戦略レベルの代表的な考え方です。

機能別戦略と戦略の流れ

事業戦略を実行するために、生産・販売・研究開発・人事・財務などの機能ごとに立てるのが機能別戦略です。戦略づくりの流れは、①外部環境(機会・脅威)と内部環境(強み・弱み)の分析、②戦略の策定、③実行、④評価と見直し、という循環で考えられます。なお、経営史家チャンドラーは「組織は戦略に従う」と述べ、多角化などの戦略の変化が事業部制などの組織の変化をもたらすことを示しました。

整理しておきたいポイント

階層 問い 主なテーマ・枠組み
全社戦略 どの事業で戦うか ドメイン、事業ポートフォリオ、資源配分、多角化、M&A、成長ベクトル
事業戦略 その事業でどう勝つか 競争の基本戦略、業界構造分析、ポジショニング、経営資源の活用
機能別戦略 各機能で何をするか 生産・販売・研究開発・人事・財務などの方針

具体例で確認

飲料・食品・医薬の3事業を持つJ社を考えます。J社の経営陣は全社戦略として、「健康」をドメインの軸に据え、成長が鈍い食品事業への投資を抑え、成長性と収益性の高い医薬事業に研究開発資金を重点配分することを決めました。また、海外の飲料市場への進出(アンゾフでいう市場開拓)も打ち出しました。

一方、飲料事業部の事業戦略は、競合がひしめく国内市場で「機能性表示のある高付加価値商品」に絞り、価格競争ではなく差別化で勝つことです。これを実行するため、研究開発部門は機能性成分の研究を強化し、販売部門は健康志向の顧客向けの販路を開拓する、という機能別戦略につながります。このように、全社戦略→事業戦略→機能別戦略が一貫していることが大切です。

試験で問われやすいポイント

  • 全社戦略=どの事業で戦うか事業戦略=その事業でどう勝つかという区別が問われやすいです。
  • ドメイン設定・事業ポートフォリオ・資源配分は全社戦略、競争の基本戦略は事業戦略という対応を押さえましょう。
  • アンゾフの成長ベクトルの4象限(市場浸透・市場開拓・製品開発・多角化)の組み合わせがひっかけになりやすいです。
  • チャンドラーの「組織は戦略に従う」の意味(戦略の変化が組織の変化をもたらす)も確認しておきましょう。

要点まとめ

  • 経営戦略は全社戦略・事業戦略・機能別戦略の階層で考える
  • 全社戦略はドメイン・事業ポートフォリオ・資源配分を決める
  • 事業戦略は特定の市場で競争優位を築く方法を決める
  • 理念・ビジョンから機能別戦略までが一貫していることが重要

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。