ひとことで言うと

  • 負債を使うと、事業の利益率(ROA)が負債の金利を上回るときはROEが高まり、下回るときはROEが下がります。
  • 関係式は ROE = [ROA +(ROA - 負債利子率)× 負債÷自己資本] ×(1 - 税率)です。
  • 負債比率を上げるとROEの平均は高まり得ますが、ROEのブレ(株主のリスク)も大きくなります。

この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「財務レバレッジと純利益・ROE」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス
大分類 (9) 企業のリスク管理と運転資本管理
協会の学習ポイント 財務レバレッジと企業の純利益、ROEとの関係について理解する。

財務レバレッジとROEの関係とは

ROE(自己資本利益率)は、株主が出資した資本に対してどれだけの純利益を上げたかを示す指標です。同じ事業、同じ総資産でも、資金を負債と自己資本のどちらで調達するかによってROEは変わります。これが財務レバレッジの効果です。

ROAと金利の大小で効果の向きが決まる

負債で調達した資金を事業に投じると、その資金は事業の利益率(ここでは税引前の総資産営業利益率ROA)で利益を生み、債権者には金利を支払います。ROAが金利より高ければ差額が株主のものになり、少ない自己資本で大きな利益を得られるためROEが上昇します。逆にROAが金利より低ければ、借りた資金が金利分を稼げず、その不足分を株主が負担するためROEが低下します。

負債比率が高いほど効果が大きくなる

このプラスまたはマイナスの効果は、負債÷自己資本(D/Eレシオ)が大きいほど増幅されます。事業環境がよいときには高いROEを実現できますが、悪いときにはROEが大きく落ち込み、赤字になることもあります。つまり、財務レバレッジは株主の期待リターンを高め得る一方で、ROEや純利益の変動、すなわち財務リスクを大きくします。

ROEの3分解との関係

ROEは「売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ(総資産÷自己資本)」にも分解できます(デュポン分析)。負債を増やせばこの財務レバレッジの項は大きくなりますが、支払利息の増加で売上高純利益率は下がるため、ROEが上がるかどうかは結局ROAと金利の大小によって決まります。

押さえておきたい公式

ROE = [ROA + (ROA − i) × D ÷ E] × (1 − t)ROAは税引前の総資産営業利益率(営業利益 ÷ 総資産)
ROE = 純利益 ÷ 売上高 × 売上高 ÷ 総資産 × 総資産 ÷ 自己資本ROEの3分解(デュポン分析)
記号 意味
ROA 営業利益 ÷ 総資産(税引前、支払利息控除前)
i 負債の利子率
D、E 負債、自己資本
t 法人税率

具体例で確認

総資産1,000億円の企業で、無借金(自己資本1,000)のケースと、負債500・自己資本500のケースを比べます。金利は5%、税率は30%です。

ケース 無借金(D/E=0) 負債500(D/E=1)
好況:ROA 10%(営業利益100) 100 × 0.7 ÷ 1,000 = 7.0% (100 − 25) × 0.7 ÷ 500 = 10.5%
不況:ROA 4%(営業利益40) 40 × 0.7 ÷ 1,000 = 2.8% (40 − 25) × 0.7 ÷ 500 = 2.1%

公式で確認すると、好況時は[10%+(10%-5%)×1]×0.7=10.5%、不況時は[4%+(4%-5%)×1]×0.7=2.1%です。ROAが金利5%を上回るとROEは無借金より高く、下回ると低くなります。また、ROEの幅は無借金の2.8〜7.0%から、負債ありでは2.1〜10.5%へと広がり、株主のリスクが高まっていることがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • ROA>金利ならレバレッジはROEを高め、ROA<金利なら低めるという方向が最も問われやすい論点です。
  • 公式 ROE=[ROA+(ROA-i)×D/E]×(1-t) を使った計算で、ROAが税引前・利払前の値である点に注意しましょう。
  • 負債比率を上げると、ROEの期待値だけでなくROEの変動(財務リスク)も大きくなる点が問われやすいです。
  • デュポン分析の財務レバレッジ(総資産÷自己資本)とD/Eレシオの違いを混同しないようにしましょう。
  • ROEが高くても、それが過度な負債によるものならリスクも高いというROEの解釈上の注意も確認しておきましょう。

要点まとめ

  • 財務レバレッジの効果の向きはROAと負債の金利の大小で決まる
  • ROE=[ROA+(ROA-i)×D/E]×(1-t)
  • D/Eが大きいほど、プラスにもマイナスにも効果が増幅される
  • 負債を増やすとROEのブレが大きくなり、株主のリスクが高まる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。