ひとことで言うと

  • 国際収支統計は、一定期間の居住者と非居住者の間のすべての経済取引を記録した統計です。
  • 大きく経常収支・資本移転等収支・金融収支(と誤差脱漏)で構成されます。
  • 基本的な関係は経常収支 + 資本移転等収支 − 金融収支 + 誤差脱漏 = 0で、経常黒字の国は対外資産を積み増します。

この記事では、証券アナリスト1次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「国際収支統計の分析」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/市場と経済の分析
大分類 (8) 国際資本移動と外国為替市場
協会の学習ポイント 国際収支統計の分析ができる。

国際収支統計とは

国際収支統計は、ある国の居住者が海外(非居住者)との間で行ったモノ・サービスの取引、所得の受払い、資産・負債の取引を体系的にまとめたものです。日本では、IMFの国際収支マニュアル第6版に準拠した形式で公表されています。

経常収支

経常収支は、次の3つで構成されます。①モノの輸出入の差額である貿易収支と、輸送・旅行・知的財産権使用料などのサービス収支(合わせて貿易・サービス収支)、②海外からの利子・配当などの投資収益や雇用者報酬の受払いを示す第一次所得収支、③対価を伴わない援助や海外送金などの第二次所得収支です。

資本移転等収支と金融収支

資本移転等収支は、対価を伴わない固定資産の提供や債務免除、特許権などの非金融非生産資産の取得・処分を記録します。金融収支は、直接投資・証券投資・金融派生商品・その他投資・外貨準備からなり、対外金融資産・負債の増減を示します。現在の形式では、金融収支のプラスは対外資産の純増(資金の流出超)を意味する点に注意が必要です。

項目間の関係

経常収支が黒字になると、その分だけ海外に対する債権が増えるため、金融収支もおおむね同じ額のプラスになります。統計上のずれは誤差脱漏で調整されます。また、国民経済計算との関係では、経常収支 = 国内の貯蓄 − 国内の投資(ISバランス)という関係があり、国内で使い切れない貯蓄が海外資産の取得に向かっていると解釈できます。

押さえておきたい公式

経常収支 = 貿易・サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支経常収支の構成
経常収支 + 資本移転等収支 − 金融収支 + 誤差脱漏 = 0国際収支全体の恒等関係(金融収支のプラス=対外資産の純増)
経常収支 = (S − I) + (T − G)ISバランス:民間の貯蓄超過と財政収支の合計

具体例で確認

ある年の国際収支が次のようだったとします(仮の数値、単位:兆円)。

項目 金額
貿易収支 −3
サービス収支 −2
第一次所得収支 +35
第二次所得収支 −4
資本移転等収支 −0.4
金融収支 +24
  1. 経常収支:−3 − 2 + 35 − 4=+26兆円
  2. 誤差脱漏:26 + (−0.4) − 24 + 誤差脱漏=0 より、誤差脱漏=−1.6兆円

貿易・サービス収支は赤字でも、海外投資から得る利子・配当(第一次所得収支)の黒字によって経常収支は大きな黒字となっている、という構造が読み取れます。これは対外資産を多く持つ成熟した債権国に見られる特徴です。

試験で問われやすいポイント

  • 各取引がどの収支項目に計上されるか(配当の受取り→第一次所得収支、無償援助→第二次所得収支、海外企業の買収→直接投資など)が問われやすいです。
  • 表の数値から経常収支や誤差脱漏を計算させる問題に備え、恒等式の符号を確認しておきましょう。
  • 金融収支のプラスは資産の増加(資金流出)を表すという符号の意味がひっかけになりやすいです。
  • 経常収支とISバランス(貯蓄・投資差額)の関係もあわせて問われることがあります。

要点まとめ

  • 国際収支=経常収支・資本移転等収支・金融収支+誤差脱漏
  • 経常収支=貿易・サービス収支+第一次所得収支+第二次所得収支
  • 経常収支+資本移転等収支−金融収支+誤差脱漏=0
  • 経常黒字は対外資産の増加、国内の貯蓄超過と対応する

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。