ひとことで言うと

  • 二項分布は、「成功か失敗か」の2通りしかない試行を独立にn回繰り返したときの、成功回数の分布です。
  • 二項ツリーは、株価が1期ごとに一定の率で「上がるか下がるか」を繰り返すと考えて、将来の価格の分布を表すモデルです。
  • n期後の価格は上昇回数で決まり、その確率は二項分布で計算できます。

この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「二項分布と二項ツリー」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計
大分類 (5) 確率分布
協会の学習ポイント 二項分布について理解し、二項ツリーでの資産価格の簡単なモデル化ができる。

二項分布と二項ツリーとは

二項分布

1回の試行で「成功」する確率がp、「失敗」する確率が1−pで、各回の結果が互いに独立な試行(ベルヌーイ試行)をn回繰り返すとします。このとき成功回数Xが従う分布を二項分布B(n, p)といいます。ちょうどk回成功する確率は、「k回成功・n−k回失敗の並び方の数」×「その1通りが起こる確率」で求めます。並び方の数は組合せnCkです。

二項分布の期待値はnp、分散はnp(1−p)です。たとえばコインを10回投げたときの表の回数は、B(10, 0.5)に従い、期待値は5回です。

二項ツリーによる資産価格のモデル化

株価Sが1期ごとに、確率pで上昇率u倍、確率1−pでd倍になると考えます(u>1>d)。この動きを枝分かれの図で表したものが二項ツリーです。上昇→下落と下落→上昇は同じ価格(S×u×d)にたどり着くため、ツリーは枝が合流する形(リコンバイニング)になり、n期後にとりうる価格はn+1通りに限られます。

n期後にk回上昇していれば、価格はS×uk×dn−kです。上昇回数kは二項分布B(n, p)に従うので、各価格が実現する確率は二項分布の確率そのものになります。二項ツリーは、デリバティブ分析で学ぶオプション価格の計算(二項モデル)の土台にもなっています。

押さえておきたい公式

P(X = k) = nCk pk (1 − p)n − knCk = n! ÷ {k!(n − k)!}
E(X) = np、 V(X) = np(1 − p)二項分布の期待値と分散
Sn = S0 × uk × dn − kn期中k回上昇したときの価格

具体例で確認

現在の株価100円、1期ごとに確率0.6で10%上昇(u=1.1)、確率0.4で10%下落(d=0.9)するとします。3期後の株価の分布は次のとおりです。

上昇回数k 3期後の株価 確率
3 100×1.13=133.1円 1×0.63=0.216
2 100×1.12×0.9=108.9円 3×0.62×0.4=0.432
1 100×1.1×0.92=89.1円 3×0.6×0.42=0.288
0 100×0.93=72.9円 1×0.43=0.064
  • 確率の合計:0.216+0.432+0.288+0.064=1
  • 3期後の株価の期待値:133.1×0.216+108.9×0.432+89.1×0.288+72.9×0.064≒106.12円(=100×(0.6×1.1+0.4×0.9)3=100×1.023
  • 3期後に100円を上回る確率:k≧2なので0.216+0.432=0.648
  • 上昇回数の期待値:np=3×0.6=1.8回、分散:3×0.6×0.4=0.72

上昇と下落を1回ずつ経験すると100×1.1×0.9=99円となり、元の100円には戻らない点も確認しておきましょう。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「二項分布を理解し、二項ツリーで資産価格をモデル化する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 二項分布の確率の式で、組合せnCkを掛け忘れないこと。
  • 期待値np・分散np(1−p)の公式。
  • 二項ツリーでn期後の価格がS×uk×dn−kで決まり、上昇の順番には依存しないこと。
  • 各期の上昇・下落が独立で、確率が一定であることが前提であること。
  • 「10%上昇と10%下落で元に戻る」は誤り(掛け算で考える)。

要点まとめ

  • 二項分布は独立な成功・失敗の試行をn回繰り返したときの成功回数の分布。
  • P(X=k)=nCkpk(1−p)n−k、期待値np、分散np(1−p)。
  • 二項ツリーでは価格が上昇回数で決まり、その確率は二項分布で求まる。
  • 二項ツリーはオプション価格の二項モデルの基礎になる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。