ひとことで言うと

  • デリバティブ戦略は、まず目的(ヘッジか収益追求か)相場見通し(上昇・下落・横ばい・変動拡大)を明確にしてから選びます。
  • 損益を固定したいなら先物・先渡・スワップ、有利な方向の利益を残して不利な方向だけ抑えたいならオプションが基本です。
  • オプションには費用(プレミアム)がかかるため、コストと守りたい範囲のバランスで選びます。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「目的に合った戦略の選択」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (6) デリバティブを用いた投資戦略
協会の学習ポイント 投資目的に即したデリバティブ戦略の適切な選択手法について理解する。

デリバティブ戦略の選択とは

デリバティブには先物・先渡、オプション、スワップなどがあり、同じ「値下がりに備える」でも使う商品によって損益の形がまったく変わります。そこで、戦略を選ぶときは次の順番で考えると整理しやすくなります。

1. 目的を決める

保有資産の価格変動リスクを減らしたい(ヘッジ)のか、相場見通しに基づいて収益を狙いたい(投機・収益追求)のか、あるいは現物を動かさずに資産配分やデュレーションを変えたい(ポートフォリオ調整)のかを明確にします。

2. 見通しとリスクの許容度を確認する

相場が上がるか下がるかという「方向」だけでなく、「どれくらい動くか(ボラティリティ)」の見通しも大切です。大きく動くと思うならオプションの買い(ストラドルなど)、あまり動かないと思うならオプションの売りやカバード・コールが候補になります。

3. 損益の形を選ぶ

先物・スワップは、不利な変動も有利な変動もまとめて打ち消す対称的な損益になります。コストは小さい一方、値上がり益もあきらめることになります。オプションの買いは、プレミアムを支払う代わりに、不利な方向の損失だけを限定し有利な方向の利益を残す非対称な損益を作れます。コストを抑えたい場合は、プットの買いとコールの売りを組み合わせるカラーのような戦略も使えます。

4. 実務上の制約を考える

取引コスト、流動性、ベーシス・リスク(ヘッジ手段と保有資産の値動きのずれ)、証拠金や資金繰り、運用ルール上の制約なども選択に影響します。

整理しておきたいポイント

目的・見通し 代表的な戦略 特徴
保有株の下落を確実に抑えたい 株価指数先物の売り 低コストだが上昇益も失う
下落は抑えたいが上昇益は残したい プロテクティブ・プット 損失に下限。プレミアムが必要
ヘッジのコストを抑えたい カラー(プット買い+コール売り) 上昇益に上限がつく代わりに費用を減らせる
横ばいを見込み収益を上乗せしたい カバード・コール プレミアム収入を得るが上昇益は限定
方向は不明だが大きく動きそう ストラドル・ストラングルの買い ボラティリティ上昇で利益
金利上昇リスクを抑えたい(変動金利の借り手) 金利スワップ(固定払い)、キャップの買い スワップは金利固定、キャップは上限のみ設定

具体例で確認

株式ポートフォリオを運用するファンドマネジャーが、「今後3か月は下落リスクが気になるが、長期的な上昇余地は残したい」と考えているとします。

  • 株価指数先物を売ると、下落による損失はほぼ打ち消せますが、予想に反して上昇した場合、その利益も先物の損失で相殺されます。「上昇余地を残したい」という目的には合いません。
  • 指数プット・オプションを買う(プロテクティブ・プット)と、下落時の損失に下限を設けつつ、上昇時の利益は(プレミアム分を除いて)得られます。目的に合っていますが、プレミアムのコストがかかります。
  • コストが気になるなら、プットを買い、同時にアウト・オブ・ザ・マネーのコールを売るカラーにすると、上昇益に上限がつく代わりに費用を小さくできます。

このように、同じ「下落への備え」でも、目的と制約によって最適な戦略が変わります。

試験で問われやすいポイント

  • 先物・スワップ(対称的な損益、上昇益も放棄)とオプション(非対称な損益、プレミアムが必要)の違い。
  • 相場見通し(上昇・下落・横ばい)とボラティリティ見通しから、適切なオプション戦略を選ぶ問題。
  • カラーやカバード・コールなど、コストを抑える代わりに何をあきらめるのかという点。
  • ベーシス・リスクや流動性など、ヘッジの効果を損なう要因。
  • 記述式では、与えられた投資家の目的・状況に対して戦略を選び、その理由と欠点を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 戦略選択は「目的 → 見通し(方向・変動幅)→ 損益の形 → 制約」の順で考える。
  • 損益を固定するなら先物・スワップ、片側だけ守るならオプション。
  • オプション戦略はコストと守りたい範囲のトレードオフで選ぶ。
  • ベーシス・リスクや流動性など実務上の制約も考慮する。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。