多期間二項モデル(アメリカン)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・デリバティブ分析
ひとことで言うと
- アメリカン・オプションは満期前でもいつでも権利行使できるため、ツリーの各ノードで「いま行使した価値」と「持ち続けた価値」を比べ、大きい方を採用します。
- 計算の流れはヨーロピアンと同じ後ろ向き帰納法ですが、この比較のステップが加わる点が違いです。
- 配当のない株式のアメリカン・コールは早期行使しないのが有利でヨーロピアンと同じ価値になりますが、アメリカン・プットは早期行使が有利になる場合があります。
この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「多期間二項モデル(アメリカン)」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析 |
|---|---|
| 大分類 | (3) オプション取引の仕組みと評価 |
| 協会の学習ポイント | 多期間二項モデルに基づいたアメリカン・オプションの価値評価について理解する。 |
多期間二項モデル(アメリカン)とは
アメリカン・オプションは、満期日までの間ならいつでも権利を行使できるオプションです。行使のタイミングを選べる分、同じ条件のヨーロピアン・オプション以上の価値を持ちます。ただし「いつ行使するのが最適か」を考える必要があるため、ブラック=ショールズ式のような閉じた式では一般に解けません。そこで役立つのが二項ツリーです。
各ノードでの判断
満期から現在に向かって後ろ向きに計算するのはヨーロピアンと同じです。違うのは、途中の各ノードで次の2つを比べることです。
- 継続価値:行使せずに持ち続けた場合の価値={q × 上昇側の価値 + (1 − q) × 下落側の価値} ÷ (1+r)
- 行使価値:その時点で行使した場合の価値(プットならmax(K − S, 0)、コールならmax(S − K, 0))
このうち大きい方をそのノードの価値とし、さらに1期前へさかのぼります。行使価値の方が大きいノードは「早期行使すべきノード」です。
コールとプットで結論が違う理由
配当のない株式のコールは、満期前に行使すると、権利行使価格を早く支払うことによる金利の損と、将来の値上がりの可能性(時間価値)を手放すことになります。そのため早期行使は得にならず、アメリカン・コールの価値はヨーロピアン・コールと同じになります。一方プットは、株価が大きく下がったときに早く行使して権利行使価格を受け取り、その資金を運用した方が有利になることがあります。このためアメリカン・プットはヨーロピアン・プットより高くなりやすく、その差を早期行使プレミアムと呼びます。配当がある場合は、配当落ち直前のコールの早期行使が有利になることもあります。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| V | そのノードでのオプション価値 |
| Vu、Vd | 次の期の上昇ノード・下落ノードでの価値 |
| q | リスク中立確率 = (1+r − d) ÷ (u − d) |
具体例で確認
株価100円、u=1.2、d=0.9、1期間の無リスク金利5%(q=0.5)、2期間、権利行使価格105円のプットを考えます。
- 満期の株価とペイオフ:144円→0円、108円→0円、81円→24円
- 1期後の上昇ノード(120円):継続価値0円、行使価値0円 → 0円
- 1期後の下落ノード(90円):継続価値 (0.5 × 0 + 0.5 × 24) ÷ 1.05 ≒ 11.43円、行使価値 105 − 90 = 15円 → 早期行使して15円
- 現在(100円):継続価値 (0.5 × 0 + 0.5 × 15) ÷ 1.05 ≒ 7.14円、行使価値5円 → 7.14円
同じ条件のヨーロピアン・プットは、下落ノードで11.43円のままなので、現在価値は0.5 × 11.43 ÷ 1.05 ≒ 5.44円です。差の約1.70円が早期行使プレミアムにあたります。
試験で問われやすいポイント
- 各ノードでmax(行使価値, 継続価値)をとる手順と、どのノードで早期行使が起こるかを判定させる問題に備えましょう。
- 比較する前に継続価値を割り引き忘れる、満期ノードで比較しようとする、といった計算手順のミスが典型的です。
- 配当のない株式のアメリカン・コールは早期行使しない(ヨーロピアンと同じ価値)という結論と、その理由がよく問われます。
- アメリカン・プットはヨーロピアン・プットより価値が高くなりうること、アメリカン・オプションには通常のプット・コール・パリティがそのままでは成り立たない点も押さえましょう。
- 記述式では、なぜプットで早期行使が有利になるのかを「行使価格の受取りを早めて金利を得られる」という観点から説明できるようにしておくと安心です。
要点まとめ
- アメリカンは各ノードで行使価値と継続価値を比べ、大きい方を採用する
- 行使価値が上回るノード=早期行使が最適なノード
- 無配当株のアメリカン・コール=ヨーロピアン・コール
- アメリカン・プット ≧ ヨーロピアン・プット(差が早期行使プレミアム)
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
