無形資産の日本基準とIFRSの違いとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・財務分析
ひとことで言うと
- のれんは、日本基準では20年以内の期間で規則的に償却し、IFRSでは償却せず毎年減損テストを行います。
- 開発費は、日本基準ではすべて発生時に費用処理、IFRSでは一定の要件を満たせば無形資産として計上します。
- どちらもIFRS企業の利益が日本基準より大きく見えやすい要因になります。
この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「無形資産の基準差」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 費用の測定 |
| 協会の学習ポイント | 無形資産の会計について、日本基準とIFRSの相違点を理解する。 |
無形資産の基準差とは
ソフトウェア、特許権、顧客関係、ブランド、そしてM&Aで生じるのれんなど、形のない資産の重要性は年々高まっています。これらの会計処理は日本基準とIFRS(無形資産はIAS第38号、のれんの減損はIAS第36号)で違いが大きく、利益水準の比較に直接影響するため、財務分析ではとくに注意が必要です。
のれん:規則償却か、非償却+減損テストか
日本基準では、のれんは20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法などで規則的に償却し、あわせて減損の兆候があれば減損処理を行います。IFRSでは、のれんは償却しません。その代わりに、少なくとも年1回(兆候があればその都度)減損テストを行い、回収可能価額が帳簿価額を下回れば減損損失を計上します。一度計上したのれんの減損は戻し入れません。
IFRSでは毎期の償却負担がないため平時の利益は大きくなりますが、買収した事業の業績が悪化すると、一度に多額の減損損失が出ることがあります。
研究開発費:開発費の資産計上
日本基準では、研究開発費はすべて発生時に費用として処理します。IFRSでは、研究段階の支出は費用処理しますが、開発段階の支出は、技術的な実現可能性、完成させて使用・売却する意図と能力、将来の経済的便益を生む可能性、必要な資源の確保、支出の信頼性ある測定といった要件をすべて満たす場合、無形資産として計上しなければなりません。
その他の違い
IFRSでは、活発な市場がある無形資産に限って再評価モデルが認められるほか、耐用年数を確定できない無形資産(一部のブランドなど)は償却せず減損テストの対象とします。
整理しておきたいポイント
| 論点 | 日本基準 | IFRS |
|---|---|---|
| のれんの償却 | 20年以内で規則的に償却 | 償却しない |
| のれんの減損 | 兆候がある場合に判定 | 少なくとも年1回テスト |
| 開発費 | 発生時に費用処理 | 要件を満たせば資産計上 |
| 耐用年数を確定できない無形資産 | 通常は償却 | 償却せず減損テスト |
具体例で確認
ある年度に、次の2つがある会社を考えます(税効果は考えません)。
- 買収で生じたのれん1,000(日本基準では10年で償却)
- 新製品の開発段階の支出300(IFRSの資産計上要件を満たし、当期末時点ではまだ使用可能になっていない)
日本基準:のれん償却費1,000÷10=100と、開発費300の合計400が当期の費用です。
IFRS:のれんは償却せず、減損テストで問題がなければ費用はゼロ。開発費300は無形資産に計上し、使用可能になってから償却を始めるため、当期の費用は0です。
同じ経済活動でも、IFRSでは当期の利益が400大きくなります。一方で総資産も大きくなるため、ROAやROEへの影響は利益と資産の両方から考える必要があります。
試験で問われやすいポイント
- のれんは日本基準で償却(20年以内)、IFRSで非償却・年1回の減損テスト、という対比が最も基本的な論点です。
- IFRSでものれんの減損損失は戻入れできない点を押さえましょう。
- 開発費の資産計上はIFRSのみで、研究段階の支出はIFRSでも費用処理です。研究と開発の区別が狙われます。
- 基準の違いで営業利益・総資産・ROAがどちらに動くかを判断させる問題に注意しましょう。
- 2次の記述式では、IFRS企業ののれん減損リスクを分析上どう評価するかを説明させる形も考えられます。
要点まとめ
- のれんは日本基準が規則償却、IFRSが非償却+減損テスト。
- 開発費は日本基準が費用処理、IFRSが要件を満たせば資産計上。
- IFRSは平時の利益が大きくなりやすいが、減損による利益の急減リスクがある。
- 比較する際は利益と資産の両面への影響を考える。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
