ひとことで言うと

  • 年金基金のリスク許容度は、サープラス(年金資産−年金負債)の水準母体企業の財務状況と収益性リスクの種類と特性などで決まります。
  • サープラスが大きく、母体企業が健全で収益力が高いほど、積立不足が生じても穴埋めできるため、リスク許容度は高くなります。
  • 年金にとってのリスクは資産単独の変動ではなく、負債と比べたサープラスの変動として考えるのが基本です。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「年金のリスク許容度の決定要因」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (4) 機関投資家の資産運用
協会の学習ポイント 年金基金のリスク許容度の決定要因(サープラスの水準、母体企業の財務状況と収益性、リスクの種類と特性)を理解する。

年金のリスク許容度とは

確定給付型の年金基金は、将来の給付(年金負債)を約束しています。運用で損失が出て積立不足になれば、最終的には母体企業が掛金の引上げなどで補わなければなりません。そのため年金のリスク許容度は、「どれだけの損失なら、給付の支払いや母体企業の経営に深刻な影響を与えずに吸収できるか」という観点から決まります。リスク許容度には、財務的に損失を吸収できる能力と、関係者がリスクを取る意思の両面があります。

サープラスの水準

サープラス(積立余剰)が大きい年金は、運用で損失が出ても積立不足に陥りにくく、リスク許容度が高くなります。逆に積立不足の年金は、さらなる損失が掛金負担の増加に直結するため、一般にリスク許容度は低くなります。

母体企業の財務状況と収益性

母体企業の財務体質が健全で収益力が高ければ、積立不足が生じても追加の掛金で補えるため、年金はより大きなリスクを取れます。また、母体企業の業績と年金資産の運用成果の相関も重要です。たとえば景気敏感な企業の年金が国内株式を多く持つと、不況時に本業の悪化と年金の積立不足が同時に起こり、母体企業の負担が重なります。この相関が高いほど、リスク許容度は下がると考えます。

リスクの種類と特性

年金にとっての主要なリスクは、資産価格の変動だけでなく、金利の変動による負債の変化です。資産と負債のデュレーションがずれていると、株価が動かなくても金利の変化だけでサープラスが大きく変動します。そのほか、加入者の年齢構成や受給者の割合(成熟度)も関係し、成熟度が高く給付の支払いが多い年金ほど、流動性の確保が必要で、損失を取り戻す時間も短いため、リスク許容度は低くなる傾向があります。

整理しておきたいポイント

要因 リスク許容度が高くなる リスク許容度が低くなる
サープラスの水準 積立余剰が大きい 積立不足
母体企業の財務・収益性 財務が健全、収益力が高い 財務が脆弱、収益が不安定
母体企業と年金資産の相関 低い 高い
加入者構成(成熟度) 若い加入者が中心 受給者の割合が高い
資産と負債のミスマッチ 小さい 大きい

具体例で確認

年金資産1,100億円(デュレーション5)、年金負債(現在価値)1,000億円(デュレーション15)の年金を考えます。サープラスは100億円です。金利が1%低下すると、近似的に次のようになります。

  • 資産:1,100億円 × 5 × 1% = +55億円 → 1,155億円
  • 負債:1,000億円 × 15 × 1% = +150億円 → 1,150億円
  • サープラス:100億円 → 5億円

資産価格は上昇しているのに、負債がそれ以上に増えたため、サープラスはほとんどなくなりました。見かけ上は十分な積立余剰があっても、負債とのデュレーションのミスマッチが大きければ、実質的なリスク許容度は低いと判断すべきです。母体企業の財務が弱ければ、なおさら慎重な資産配分や、デュレーションを長くして負債に近づける対応(LDI)が検討されます。

試験で問われやすいポイント

  • サープラスの水準、母体企業の財務状況と収益性、リスクの種類と特性という決定要因と、それぞれがリスク許容度を上げるか下げるかの方向が基本です。
  • 母体企業の本業と年金資産の相関が高いほどリスク許容度が下がる、という論点は見落としやすいので注意しましょう。
  • 年金のリスクは資産単独ではなく「サープラスの変動」でとらえる点、特に金利低下で負債が膨らむ仕組みが問われやすいです。
  • 資産・負債のデュレーションからサープラスの変化を計算する問題に慣れておきましょう。
  • 記述式では、与えられた年金と母体企業の状況から、リスク許容度が高いか低いかを根拠を挙げて説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 年金のリスク許容度は、サープラスの水準、母体企業の財務・収益性、リスクの種類と特性で決まる。
  • サープラスが大きく母体企業が健全なほど、リスク許容度は高い。
  • 母体企業の業績と年金資産の相関が高い、成熟度が高いとリスク許容度は低くなる。
  • リスクは資産単独でなく、負債と比べたサープラスの変動で考える。

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