ひとことで言うと

  • 重回帰の推定結果は、多重共線性・不均一分散・誤差項の系列相関・変数の選び方によって、見かけより信頼できなくなることがあります。
  • 多重共線性は係数の標準誤差を大きくし、不均一分散や系列相関は標準誤差の計算(t値)をゆがめます。
  • 決定係数は説明変数を増やすだけで上がるため、自由度修正済み決定係数などで「本当の説明力」を確かめます。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「説明力に影響する要因」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (11) 回帰分析(重回帰)
協会の学習ポイント 重回帰モデルの説明力に影響する要因について理解する。

多重共線性・不均一分散・系列相関とは

最小二乗法(OLS)の推定量が「偏りがなく、分散が最も小さい」という望ましい性質を持つのは、誤差項の分散が一定で互いに無相関であること、説明変数どうしが完全な線形関係にないこと、などの前提が満たされるときです。現実のデータではこれらの前提が崩れることが多く、そのとき推定結果や検定の信頼性、モデルの説明力の見え方が変わってきます。

多重共線性

説明変数どうしの相関が非常に高い状態です。全体としての当てはまり(決定係数)は高いのに、個々の係数の標準誤差が大きくなってt値が小さく(有意になりにくく)なったり、データを少し変えただけで係数の符号や大きさが大きく変わったりします。係数の不偏性そのものは失われませんが、個々の変数の影響を切り分けることが難しくなります。

不均一分散

誤差項の分散が観測値ごとに異なる状態です(例:規模の大きい企業ほどばらつきが大きい)。係数の推定値は不偏のままですが、通常の方法で計算した標準誤差が正しくなくなり、t検定・F検定の結論を誤るおそれがあります。対処法として、不均一分散に頑健な標準誤差(ホワイトの標準誤差)や加重最小二乗法があります。

誤差項の系列相関

時系列データで、ある期の誤差が前の期の誤差と相関している状態です。正の系列相関があると標準誤差が過小に計算されやすく、t値が過大になって「有意」と誤判定しやすくなります。ダービン・ワトソン(DW)統計量で確認するのが代表的です。

変数の選び方

本来必要な変数を落とすと(欠落変数)、その変数と相関する他の説明変数の係数に偏りが生じます。逆に不要な変数を加えると、決定係数は必ず上がる(下がらない)一方で推定の精度は落ちます。そのため、変数選択には自由度修正済み決定係数や情報量規準(AICなど)が使われます。

押さえておきたい公式

VIFj = 1 ÷ (1 − Rj2Rj2:説明変数 xj を他の説明変数で回帰したときの決定係数。VIFが大きいほど多重共線性が強い(目安として10超などが使われる)
DW = Σ(et − et−12 ÷ Σet2 ≒ 2(1 − ρ̂)ρ̂:残差の1次の自己相関係数。2付近なら系列相関なし、0に近いほど正の系列相関
自由度修正済み R̄2 = 1 − (1 − R2) × (n − 1) ÷ (n − k − 1)n:観測数、k:説明変数の数。変数を増やしても説明力が十分増えなければ低下する

具体例で確認

  • 多重共線性:説明変数が2つで、その相関係数が0.9のとき、Rj2=0.81なので VIF=1÷(1−0.81)≒5.26。係数の分散は、説明変数が無相関の場合の約5.26倍に膨らみます。
  • 系列相関:残差の1次の自己相関が0.6なら、DW≒2×(1−0.6)=0.8。2を大きく下回るので、正の系列相関が疑われます。
問題 係数の推定値 標準誤差・検定 主な対処
多重共線性 不偏だが不安定 標準誤差が大きくt値が小さい 変数の削除・合成、主成分の利用
不均一分散 不偏 通常の標準誤差が誤り 頑健な標準誤差、加重最小二乗法
系列相関 不偏(説明変数がラグ付き被説明変数を含まない場合) 正の相関なら標準誤差を過小評価 頑健な標準誤差、モデルの修正
欠落変数 偏りが生じる 結論そのものが誤る 理論に基づく変数選択

試験で問われやすいポイント

  • 多重共線性の典型的な症状:「R2やF値は大きいのに、個々のt値が小さい」。
  • 不均一分散・系列相関では係数は不偏のまま、問題は標準誤差と検定にある、という区別。
  • DW統計量の読み方(2付近で系列相関なし、0に近いと正、4に近いと負の系列相関)と、DW≒2(1−ρ̂)の計算。
  • 説明変数を追加すると決定係数は下がらない一方、自由度修正済み決定係数は下がりうる点。
  • 記述式では、推定結果の表から問題点を指摘し、その理由と対処法を説明させる形に備えましょう。

要点まとめ

  • 多重共線性は説明変数間の高い相関で、係数が不安定になりt値が小さくなります。VIFで確認します。
  • 不均一分散・系列相関は標準誤差をゆがめ、検定の結論を誤らせます。
  • 必要な変数の欠落は係数の偏りを生み、不要な変数の追加は精度を下げます。
  • 説明力の比較には自由度修正済み決定係数などを使います。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。