ひとことで言うと

  • 自己回帰(AR)モデルは、今期の値を過去の自分自身の値で説明する時系列モデルで、AR(1)なら yt = c + φyt−1 + εt と表します。
  • 予測は「将来の誤差の期待値はゼロ」として式に代入をくり返すだけで求められ、定常なら予測値は期間が延びるほど長期平均 c÷(1−φ)に近づきます。
  • 予測期間が長くなるほど予測誤差の分散は大きくなり、予測の良し悪しはRMSEなどの指標で評価します。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「自己回帰モデルによる予測」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (13) 時系列分析
協会の学習ポイント 自己回帰モデルによる予測について計算し評価できる。

自己回帰モデル(ARモデル)による予測とは

金利やインフレ率、景気指標などの時系列データには、「前期に高かった値は今期も高めになりやすい」という持続性(自己相関)が見られることがよくあります。この性質を利用して、過去の値から将来の値を予測するのが自己回帰モデル(AR:AutoRegressive model)です。1期前の値だけを使うものをAR(1)、p期前までの値を使うものをAR(p)と呼びます。

AR(1)モデルの形と定常条件

AR(1)は yt = c + φyt−1 + εt と書きます。εは平均ゼロ・分散σ2で互いに無相関な誤差(ホワイトノイズ)です。係数φの絶対値が1より小さい(|φ|<1)とき、系列は定常になり、平均 μ = c÷(1−φ) のまわりを行き来します。φが1に近いほど持続性が強く、ショックの影響が長く残ります。φ=1になると、次の学習ポイントで扱う単位根(ランダムウォーク)になります。

予測値の求め方

時点Tまでのデータがわかっているとき、1期先の予測値は、将来の誤差εT+1の期待値をゼロとして ŷT+1 = c + φyT です。2期先は、まだ観測されていないyT+1の代わりに予測値ŷT+1を代入して ŷT+2 = c + φŷT+1 と求めます。このように予測値を順に代入していくのがARモデルの予測の基本です。まとめると、h期先の予測値は μ + φh(yT − μ) となり、足元の値と平均との乖離がφhの割合で縮んでいきます。

予測の精度と評価

予測期間が長くなるほど、予測できない誤差が積み重なるため、予測誤差の分散は σ2(1 + φ2 + … + φ2(h−1)) と大きくなり、最終的には系列そのものの分散 σ2÷(1−φ2) に近づきます。つまり遠い将来の予測は「長期平均あたり」という以上の情報を持たなくなります。実際の予測精度は、予測値と実績値の差から計算するRMSE(平均二乗誤差の平方根)やMAE(平均絶対誤差)で評価し、単純な予測(前期値や平均値)と比べて改善しているかを確認します。次数pの選び方には、AIC・BICなどの情報量規準や残差の自己相関のチェックが使われます。

押さえておきたい公式

yt = c + φyt−1 + εtAR(1)モデル。|φ|<1なら定常
μ = c ÷ (1 − φ)  Var(yt) = σ2 ÷ (1 − φ2)定常AR(1)の平均と分散
ŷT+h = μ + φh(yT − μ)h期先の予測値。hが大きいほどμに近づく
予測誤差の分散 = σ2(1 + φ2 + φ4 + … + φ2(h−1))h=1ならσ2、h→∞でσ2÷(1−φ2)
記号 意味
c 定数項
φ 自己回帰係数(持続性の強さ)
εt 誤差項(平均0・分散σ2のホワイトノイズ)
μ 定常過程の平均(長期平均)
ŷT+h 時点Tの情報にもとづくh期先の予測値

具体例で確認

ある指標がAR(1)モデル yt = 0.5 + 0.6yt−1 + εt(誤差の分散σ2=1)に従い、直近の値がyT=3だったとします。

  1. 長期平均:μ = 0.5 ÷ (1 − 0.6) = 1.25
  2. 1期先予測:0.5 + 0.6 × 3 = 2.3
  3. 2期先予測:0.5 + 0.6 × 2.3 = 1.88
  4. 3期先予測:0.5 + 0.6 × 1.88 = 1.628(公式でも 1.25 + 0.63 × 1.75 = 1.628)
  5. 予測誤差の分散:1期先 1、2期先 1 + 0.36 = 1.36、3期先 1 + 0.36 + 0.1296 = 1.4896。hを大きくすると 1 ÷ (1 − 0.36) = 1.5625 に近づきます。

予測値は3から長期平均1.25に向かって少しずつ戻り、同時に予測の不確実性は大きくなっていくことが確認できます。

試験で問われやすいポイント

  • AR(1)の式から1期先・2期先の予測値を計算させる問題が典型です。2期先以降は予測値を代入する手順を示せるようにしましょう。
  • 定常AR(1)の平均 c÷(1−φ)分散 σ2÷(1−φ2)の計算、定常条件|φ|<1が問われやすいです。
  • 予測期間が延びると予測値は長期平均に収束し、予測誤差の分散は大きくなるという方向性を説明できるようにしておきましょう。
  • 記述式では、予測の評価方法(RMSEなどの指標、単純予測との比較、残差に自己相関が残っていないかの確認)を説明させる形も考えられます。
  • 定数項cと平均μを取り違える、φhではなくφ×hで計算してしまう、といったミスに注意しましょう。

要点まとめ

  • ARモデルは今期の値を過去の自分の値で説明するモデル
  • 予測は将来の誤差をゼロとして、予測値を順に代入して求める
  • 定常なら予測値は長期平均 c÷(1−φ) に近づき、予測誤差の分散は拡大して系列の分散に近づく
  • 予測精度はRMSEなどで評価し、単純な予測と比べる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。