ひとことで言うと

  • 株価に影響しうる未公開の重要な情報を入手しても、それを使って売買しない他人に伝えたり推奨したりしないという基準です。
  • 情報が公表され、市場に広く行き渡るまでは利用できません。
  • 公開情報と重要でない情報を組み合わせて独自の結論を導く分析(モザイク理論)は、正当なアナリスト業務として認められます。

この記事では、証券アナリスト2次「職業倫理・行為基準」の学習ポイントのひとつ「未公開の重要な情報の利用禁止の意義」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 職業倫理・行為基準
大分類 (3) 重要な行為基準の理解と具体的な業務における適切な行動と判断
協会の学習ポイント 未公開の重要な情報の利用の禁止等に関する職業行為基準の意義について説明できる。

未公開の重要な情報の利用禁止とは

アナリストは企業取材や業務上の関係を通じて、まだ公表されていない情報に接することがあります。日本証券アナリスト協会の「証券アナリスト職業行為基準」は、そのうち投資判断に重要な影響を与える未公開の情報を、自分や他人の取引に利用したり、他人に伝達したりすることを禁じています。金融商品取引法のインサイダー取引規制と重なる部分がありますが、職業行為基準は法令の対象に限らず、より広い範囲で公正な行動を求める点がポイントです。

「重要」と「未公開」の2つの要件

重要な情報とは、公表されれば証券の価格に影響を与える可能性が高い情報、合理的な投資家が投資判断で重視するような情報を指します。業績の大幅な修正、合併・買収、増資、新製品の成否などが典型です。未公開とは、その情報がまだ投資家一般に公表されていない状態のことです。一部の人しか知らない段階の情報は、たとえ噂として広まっていても公開されたとはいえません。

禁止される行為

未公開の重要な情報を入手した場合、その情報にもとづいて自分で売買すること、顧客や知人に伝えること、情報を示さずに売買を推奨することがいずれも禁じられます。情報を入手したら、社内のルールに従ってコンプライアンス部門などに報告し、発行会社に公表を促すといった対応が考えられます。

モザイク理論と情報管理

一方で、公開情報や、単独では重要でない未公開情報を丹念に集め、独自の分析によって重要な結論を導くことは、アナリストの本来の仕事です。これをモザイク理論と呼び、利用禁止の対象にはなりません。また、組織としては、投資銀行部門と調査部門の間に情報隔壁(ファイアウォール)を設けるなど、未公開情報が不適切に伝わらない体制づくりが重要です。

この基準の意義

一部の人だけが未公開の重要情報で利益を得られるなら、一般の投資家は不利な立場に置かれ、市場に参加しなくなってしまいます。この基準は、市場の公正性と投資家の信頼を守り、すべての投資家が同じ条件で取引できる環境を支えるものです。

整理しておきたいポイント

ケース 判断 理由
取材で聞いた未公表の業績大幅下方修正にもとづき売却 不可 重要かつ未公開の情報の利用
未公表の買収計画を友人に伝える 不可 情報の伝達も禁止される
公開情報と業界調査を組み合わせて業績悪化を予想 モザイク理論による正当な分析
情報が正式に公表され市場に行き渡った後の売買 もはや未公開ではない

具体例で確認

アナリストEさんは、Y社の役員との会食中に「来週、大型の企業買収を発表する予定だ」と聞かされました。まだ公表されていません。

  • やってはいけないこと:Y社株を買う、家族や顧客に買いを勧める、「近いうちに良いニュースがありそうです」とほのめかすことです。
  • 適切な対応:その情報を使った取引・推奨・伝達を一切行わず、社内のコンプライアンス部門に報告します。必要に応じて、担当銘柄の推奨を一時的に控えるといった対応がとられます。
  • 参考:一方、Eさんが工場の稼働状況や業界データなどの公開情報を積み上げて「Y社は業容拡大を狙っている」と分析するのは、モザイク理論にもとづく正当な調査です。

試験で問われやすいポイント

  • 「重要性」と「未公開性」の2つの要件を満たす情報が対象になる点を正確に説明できるかが問われます。
  • 禁止されるのは取引だけでなく、伝達や推奨も含む点が狙われやすいです。
  • モザイク理論による分析は禁止されないこと、噂が広まっていても公表前は未公開であることの区別が重要です。
  • 2次の記述式では、事例の情報が重要かつ未公開にあたるかを判断し、とるべき対応(報告、取引や推奨の停止など)を説明させる形が考えられます。
  • 職業倫理には一定の基準点(いわゆる足切り)があるため、重要論点として確実に押さえておきましょう。

要点まとめ

  • 未公開の重要な情報は、取引に使わず、他人に伝えたり推奨したりもしない。
  • 対象は「重要(価格に影響しうる)」かつ「未公開」の情報。
  • 公開情報などを組み合わせた独自分析(モザイク理論)は正当な業務。
  • 意義は、市場の公正性と投資家の信頼を守ること。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。