ひとことで言うと

  • 長期の資本市場(貸付資金市場)では、企業の投資が資金需要、家計などの貯蓄が資金供給となり、両者が等しくなるように実質金利が決まります。
  • 投資は実質金利が上がると減り、貯蓄は実質金利が上がると増える(か、あまり変わらない)と考えます。
  • 開放経済では、国内の貯蓄と投資の差が経常収支(海外への資金の貸し借り)に対応します。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「長期の投資と貯蓄」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (4) 景気循環と経済成長とその要因
協会の学習ポイント 長期の資本市場における投資と資金需要、貯蓄と資金供給について説明できる。

長期の資本市場(投資と貯蓄)とは

長期のマクロ経済では、生産量は生産関数によって供給側で決まります。そのうえで、生産された所得のうちどれだけが消費に回り、どれだけが貯蓄されて投資の資金になるのかを調整するのが長期の資本市場です。教科書では「貸付資金市場」として、資金の需要と供給の関係で表します。

資金需要:投資

企業は、設備投資から得られる収益率が資金調達のコストである実質金利を上回る投資を実行します。実質金利が下がれば採算に合う投資案件が増えるため、投資(資金需要)は実質金利の減少関数になります。技術革新などで将来の収益見通しが改善すると、同じ金利でも投資が増え、資金需要曲線は右にシフトします。

資金供給:貯蓄

家計は、実質金利が高いほど今の消費を控えて将来に回す誘因(代替効果)を持つため、貯蓄は一般に実質金利の増加関数と考えます(ただし所得効果が働くため、金利への反応は小さいこともあります)。経済全体の貯蓄(国民貯蓄)は、民間貯蓄政府貯蓄(財政収支 T−G)の合計です。財政赤字が拡大すると国民貯蓄が減り、資金供給曲線が左にシフトします。

実質金利による調整と開放経済

閉鎖経済では、国民貯蓄=投資となるように実質金利が決まります。家計の貯蓄意欲が高まれば実質金利は下がり投資が増え、財政赤字が拡大すれば実質金利が上がり民間投資が減ります(クラウディング・アウト)。開放経済では、国内の貯蓄が投資を上回る国は余った資金を海外に貸し出し(経常黒字)、下回る国は海外から借り入れます(経常赤字)。資本移動が自由な小国では、実質金利は世界金利に近づき、国内の貯蓄と投資の差は経常収支で調整されます。

押さえておきたい公式

Sp + (T − G) = I + CA貯蓄・投資バランス(CAは経常収支、閉鎖経済ではCA=0)
CA = (Sp − I) + (T − G)民間の貯蓄超過と財政収支の合計が経常収支に等しい
記号 意味
Sp 民間貯蓄
T − G 政府貯蓄(財政収支。マイナスなら財政赤字)
I 国内投資
CA 経常収支(海外への純貸出)

具体例で確認

ある国の民間貯蓄がGDP比25%、財政赤字がGDP比5%(T−G=−5%)、国内投資がGDP比22%とします。

  1. 国民貯蓄:25 + (−5) = 20%
  2. 経常収支:20 − 22 = −2%(経常赤字。不足分を海外から借り入れ)

ここで財政赤字がGDP比8%に拡大し、民間貯蓄と投資が変わらなければ、経常赤字は −5%に広がります。閉鎖経済であれば、この資金不足は実質金利の上昇を通じて民間投資を押し下げる形で調整されることになります。

試験で問われやすいポイント

  • 投資は実質金利の減少関数、貯蓄は増加関数という関係と、曲線がシフトする要因(技術革新、財政赤字など)が問われやすいです。
  • 貯蓄・投資バランス式を使い、経常収支や財政収支を計算させる問題では、計算過程を示せるようにしましょう。
  • 財政赤字の拡大が実質金利上昇→民間投資減少(閉鎖経済)または経常赤字拡大(開放経済)につながる流れを記述式で説明できるようにしましょう。
  • 決まるのは名目金利ではなく実質金利である点に注意しましょう。

要点まとめ

  • 長期の資本市場では、投資(資金需要)と貯蓄(資金供給)が実質金利で調整される
  • 国民貯蓄は民間貯蓄と政府貯蓄(T−G)の合計
  • 開放経済では貯蓄と投資の差が経常収支に対応する
  • 財政赤字の拡大は実質金利上昇や経常赤字拡大につながりうる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。