ひとことで言うと

  • ベクトルと行列を使うと、ポートフォリオの期待リターンw’μと分散w’Σwを銘柄数によらず同じ式で扱えます。
  • ウェイト合計1の制約のもとで分散を最小化すると、最小分散ポートフォリオ w = Σ−11 ÷ (1’Σ−11) が導けます。
  • 2次形式・ベクトルの微分・逆行列という、この分野で学ぶ道具がひとつにつながる論点です。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「ポートフォリオへの応用」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (10) ベクトルと行列
協会の学習ポイント ベクトルや行列のポートフォリオマネジメントへの応用について理解する。

ベクトル・行列のポートフォリオへの応用とは

平均分散アプローチでは、ポートフォリオを「期待リターン」と「リスク(分散)」の2つで評価します。n銘柄のポートフォリオでは、ウェイトのベクトルw、期待リターンのベクトルμ、分散共分散行列Σを使って、期待リターンを w’μ、分散を w’Σw と書けます。銘柄数が2でも100でも、式の形は変わりません。

最小分散ポートフォリオの導出

すべての成分が1のベクトル1 = (1, …, 1)’ を使うと、「ウェイトの合計が1」という制約は w’1 = 1 と書けます。この制約のもとで w’Σw を最小化するため、ラグランジュ関数 L = w’Σw − λ(w’1 − 1) をwで微分して0とおくと、2Σw = λ1 です。両辺に左からΣ−1を掛けて w = (λ/2)Σ−11 とし、合計が1になるよう定数を決めると、w = Σ−11 ÷ (1’Σ−11) が得られます。このときの分散は 1 ÷ (1’Σ−11) です。

そのほかの応用

目標とする期待リターンの制約 w’μ = μp を加えれば、同じ手順で効率的フロンティア上のポートフォリオが求まります。無リスク資産がある場合の接点ポートフォリオは、Σ−1(μ − rf1) に比例するウェイトになります。さらに、各資産と市場ポートフォリオの共分散 Σwm を市場分散 wm‘Σwm で割るとベータのベクトルになるなど、CAPMやリスク寄与度の分析にも行列表記が使われます。

押さえておきたい公式

min w’Σw s.t. w’1 = 1最小分散ポートフォリオの問題設定
wMV = Σ−11 ÷ (1’Σ−11)最小分散ポートフォリオのウェイト
σMV2 = 1 ÷ (1’Σ−11)最小分散ポートフォリオの分散
wT ∝ Σ−1(μ − rf1)接点ポートフォリオ(合計が1になるよう基準化する)
記号 意味
1 すべての成分が1のベクトル
Σ−1 分散共分散行列の逆行列
μ、rf 期待リターンのベクトル、無リスク金利

具体例で確認

資産1の分散0.04(標準偏差20%)、資産2の分散0.09(標準偏差30%)、共分散0.01とします。Σ = [[0.04, 0.01], [0.01, 0.09]]。

  1. 行列式:0.04×0.09 − 0.01×0.01 = 0.0035
  2. 逆行列:Σ−1 = (1/0.0035) × [[0.09, −0.01], [−0.01, 0.04]]
  3. Σ−11 = (1/0.0035) × (0.09 − 0.01, −0.01 + 0.04)’ = (1/0.0035) × (0.08, 0.03)’
  4. 基準化:w1 = 0.08 ÷ (0.08 + 0.03) = 8/11 ≒ 72.7%、w2 = 3/11 ≒ 27.3%
  5. 分散:1’Σ−11 = 0.11 ÷ 0.0035 ≒ 31.43 より、σ2 ≒ 1 ÷ 31.43 ≒ 0.0318、標準偏差 ≒ 17.84%

どちらの資産単独(20%、30%)よりもリスクが低くなっており、分散投資の効果が確認できます。

試験で問われやすいポイント

  • 最小分散ポートフォリオをラグランジュ乗数法で導出する流れ(目的関数・制約・微分・解)が問われやすいです。
  • 公式 w = Σ−11 ÷ (1’Σ−11) を使った2資産の計算では、2×2の逆行列を正確に求めることがカギです。
  • 2資産のときは w1 = (σ22 − σ12) ÷ (σ12 + σ22 − 2σ12) と一致することを確認しておくと検算に使えます。
  • 最小分散ポートフォリオは期待リターンの情報を使わない点、接点ポートフォリオは使う点の違いに注意しましょう。
  • 記述式では、行列表記で問題を定式化し、導出過程と数値計算の両方を示すことが求められます。

要点まとめ

  • 期待リターンはw’μ、分散はw’Σw、予算制約はw’1=1と書ける
  • 最小分散ポートフォリオはw=Σ−11÷(1’Σ−11)、分散は1÷(1’Σ−11)
  • 接点ポートフォリオはΣ−1(μ−rf1)に比例する
  • 2次形式・ベクトルの微分・逆行列が組み合わさる総合論点

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。