ひとことで言うと

  • 株式会社は、株主の有限責任株式の譲渡自由によって、多くの投資家から広く資金を集められる会社形態です。
  • 出資者(株主)と経営者が分かれる所有と経営の分離により、経営者が株主の利益に反して行動するエージェンシー問題が生じます。
  • 会社法の機関設計やコーポレートガバナンス・コード、株主の権利が、この問題を抑えて資本市場での資金調達を支えています。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「株式会社の制度と資本市場」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (9) 産業政策と市場規制
協会の学習ポイント 株式会社に関する制度と資本市場について説明できる。

株式会社制度とコーポレートガバナンスとは

株式会社は、会社法にもとづいて設立される会社形態で、資本市場と深く結びついています。その特徴は次の3点に整理できます。

  • 有限責任:株主は出資額を超えて会社の債務を負いません。損失の上限が決まっているため、多くの人が安心して出資でき、分散投資もしやすくなります。
  • 株式の譲渡自由:株主は原則として株式を自由に売却できます。証券取引所に上場すれば流動性が高まり、投資家は必要なときに資金を回収できます。
  • 所有と経営の分離:多数の株主が経営を専門の経営者に委ねることで、資金と経営能力を効率的に組み合わせられます。

株主の権利

株主の権利は、剰余金の配当を受ける権利や残余財産の分配を受ける権利など経済的利益に関する自益権と、株主総会での議決権や株主代表訴訟を起こす権利など会社の経営に関与する共益権に分けられます。株主は債権者に劣後する残余請求権者であり、企業価値が高まるほど利益を得る立場にあるため、経営を監視する動機を持ちます。

エージェンシー問題とガバナンス

所有と経営が分離すると、経営者が自らの地位の保全や規模の拡大、過大な報酬などを優先し、株主の利益を損なうおそれがあります(エージェンシー問題)。これを抑える仕組みがコーポレートガバナンスです。会社法上の機関設計としては、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社などがあり、取締役会による監督や社外取締役の活用が図られます。上場会社には、証券取引所のコーポレートガバナンス・コードが適用され、機関投資家にはスチュワードシップ・コードが対話を促しています。さらに、業績連動報酬、株価の下落による買収の脅威(企業支配権市場)、負債による規律なども経営者の規律づけに役立ちます。

ガバナンスが信頼できると投資家が求めるリスク・プレミアムが下がり、企業は新株発行(公募増資、第三者割当増資、株主割当増資)などで資金を調達しやすくなります。

整理しておきたいポイント

特徴・仕組み 資本市場へのメリット 生じうる問題
有限責任 多数の投資家から資金を集めやすく、分散投資が可能 株主が過大なリスクを取る動機(債権者との利害対立)
株式の譲渡自由・上場 流動性が高まり、株価が経営の評価指標となる 短期的な株価への過度な関心
所有と経営の分離 専門経営者による効率的な経営 エージェンシー問題
新株発行による資金調達 返済不要の自己資本を調達できる 既存株主の持分の希薄化

具体例で確認

発行済株式数1,000万株の会社の株式を100万株(持株比率10%)保有する株主がいるとします。

  • 有限責任:会社が倒産しても、この株主の損失は株式の取得に支払った金額までで、会社の借入金を肩代わりする必要はありません。
  • 第三者割当増資:会社が特定の相手に250万株を新たに発行すると、発行済株式数は1,250万株になり、この株主の持株比率は 100 ÷ 1,250 = 8% に低下します(希薄化)。発行価格が時価より低いと、1株あたりの価値も下がるおそれがあります。
  • このため会社法では、特に有利な価格での発行には株主総会の特別決議を求めるなど、既存株主を保護するルールが設けられています。

試験で問われやすいポイント

  • 有限責任・株式の譲渡自由・所有と経営の分離という株式会社の特徴と、それが資本市場の発展にどう役立つか。
  • 自益権と共益権の区別、株主が残余請求権者であることの意味。
  • エージェンシー問題の内容と、取締役会・社外取締役・報酬設計・企業支配権市場・負債などの規律づけの手段。
  • 新株発行による希薄化の計算や、株主と債権者の利害対立。
  • 記述式では、ガバナンスの強化が資本コストや企業価値にどう影響するかを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 株式会社は有限責任と株式の譲渡自由により、広く資金を集められる。
  • 所有と経営の分離はエージェンシー問題を生み、ガバナンスの仕組みで抑える。
  • 株主には自益権と共益権があり、残余請求権者として経営を監視する動機を持つ。
  • 信頼できるガバナンスは資本コストを下げ、資本市場での資金調達を支える。

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