ひとことで言うと

  • 無形資産は、特許権・商標権・ソフトウェア・のれんなど、形はないが将来の収益に貢献する資産です。
  • 外部から購入したものは、有形固定資産と同じく購入代価 + 付随費用が取得原価になります。
  • 社内で生み出したものは資産計上に制限があり、日本基準では研究開発費は発生時に費用処理します。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「無形資産の取得原価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (5) 費用の測定
協会の学習ポイント 無形資産の取得原価を理解する。

無形資産の取得原価とは

無形資産(日本の貸借対照表では主に「無形固定資産」)には、特許権・商標権・借地権などの法律上の権利、ソフトウェア、企業買収で生じるのれんなどがあります。形がないぶん、「どこまでを資産にしてよいか」の判断が難しく、会計基準は取得の仕方によって扱いを分けています。

外部から取得した無形資産

特許権や商標権を他社から買った場合は、有形固定資産と同じく購入代価に登録費用などの付随費用を加えた額が取得原価です。企業結合(買収)で受け入れた無形資産は、識別可能なものであれば時価を基礎として配分された額で計上し、残りの差額がのれんになります。

社内で生み出した無形資産

自社で研究開発した技術やブランドは、将来の収益への貢献が不確実なため、資産計上が制限されます。日本基準では研究開発費はすべて発生時に費用処理します。また、自社で生み出したのれん(自己創設のれん)は資産に計上できません。これに対してIFRSでは、研究段階の支出は費用ですが、開発段階の支出は技術的な実現可能性などの要件を満たせば資産計上する点が大きな違いです。

ソフトウェアの取扱い

ソフトウェアは制作目的によって扱いが分かれます。研究開発目的のものは研究開発費です。市場販売目的のものは、最初に製品化された製品マスターが完成するまでの費用は研究開発費とし、それ以降の制作費(著しい改良を除く)は資産計上します。自社利用目的のものは、将来の収益獲得や費用削減が確実と認められる場合に取得原価を資産計上します。

整理しておきたいポイント

ケース 日本基準の扱い IFRSとの主な違い
特許権などの購入 購入代価 + 付随費用で資産計上 基本的に同じ
研究費 発生時に費用 同じく費用
開発費(研究開発費) 発生時に費用 要件を満たせば資産計上
自己創設のれん 計上しない 同じく計上しない
買収で生じたのれん 資産計上し20年以内で償却 償却せず減損テストのみ

具体例で確認

A社は当期に次の支出を行いました。

  • 他社から特許権を800万円で購入し、登録費用20万円を支払った
  • 新素材の研究に300万円、その製品化のための開発に500万円を支出した
  • 社内の業務効率化のためのシステム(自社利用ソフトウェア)を600万円で外部業者に作らせ、費用削減効果が確実と見込まれる

日本基準では、特許権は800 + 20 = 820万円、ソフトウェアは600万円を無形固定資産として計上し、研究・開発の合計800万円は当期の研究開発費(費用)となります。仮にIFRSで開発段階の500万円が資産計上の要件を満たしていれば、当期の費用は300万円にとどまり、利益は日本基準より大きく表示されます。研究開発型の企業を比較するときは、この違いに注意が必要です。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「有形固定資産・無形資産の取得原価を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 日本基準では研究開発費は発生時にすべて費用処理し、資産計上しないこと。
  • IFRSでは開発段階の支出が一定要件のもとで資産計上される点との違い。
  • 自己創設のれんは計上できず、のれんは企業結合で取得した場合のみ計上されること。
  • ソフトウェアの制作目的(研究開発・市場販売・自社利用)による処理の違い。
  • 無形資産を費用処理する企業は、資産や利益が小さく見え、ROEなどの比率に影響すること。

要点まとめ

  • 外部から取得した無形資産は購入代価 + 付随費用で計上する。
  • 日本基準では研究開発費は発生時に費用、IFRSは開発費の資産計上がありうる。
  • 自己創設のれんは資産計上しない。
  • ソフトウェアは制作目的によって資産計上するかどうかが異なる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。