投資判断の基本原理とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 投資判断の基本は、投資から得られる将来のキャッシュフローを、リスクに見合った資本コストで割り引いた現在価値で評価することです。
- 今日の100円と1年後の100円は価値が違う(貨幣の時間価値)ため、時点の異なるお金は現在価値にそろえてから比べます。
- 評価の対象は会計上の利益ではなく、投資を行うことで増える現金の出入り(増分キャッシュフロー)です。
この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「投資判断の基本原理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (4) 投資の意思決定 |
| 協会の学習ポイント | 投資の意思決定における基本原理とその基礎となる概念(キャッシュフロー、現在価値)を理解する。 |
投資判断の基本原理とは
企業が工場の建設や新製品の開発などに投資するかどうかを決めるとき、最も基本となる考え方は「投資によって企業価値が増えるなら実行し、減るなら見送る」というものです。そして企業価値は、将来生み出されるキャッシュフローの現在価値で測られます。
貨幣の時間価値と現在価値
今日手元にある100円は、預金や投資に回せば1年後に利息が付いて増えます。そのため、今日の100円は1年後の100円より価値があります。これを貨幣の時間価値といいます。将来のお金を今日の価値に直すには、割引率を使って「割り引く」計算をします。こうして求めた今日時点の価値が現在価値(PV)です。
割引率は「資本コスト」
割引率には、その投資と同じリスクを持つ他の投資で得られたはずのリターン、つまり機会費用としての資本コストを使います。リスクの高い投資ほど投資家はより高いリターンを求めるため、割引率は高くなり、同じキャッシュフローでも現在価値は小さくなります。
なぜ「利益」ではなく「キャッシュフロー」なのか
会計上の利益は、減価償却のように現金の支出を伴わない費用を含み、また収益や費用を計上する時点が実際の入出金の時点とずれることがあります。投資家が実際に使えるのは現金であり、時間価値を正しく反映するには、いつ・いくらの現金が出入りするかを捉える必要があります。また、評価に含めるのは、その投資を行うことで新たに増える(または減る)キャッシュフローだけで、税引後の値で考えるのが原則です。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| CFt | t年後のキャッシュフロー |
| r | 割引率(資本コスト) |
| I0 | 現時点の投資額 |
| n | 投資の期間(年数) |
具体例で確認
今1,000万円を投資すると、1年後から3年間、毎年400万円のキャッシュフローが得られるプロジェクトがあります。資本コストは8%です。
- 1年後の400万円の現在価値:400 ÷ 1.08 ≒ 370.37万円
- 2年後の400万円の現在価値:400 ÷ 1.082 ≒ 342.94万円
- 3年後の400万円の現在価値:400 ÷ 1.083 ≒ 317.53万円
- 現在価値の合計:≒ 1,030.84万円(年金現価の式でも同じ値になります)
- NPV:1,030.84 − 1,000 ≒ 30.84万円
単純に合計すると受け取りは1,200万円ですが、時間価値を考慮すると1,030.84万円の価値にとどまります。それでも投資額1,000万円を上回るため、このプロジェクトは企業価値を約30.84万円増やすと判断でき、実行すべきということになります。
試験で問われやすいポイント
- 現在価値の計算と、割引率が上がると現在価値が下がるという方向が基本として問われやすいです。
- 割引率は、同じリスクの投資で得られる機会費用としての資本コストであることを押さえておきましょう。
- 評価に使うのは会計上の利益ではなく税引後の増分キャッシュフローである点が狙われやすいです。
- キャッシュフローを単純合計して投資額と比べるのは誤り、という時間価値を無視するひっかけに注意しましょう。
- 毎年一定額が続く場合の年金現価の計算を使えると、計算問題を速く解けます。
要点まとめ
- 投資は将来キャッシュフローの現在価値で評価し、企業価値が増えるなら実行する
- 割引率はリスクに見合った資本コスト(機会費用)
- 評価対象は会計上の利益ではなく、税引後の増分キャッシュフロー
- NPV=将来キャッシュフローの現在価値の合計-投資額
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
