ひとことで言うと

  • 企業の費用は、生産量に関係なくかかる固定費用と、生産量に応じて増える可変費用に分けられます。
  • 価格が平均費用の最低点(損益分岐点)を下回ると赤字、平均可変費用の最低点(操業停止点)を下回ると生産をやめたほうがよくなります。
  • 生産規模を大きくすると平均費用が下がる現象を規模の経済、逆に上がる現象を規模の不経済といいます。

この記事では、証券アナリスト1次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「供給曲線と生産・費用の関係」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/市場と経済の分析
大分類 (1) 市場メカニズムと企業行動
協会の学習ポイント 供給曲線の見方、生産と費用の関係(収穫逓増・逓減の現象、損益分岐点や操業停止点、規模の経済・不経済)について説明できる。

生産と費用の関係とは

収穫逓増と収穫逓減

工場の設備(資本)を一定にしたまま労働者を増やしていくと、はじめは分業が進んで1人追加するごとの生産の増加分(限界生産物)が大きくなる収穫逓増が見られることがあります。しかし、設備が限られているので、やがて1人あたりの追加生産は小さくなっていきます。これが収穫逓減です。収穫逓減のもとでは、追加1単位を作るための費用(限界費用MC)は生産量とともに上昇します。

費用曲線の形

総費用TCは固定費用FCと可変費用VCの合計です。これを生産量で割ったものが平均費用AC、可変費用だけを割ったものが平均可変費用AVCです。AC・AVCはともにU字型になることが多く、MC曲線はACとAVCのそれぞれの最低点を下から通過します。平均より高い追加費用がかかれば平均は上がり、低ければ平均は下がるためです。

損益分岐点と操業停止点

完全競争企業は価格=MCとなる量を生産します。価格がACの最低点と等しいとき、利潤はちょうどゼロになります。この点が損益分岐点です。価格がこれを下回ると赤字ですが、すぐに生産をやめるべきとは限りません。短期では固定費用は生産をやめても払い続けなければならないため、売上で可変費用さえまかなえれば、生産を続けたほうが赤字は小さくなります。価格がAVCの最低点を下回ると可変費用も回収できないので、生産をやめたほうがよくなります。この点が操業停止点です。

供給曲線の見方

このため、完全競争企業の短期の供給曲線は、MC曲線のうち操業停止点より上の部分になります。

規模の経済・不経済

設備も含めてすべての投入を増やせる長期では、生産規模を拡大すると大量仕入れや専門化によって平均費用が下がる規模の経済が働くことがあります。一方、規模が大きくなりすぎると管理や調整の負担が増えて平均費用が上がる規模の不経済が生じます。

押さえておきたい公式

TC = FC + VC  AC = TC ÷ Q  AVC = VC ÷ Q総費用・平均費用・平均可変費用
MC = ΔTC ÷ ΔQ限界費用:生産量を1単位増やしたときの総費用の増加(総費用曲線の傾き)
価格の水準 企業の判断(短期)
AC最低点より上 黒字で生産
AVC最低点とAC最低点の間 赤字だが生産継続(固定費の一部を回収)
AVC最低点より下 操業停止(損失=固定費用)

具体例で確認

総費用がTC = Q3 − 6Q2 + 15Q + 32 の企業を考えます(固定費用FC=32)。

  1. AVC = Q2 − 6Q + 15 は、Q=3で最小値 9 − 18 + 15 = 6。これが操業停止価格です。
  2. MC = 3Q2 − 12Q + 15。AC = Q2 − 6Q + 15 + 32/Q の最低点ではMC=ACとなり、Q=4のとき AC = 16 − 24 + 15 + 8 = 15、MC = 48 − 48 + 15 = 15 で一致します。損益分岐価格は15です。
  3. 価格が10なら、赤字ですがAVCの最低点(6)より高いので、短期的には生産を続けたほうが損失は小さくなります。

試験で問われやすいポイント

  • 損益分岐点=AC最低点操業停止点=AVC最低点という対応を逆にしないよう注意しましょう。
  • MC曲線はACとAVCの最低点を通るという性質が問われやすいです。
  • 価格が損益分岐点と操業停止点の間なら赤字でも生産を続ける理由(固定費用は埋没している)を説明できるようにしましょう。
  • 費用関数からAVC・ACの最低点を求める計算に慣れておきましょう。
  • 収穫逓減(短期・一部の投入を固定)と規模の不経済(長期・すべての投入を変化)を混同しないようにしましょう。

要点まとめ

  • TC=FC+VC、AC・AVCはU字型でMCがその最低点を通る
  • 損益分岐点はAC最低点、操業停止点はAVC最低点
  • 短期の供給曲線はMC曲線の操業停止点より上の部分
  • 長期に規模拡大でACが下がれば規模の経済、上がれば規模の不経済

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。