ひとことで言うと

  • 産業連関表は、ある年に各産業がどの産業から原材料などを買い(投入)、生産したものをどこに売ったか(産出)を一覧にした表です。
  • 縦(列)に見ると費用構成(投入)、横(行)に見ると販路構成(産出)がわかります。
  • 投入係数とレオンチェフ逆行列を使うと、ある最終需要の増加が各産業の生産をどれだけ誘発するか(波及効果)を計算できます。

この記事では、証券アナリスト1次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「産業連関表」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/市場と経済の分析
大分類 (3) 国民経済計算の仕組み
協会の学習ポイント 産業連関表の仕組みについて説明できる。また、表の数値を解釈・分析できる。

産業連関表とは

自動車を1台作るには、鉄鋼・ガラス・タイヤ・電子部品などが必要で、それらを作るにはさらに電力や化学製品が必要です。産業連関表は、こうした産業間の取引のつながりを、行列の形で記録した統計です。経済学者レオンチェフが考案したことから、分析手法はレオンチェフ・モデルと呼ばれます。日本では関係府省庁が共同で、おおむね5年ごとに作成しています。

表の読み方

表の左上には産業どうしの取引(中間需要・中間投入)が並びます。列(縦)方向に読むと、その産業が生産のために各産業から何をいくら買い、さらに賃金や利潤などの粗付加価値をいくら生み出したか、という費用構成がわかります。行(横)方向に読むと、その産業の生産物が他の産業の原材料(中間需要)や、消費・投資・輸出などの最終需要にどれだけ売られたか、という販路構成がわかります。各産業の列の合計(総投入)と行の合計(総産出)は一致します。

投入係数とレオンチェフ逆行列

ある産業の生産1単位あたりに必要な各産業からの投入量を投入係数といいます。投入係数が安定していると仮定すると、最終需要が増えたときに、直接必要な生産だけでなく、その原材料の生産、さらにその原材料の生産…と続く波及をすべて合計した生産の増加を計算できます。この合計の倍率をまとめた行列がレオンチェフ逆行列(生産誘発係数表)です。

分析上の前提と注意

この分析は、投入係数が一定(生産技術や価格が変わらない)、生産能力に余裕がある、といった前提に立っています。また実際の分析では、需要の一部が輸入で満たされる分を考慮する必要があります。波及効果の大きさは目安として解釈することが大切です。

押さえておきたい公式

投入係数 aij = xij ÷ Xjj産業が生産1単位に必要とするi産業からの投入
X = AX + F → X = (I − A)−1F(I − A)−1がレオンチェフ逆行列
記号 意味
xij i産業からj産業への中間投入額
X 各産業の生産額(総産出)
A 投入係数行列
F 最終需要(消費・投資・輸出など)
I 単位行列

具体例で確認

農業と工業の2産業からなる経済の産業連関表を考えます(輸入は無視します)。

投入\産出 農業 工業 最終需要 生産額
農業 100 120 280 500
工業 200 40 160 400
粗付加価値 200 240
生産額 500 400
  1. 投入係数:農業列は 100 ÷ 500 = 0.2、200 ÷ 500 = 0.4。工業列は 120 ÷ 400 = 0.3、40 ÷ 400 = 0.1。
  2. レオンチェフ逆行列を計算すると、農業列は(農業1.5、工業約0.67)、工業列は(農業0.5、工業約1.33)になります。
  3. 農産物の最終需要が100増えると、農業の生産は 1.5 × 100 = 150、工業の生産は約0.67 × 100 ≒ 66.7 増えます。
  4. 生産誘発額の合計は約216.7で、最初の需要100の約2.17倍(逆行列の農業列の合計)になります。

粗付加価値の合計(200 + 240 = 440)と最終需要の合計(280 + 160 = 440)が一致している点も確認できます。これは三面等価に対応する関係です。

試験で問われやすいポイント

  • 列=投入(費用構成)、行=産出(販路構成)という読み方の区別が問われやすいです。
  • 投入係数は中間投入額 ÷ その産業(列)の生産額で求めます。行の生産額で割るミスに注意しましょう。
  • レオンチェフ逆行列の列の合計が、その産業に最終需要が1単位生じたときの経済全体への生産波及の大きさを表します。
  • 粗付加価値の合計=最終需要の合計(輸入がない場合)、総投入=総産出という表の性質を押さえましょう。
  • 投入係数一定・供給制約なしといった分析の前提や限界も問われることがあります。

要点まとめ

  • 産業連関表=産業間の取引を行列形式で記録した表
  • 列は費用構成(投入)、行は販路構成(産出)を表す
  • 投入係数=中間投入額÷その産業の生産額
  • レオンチェフ逆行列で最終需要の変化による生産波及効果を計算できる

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