ひとことで言うと

  • 上場株式のベータは、個別株のリターンを市場リターンに回帰した傾き(共分散 ÷ 市場の分散)として推計します。
  • 非公開株は株価がないため、類似上場企業のベータから負債の影響を取り除き(アンレバード)、対象企業の資本構成で掛け直して(リレバード)推計します。
  • 計測期間やデータの頻度、比較対象の選び方で推計値が変わる点に注意が必要です。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「ベータの推計」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略
協会の学習ポイント 上場株式や非公開株のベータ推計方法について理解する。

ベータの推計とは

ベータ(β)は、市場全体が1%動いたときに個別株式がおおむね何%動くかを表す感応度で、CAPMで株主資本コストを求めるときに欠かせません。ただしベータは直接観察できないため、データから推計する必要があります。

上場株式:回帰分析で推計する

過去の一定期間(例えば月次リターンで5年分など)について、個別株式のリターンを縦軸、市場ポートフォリオ(株価指数)のリターンを横軸にとり、最小二乗法で回帰直線を引きます。この直線の傾きがベータです。これをマーケット・モデルによる推計といいます。推計値は、期間の長さ、日次・週次・月次といったデータの頻度、どの指数を市場の代理とするかによって変わります。

過去データから求めたベータは誤差を含み、長い目で見ると1に近づく傾向があるといわれます。そのため、実務では推計値を1の方向に修正した修正ベータ(アジャステッド・ベータ)を使うこともあります。

非公開株:類似上場企業から推計する

非公開企業や上場して間もない企業は、株価データがないか不十分です。そこで、事業内容が似た上場企業のベータを使います。ただし、株式のベータには事業のリスクに加えて負債による財務リスクが含まれるため、比較企業のベータ(レバード・ベータ)からまず負債の影響を取り除いて事業そのもののベータ(アンレバード・ベータ)を求め、次に対象企業の負債比率を使ってベータを掛け直します(リレバード)。複数の比較企業のアンレバード・ベータの平均や中央値を使うのが一般的です。

押さえておきたい公式

βi = Cov(Ri, RM) ÷ Var(RM)回帰直線 Ri = α + β × RM + ε の傾き
βU = βL ÷ {1 + (1 − t) × D ÷ E}アンレバード(負債の影響を除く):負債のベータをゼロとみなす形(ハマダの式)
βL = βU × {1 + (1 − t) × D ÷ E}リレバード:対象企業の負債比率で掛け直す
記号 意味
βL レバード・ベータ(負債のある企業の株式のベータ)
βU アンレバード・ベータ(事業リスクだけのベータ)
D ÷ E 負債÷株主資本(原則として時価ベース)
t 法人税率

具体例で確認

例1:回帰によるベータ

A社株式と市場のリターンの共分散が0.0024、市場リターンの分散が0.0020なら、β = 0.0024 ÷ 0.0020 = 1.2です。

例2:非公開企業B社のベータ

類似上場企業のベータが1.3、その企業のD/Eが0.5、税率が30%とします。B社のD/Eは0.8です。

  1. アンレバード:1.3 ÷ {1 + 0.7 × 0.5} = 1.3 ÷ 1.35 ≒ 0.963
  2. リレバード:0.963 × {1 + 0.7 × 0.8} = 0.963 × 1.56 ≒ 1.50

B社は比較企業より負債比率が高いため、同じ事業リスクでも株式のベータは大きくなります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「株式リスクプレミアム・CAPM・マルチファクターモデル・ベータ推計を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • ベータ=共分散÷市場の分散(相関係数×個別株の標準偏差÷市場の標準偏差でも同じ)という定義が問われやすいです。
  • 非公開株のベータについて、アンレバード→リレバードの手順を計算過程とともに示せるようにしておきましょう。記述式では「なぜ負債の影響を取り除くのか」の説明も求められやすいです。
  • 負債比率が高いほど株式のベータは大きくなるという方向を押さえておきましょう。
  • 計測期間・データ頻度・市場指数の選択によって推計値が変わるという推計上の問題点が問われることがあります。
  • D/Eは簿価ではなく時価ベースが原則である点もひっかけになりやすいです。

要点まとめ

  • 上場株のベータは回帰直線の傾き(共分散÷市場の分散)
  • 推計値は期間・頻度・指数で変わり、修正ベータを使うこともある
  • 非公開株は類似企業のベータをアンレバード→リレバードして求める
  • 負債比率が高いほどレバード・ベータは大きい

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。