ひとことで言うと

  • Zスプレッドは、スポットレート・カーブ全体に一律に上乗せして割り引いたとき、債券の市場価格と一致するスプレッドです。
  • ASW(アセットスワップ)スプレッドは、固定利付債を金利スワップと組み合わせて変動金利に変えたとき、変動金利に上乗せされる幅です。
  • OAS(オプション調整後スプレッド)は、金利ツリーなどでオプションの価値を取り除いたうえで求めるスプレッドで、オプション内蔵型債券の比較に使います。

この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「Zスプレッド・ASW・OAS」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析
大分類 (3) 金利の理論、期間構造とスプレッド
協会の学習ポイント 債券のスプレッド(Zスプレッド、ASW(アセットスワップ)スプレッド、OASなど)の計算と利用法を理解する。

Zスプレッド・ASWスプレッド・OASとは

社債などの利回りが国債やスワップに比べてどれだけ高いかを測る尺度が「スプレッド」です。最も単純なのは同じ年限の国債利回りとの差(イールド・スプレッド)ですが、これは満期の1点だけを比べるため、イールドカーブの形状やキャッシュフローの時期の違いを反映できません。そこで、カーブ全体を使うスプレッドが考え出されました。

Zスプレッド(ゼロ・ボラティリティ・スプレッド)

各キャッシュフローを「その期間のスポットレート+Z」で割り引き、合計が市場価格に一致するようなZを求めます。カーブの形を反映できるのが長所です。金利の変動(ボラティリティ)を考えずに求めるため「ゼロ・ボラティリティ」と呼ばれ、オプションが付いた債券ではオプションの価値もZスプレッドに含まれてしまいます。

ASWスプレッド

固定利付債を買い、同時に固定払い・変動受けの金利スワップを組むと、投資家の受け取りは「変動金利+スプレッド」に変わります。このスプレッドがASWスプレッドです。基準がスワップ・カーブなので、銀行など変動金利で資金調達する投資家にとってわかりやすい尺度です。代表的なパー・パー型では、債券価格とパーの差もスワップ側で調整されます。

OAS(オプション調整後スプレッド)

コーラブル債などでは、金利ツリーやモンテカルロ法で各経路のオプション行使を反映させ、モデル価格が市場価格に一致するよう上乗せするスプレッドを求めます。これがOASで、オプションの影響を除いた「純粋な」信用・流動性部分の上乗せを表します。コーラブル債ではZスプレッド=OAS+オプション・コストの関係になり、Zスプレッド>OASです(プッタブル債では逆)。

押さえておきたい公式

P = Σt=1N CFt ÷ (1 + st + Z)tZスプレッドの定義式(年1回複利の場合)
ASW ≒ (スワップ・カーブで割り引いた債券価値 − 市場価格) ÷ アニュイティ係数パー・パー型の近似的な考え方(アニュイティ係数=各期の割引係数の合計)
オプション・コスト = Zスプレッド − OASコーラブル債ではプラス、プッタブル債ではマイナス
記号 意味
CFt t年後のキャッシュフロー
st t年のスポットレート(またはスワップのゼロ・レート)
Z すべての年限に一律で上乗せするスプレッド

具体例で確認

残存3年、クーポン4%(年1回)、市場価格103の社債を考えます。スポットレートは1年1.0%、2年1.5%、3年2.0%とし、ここではスワップのゼロ・レートも同じ水準と仮定します。

  1. スポットレートのままで割り引くと、価値=4÷1.01 + 4÷1.0152 + 104÷1.023 ≒ 105.84
  2. 市場価格103と一致するZを試行錯誤(またはソルバー)で求めると、Z ≒ 0.97%
  3. アニュイティ係数=1÷1.01 + 1÷1.0152 + 1÷1.023 ≒ 2.903
  4. ASW ≒ (105.84 − 103) ÷ 2.903 ≒ 0.98%

同じ債券でも、どの基準カーブを使い、どう上乗せするかでスプレッドの値は少しずつ変わります。比較するときは同じ種類のスプレッド同士で比べることが大切です。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「債券スプレッド(Zスプレッド・ASWスプレッド・OAS)の計算と利用法を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • イールド・スプレッド、Zスプレッド、ASW、OASの定義と基準カーブの違いが問われやすいです。
  • Zスプレッドはボラティリティをゼロとみなすため、オプション付き債券ではオプション価値を含むという点が重要です。
  • コーラブル債:Zスプレッド>OAS、プッタブル債:Zスプレッド<OASという大小関係と、その理由を説明できるようにしましょう。
  • オプション付き債券どうしを比べるときは、OASで比較するのが適切だと記述させる問題に備えましょう。
  • Zスプレッドの計算では、キャッシュフローごとに異なるスポットレート+Zで割り引く計算過程を示せるようにしておきましょう。

要点まとめ

  • Zスプレッド:スポットレート全体への一律の上乗せ幅
  • ASWスプレッド:スワップで変動金利化したときの上乗せ幅
  • OAS:オプションの価値を除いたスプレッド(オプション付き債券の比較に使う)
  • オプション・コスト=Zスプレッド−OAS

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。