ひとことで言うと

  • リスク・バジェッティングは、投資家が全体として許容するリスクを「予算」とみなし、それを資産クラスやマネジャーに割り振って管理する考え方です。
  • 資金の配分ではなくリスクの配分(リスク寄与度)で見るのが特徴で、リスクあたりの期待超過収益が高いところにより多くのリスクを配分します。
  • 資金配分が同じでも、リスク配分は大きく偏っていることがあります(株式60%でもリスクの9割以上が株式など)。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「リスク・バジェッティング」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (3) ポートフォリオの構築とリスク管理
協会の学習ポイント リスク・バジェッティングの基本概念、理論と実務上の留意点について理解する。

リスク・バジェッティングとは

従来の資産配分は「株式に何%、債券に何%」と資金の配分で考えます。しかし、値動きの大きな資産と小さな資産では、同じ金額でもポートフォリオ全体のリスクへの影響がまったく異なります。リスク・バジェッティングは、まず全体として取ってよいリスク(例:ポートフォリオの標準偏差10%、トラッキングエラー2%、VaRの上限など)を決め、それを「予算」として各資産クラスや各マネジャーに割り振る考え方です。

リスク寄与度で考える

各資産(またはマネジャー)が全体のリスクにどれだけ寄与しているかは、リスク寄与度で測ります。リスク寄与度は、その資産のウェイトと、その資産を少し増やしたときに全体のリスクがどれだけ増えるか(限界リスク寄与度)を掛けたもので、すべての資産のリスク寄与度を合計すると全体のリスクに一致します。

最適なリスク配分

理論的には、各資産・各マネジャーについて「追加で1単位のリスクを取ったときに得られる期待超過収益」が等しくなるようにリスクを配分すると、全体のリスクあたりのリターンが最大になります。つまり、リスクあたりの期待超過収益(インフォメーション・レシオなど)が高いところに多くのリスク予算を配分します。

実務上の留意点

  • リスク寄与度の計算は、ボラティリティや相関の推定値に依存します。相関は市場の急変時に上昇しやすく、平時の推定ではリスクが過小評価されるおそれがあります。
  • 期待超過収益(IRなど)の予測は不確実性が大きいため、配分を極端にしない工夫が必要です。
  • 予算の使用状況を定期的にモニタリングし、超過した場合の対応ルールを決めておきます。

押さえておきたい公式

リスク寄与度 RCi = wi × Cov(Ri, RP) ÷ σPΣRCi = σP(全資産のリスク寄与度の合計はポートフォリオ全体のリスク)
全体のアクティブ・リスク = √(Σ(wi × TEi2各マネジャーのアクティブ・リターンが無相関の場合のアクティブ・リスク予算の合算

具体例で確認

株式60%(標準偏差20%)、債券40%(標準偏差5%)、相関係数0.2のポートフォリオを考えます。

  • ポートフォリオの標準偏差:√(0.62×0.22 + 0.42×0.052 + 2×0.6×0.4×0.2×0.2×0.05)≒12.55%
  • 株式のリスク寄与度:0.6×(0.6×0.04 + 0.4×0.002)÷ 0.1255 ≒ 11.85%(全体の約94%
  • 債券のリスク寄与度:0.4×(0.6×0.002 + 0.4×0.0025)÷ 0.1255 ≒ 0.70%(全体の約6%)

資金配分は6:4でも、リスクの配分はおよそ94:6と株式に大きく偏っていることがわかります。リスク・バジェッティングでは、この偏りが投資家の意図に合っているか、株式のリスクあたりの期待リターンに見合っているかを確認します。

試験で問われやすいポイント

  • 資金配分とリスク配分の違い、リスク予算の考え方。
  • リスク寄与度(限界リスク寄与度×ウェイト)の計算と、合計が全体のリスクに一致する性質。
  • 最適なリスク配分の条件(リスクあたりの期待超過収益が等しくなるように配分)と、IRの高いマネジャーにより多くのアクティブ・リスクを配分する考え方。
  • 相関の上昇や推定誤差など、実務上の限界。
  • 2次の記述式では、リスク寄与度を計算過程とともに示させたり、予算配分の見直し案を説明させたりする形が考えられます。

要点まとめ

  • リスク・バジェッティングは、許容リスクを予算として割り振る管理手法。
  • リスク寄与度で見ると、資金配分とは大きく異なる姿が見える。
  • リスクあたりの期待超過収益が高いところに多くのリスクを配分する。
  • 推定値への依存と相関の不安定さに注意し、継続的にモニタリングする。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。