ひとことで言うと

  • テールVaR(期待ショートフォール、CVaR)は、損失がVaRを超えたときの平均的な損失額です。VaRでは見えない「裾の深さ」をとらえます。
  • CFaR(キャッシュフロー・アット・リスク)は、一定の確率でキャッシュフローが期待値からどれだけ下振れしうるかを示します。
  • EaR(アーニング・アット・リスク)は、同じ考え方を会計上の利益に当てはめた指標です。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「テールVaR・CFaR・EaR」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (3) ポートフォリオの構築とリスク管理
協会の学習ポイント テールバリュー・アット・リスク、CFaR、EaRについて理解する。

テールVaR・CFaR・EaRとは

VaRは「一定の確率で損失がこの金額以内に収まる」という境界線を示しますが、境界線を超えたときにどれだけ損をするかは教えてくれません。また、VaRは主に時価で評価できる金融資産のポートフォリオを前提にした指標です。こうした限界を補うために使われるのが、テールVaR、CFaR、EaRです。

テールVaR(期待ショートフォール)

テールVaRは、損失がVaRを超える場合に限った損失の期待値(条件付き期待値)です。たとえば99%テールVaRは、「最悪の1%の状況で平均してどれだけ損をするか」を表します。定義上、同じ信頼水準のVaR以上の値になります。

2つのポートフォリオのVaRが同じでも、一方は裾が深く(まれに非常に大きな損失が出る)、もう一方は浅いことがあります。テールVaRはこの違いを区別できます。さらに、テールVaRは劣加法性(合算したポートフォリオのリスクが個別のリスクの合計を超えない性質)を満たし、分散投資の効果を正しく反映できる「コヒーレントなリスク尺度」とされます。VaRは分布によっては劣加法性を満たさないことがあります。

CFaRとEaR

事業会社や年金の母体企業にとって重要なのは、保有資産の時価よりも、事業から生まれるキャッシュフローや期間利益の安定性であることが少なくありません。CFaRは、一定期間(例:1年)のキャッシュフローが、一定の信頼水準のもとで期待値からどれだけ下振れしうるかを示します。EaRは同じことを会計上の利益について測ります。

これらは時価で評価しにくい資産・負債を多く抱える企業に向いており、金利や為替、商品価格などの変動が業績に与える影響を把握し、ヘッジや資金計画を考える材料になります。一方、推定には業績モデルの構築が必要で、期間も四半期や1年と長くなるため、データが少なく推定誤差が大きくなりやすい点に注意が必要です。

押さえておきたい公式

テールVaR = E[損失 | 損失 > VaR]VaRを超える損失の条件付き期待値。同じ信頼水準のVaR以上になる
正規分布の場合:99%テールVaR ≒ 2.67 × σ同じ条件の99%VaRは約2.33 × σ(期待値を0とした場合)
CFaR = 期待キャッシュフロー − 信頼水準に対応する下限のキャッシュフロー正規分布を仮定すれば、95%CFaR ≒ 1.65 × キャッシュフローの標準偏差。EaRも同様
指標 測る対象 主な利用者
VaR 損失の境界線(一定確率での最大損失) 金融機関・運用機関
テールVaR VaR超過時の平均損失 金融機関・運用機関、保険会社
CFaR キャッシュフローの下振れ幅 事業会社
EaR 会計上の利益の下振れ幅 事業会社・金融機関

具体例で確認

テールVaR:日次損益の標準偏差が1億円で、正規分布に従うポートフォリオを考えます(期待値0)。

  • 99%VaR = 2.33 × 1億円 ≒ 2.33億円
  • 99%テールVaR ≒ 2.67 × 1億円 ≒ 2.67億円(最悪の1%の日の平均的な損失)

実際の分布がファット・テールであれば、テールVaRとVaRの差はさらに開きます。

CFaR:ある企業の来期の営業キャッシュフローの期待値が100億円、標準偏差が20億円で正規分布に従うとします。95%CFaRは 1.65 × 20億円 ≒ 33億円となり、「95%の確率でキャッシュフローは約67億円を下回らない」と解釈できます。設備投資や借入返済に必要な資金がこれを上回るなら、資金調達やヘッジを検討する必要があります。

試験で問われやすいポイント

  • テールVaRは「VaRを超えた場合の平均損失」であり、同じ信頼水準のVaR以上になる、という関係が基本です。
  • VaRは劣加法性を満たさない場合があるのに対し、テールVaRはコヒーレントなリスク尺度である点が問われやすいです。
  • CFaR・EaRは、時価評価しにくい資産を抱える事業会社向けの指標で、キャッシュフローや利益の「期待値からの下振れ」を測る点を押さえましょう。
  • 正規分布を仮定したVaR・テールVaR・CFaRの計算(係数×標準偏差)に慣れておくことが大切です。
  • 記述式では、VaRの限界とテールVaRで補える点を、裾の深さや分散効果の観点から説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • テールVaRはVaR超過時の平均損失で、裾の深さをとらえる。
  • テールVaRは劣加法性を満たすコヒーレントなリスク尺度。
  • CFaRはキャッシュフロー、EaRは利益の下振れ幅を測る。
  • CFaR・EaRは事業会社のリスク管理に向くが、推定誤差が大きくなりやすい。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。