ひとことで言うと

  • ベクトルは数を1列(または1行)に並べたもの、行列は数を縦横の長方形に並べたものです。
  • 基本の演算は和・スカラー倍・積・転置の4つで、特に積は「行×列」で計算し、順番を入れ替えると結果が変わる点が重要です。
  • ポートフォリオのウェイトや分散共分散行列を扱う2次の数量分析の土台になります。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「ベクトル・行列の基本」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (10) ベクトルと行列
協会の学習ポイント ベクトルと行列の基本的な演算に関する学習ポイント(※原文は協会の資料をご確認ください)

ベクトル・行列の基本演算とは

ベクトルは、複数の数をひとまとめにして扱うための道具です。たとえば3銘柄のポートフォリオの投資比率(ウェイト)を w = (0.5, 0.3, 0.2)’ のように1本のベクトルで表せます。証券分析では、特に断りがなければ縦に並べた列ベクトルを基本とし、右肩の「’」(またはT)で転置を表すことが多いです。

行列は、数を m行×n列 に並べたもので、「m×n行列」と呼びます。複数資産の分散と共分散をまとめた分散共分散行列は、行と列の数が等しい正方行列であり、しかも i行j列 と j行i列 の成分が等しい対称行列です。

和とスカラー倍

行列の和は、同じサイズの行列どうしで、同じ位置の成分を足し合わせます。サイズが違う行列は足せません。スカラー倍(ある数cを掛けること)は、すべての成分にcを掛けます。

行列の積ABは、Aのi行目とBのj列目の成分を順に掛けて足したものを i行j列 の成分とします。そのため、Aの列数とBの行数が一致しているときだけ計算でき、m×n行列とn×p行列の積は m×p行列になります。また、一般にAB ≠ BAです(交換法則が成り立たない)。

転置と単位行列

転置A’は、行と列を入れ替えた行列です。積の転置は(AB)’ = B’A’と順番が逆になります。対角成分がすべて1で他が0の正方行列を単位行列Iといい、AI = IA = A が成り立ちます。数の「1」にあたる行列です。

押さえておきたい公式

(A + B)ij = aij + bij  (cA)ij = c × aij和は同じサイズどうし、スカラー倍は全成分にcを掛ける
(AB)ij = ai1b1j + ai2b2j + … + ainbnj(m×n) × (n×p) = (m×p)。一般に AB ≠ BA
(A’)ij = aji  (AB)’ = B’A’転置は行と列の入れ替え。積の転置は順序が逆になる
x’y = x1y1 + x2y2 + … + xnynベクトルの内積(1×n と n×1 の積でスカラーになる)
記号 意味
aij 行列Aのi行j列の成分
A’(AT Aの転置行列
I 単位行列
x’y ベクトルxとyの内積

具体例で確認

2×2行列 A = [[1, 2], [3, 4]]、B = [[2, 0], [1, 3]] を使います([ ]の中の1つ目が1行目、2つ目が2行目)。

  1. 和:A + B = [[1+2, 2+0], [3+1, 4+3]] = [[3, 2], [4, 7]]
  2. スカラー倍:2A = [[2, 4], [6, 8]]
  3. 積AB:1行1列 = 1×2 + 2×1 = 4、1行2列 = 1×0 + 2×3 = 6、2行1列 = 3×2 + 4×1 = 10、2行2列 = 3×0 + 4×3 = 12 より、AB = [[4, 6], [10, 12]]
  4. 積BA:同様に計算すると BA = [[2, 4], [10, 14]]となり、AB と一致しません。
  5. 転置:A’ = [[1, 3], [2, 4]]

また、ウェイト w = (0.6, 0.4)’、期待リターン μ = (8%, 4%)’ とすると、ポートフォリオの期待リターンは内積 w’μ = 0.6×8 + 0.4×4 = 6.4%と計算できます。

試験で問われやすいポイント

  • 行列の積が計算できる条件(左の列数=右の行数)と、結果のサイズを正しく判断できるかが問われます。
  • AB ≠ BA(交換法則が成り立たない)と、(AB)’ = B’A’の順序の入れ替わりはひっかけの定番です。
  • w’μ(1×1のスカラー)と μw’(n×nの行列)のように、転置の位置でサイズがまったく変わる点に注意しましょう。
  • 分散共分散行列が対称行列であること(Σ’ = Σ)は、後の2次形式や微分の計算でも使います。
  • 記述式では、成分ごとの計算過程を省略せずに示すと、部分点を得やすくなります。

要点まとめ

  • 和は同じサイズどうし、スカラー倍は全成分に掛ける
  • 積は「行×列」で、(m×n)×(n×p)=(m×p)。一般にAB≠BA
  • 転置は行と列の入れ替えで、(AB)’=B’A’
  • ポートフォリオの期待リターンは内積w’μで表せる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。