ひとことで言うと

  • 単位根過程とは、AR(1)の係数φがちょうど1になるような非定常な時系列で、代表例がランダムウォーク yt = yt−1 + εt です。
  • ショックの影響が消えずに永久に残り、分散は時間に比例して大きくなるため、平均に戻る性質がありません。
  • 1回階差(差分)をとると定常になるので「1次の和分過程 I(1)」とも呼ばれ、単位根かどうかはディッキー=フラー(DF)検定などで調べます。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「単位根とランダムウォーク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (13) 時系列分析
協会の学習ポイント 単位根過程の概要とランダムウォークの特徴について理解する。

単位根とランダムウォークとは

AR(1)モデル yt = c + φyt−1 + εt は、|φ|<1なら定常で、ショックの影響は時間とともに薄れて平均に戻っていきます。ところがφ=1になると性質ががらりと変わります。特性方程式の根が1(単位円上)になることから、このような過程を単位根過程と呼びます。

ランダムウォークの特徴

φ=1、c=0の場合がランダムウォーク yt = yt−1 + εt です。これをさかのぼって書くと yt = y0 + ε1 + ε2 + … + εt となり、過去のショックがすべて足し上げられた形になります。ここから次の特徴が出てきます。

  • ショックが永続する:一度生じたショックは減衰せず、将来の水準をずっと動かしたままにします。
  • 分散が時間とともに増える:Var(yt) = tσ2 で、期間が長いほどばらつきが大きくなります(標準偏差は√tに比例)。
  • 最適な予測は現在の値:将来の誤差の期待値はゼロなので、何期先でも予測値はyTのままです。

定数項c(ドリフト)が付いた yt = c + yt−1 + εtドリフト付きランダムウォークで、平均的にtc だけ水準が動いていきます。対数株価は、ドリフト付きランダムウォークに近い動きをするモデルとしてよく使われます。

階差をとると定常になる

ランダムウォークの階差 Δyt = yt − yt−1 = εt はホワイトノイズで定常です。このように1回の階差で定常になる系列をI(1)(1次の和分過程)と呼びます。株価水準は非定常でも、その変化率(リターン)は定常に近い、という整理につながります。

単位根検定

単位根かどうかを調べる代表的な方法がディッキー=フラー(DF)検定です。Δyt = c + γyt−1 + εt(γ=φ−1)と変形し、帰無仮説「γ=0(単位根あり)」を検定します。帰無仮説のもとでは推定量が通常のt分布に従わないため、専用の臨界値を使う必要があります。誤差の自己相関に対応するため、階差のラグを加えた拡張版(ADF検定)もよく使われます。

押さえておきたい公式

yt = yt−1 + εt = y0 + ε1 + … + εtランダムウォーク:過去のショックの累積
Var(yt | y0) = tσ2分散は時間に比例して増加(定常AR(1)ではσ2÷(1−φ2)で一定)
Δyt = c + γyt−1 + εt (γ = φ − 1)DF検定の式。帰無仮説 γ=0(単位根あり)

具体例で確認

1期当たりの誤差の標準偏差σが2%の系列を考えます。

  1. 分散の拡大:ランダムウォークなら、25期後の分散は 25 × (2%)2、標準偏差は 2% × √25 = 10%です。100期後なら 2% × 10 = 20%と、ばらつきはどんどん広がります。
  2. ショックの持続:大きさ1のショックが起きたとき、φ=0.5の定常AR(1)では5期後の影響が 0.55 = 0.03125 まで小さくなります。ランダムウォーク(φ=1)では5期後も100期後も影響は1のままです。

試験で問われやすいポイント

  • ランダムウォークの特徴として、ショックの永続性分散がtσ2で増加予測値が現在値のままの3点を説明できるようにしましょう。
  • 定常AR(1)(|φ|<1)との違い(平均回帰の有無、分散が一定か増加か)が対比で問われやすいです。
  • 階差をとると定常になる(I(1))という性質と、水準ではなく変化率で分析する理由が問われます。
  • DF検定の帰無仮説は「単位根あり」で、通常のt分布の臨界値は使えないという点がひっかけになりやすいです。
  • 記述式では、単位根過程の特徴や、非定常データをそのまま回帰に使うと何が問題か(見せかけの回帰)を説明させる形も考えられます。

要点まとめ

  • 単位根過程はφ=1の非定常過程で、代表例がランダムウォーク
  • ショックは消えずに残り、分散はtσ2と時間に比例して拡大する
  • 1回階差をとると定常(I(1))になる
  • 単位根の有無はDF検定・ADF検定で調べ、帰無仮説は「単位根あり」

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。