ひとことで言うと

  • 構造変化とは、制度変更や危機などをきっかけに、時系列データの平均や回帰係数といった性質が途中で変わることで、チャウ検定やダミー変数で確かめます。
  • 季節調整とは、毎年同じ時期にくり返す動き(季節変動)を取り除き、基調的な動きを見やすくする処理です。
  • どちらも放置すると、推定や予測、前期比の読み取りを誤らせる原因になります。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「構造変化と季節調整」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (13) 時系列分析
協会の学習ポイント 時系列データの構造変化や季節調整について理解する。

構造変化と季節調整とは

構造変化

時系列モデルは「同じ仕組みがデータ期間を通じて続いている」ことを前提に推定します。しかし実際には、金融政策の枠組みの変更、為替制度の変更、金融危機、税制改正などで、平均水準やトレンドの傾き、変数間の関係(回帰係数)が変わることがあります。これを構造変化といいます。構造変化を無視して全期間をひとつのモデルで推定すると、係数が前後の平均的な値になってしまい、どちらの期間も正しく表せません。また、水準が途中でジャンプした定常系列は、単位根検定で単位根があるように誤判定されやすいことも知られています。

変化の時点がわかっている場合の代表的な検定がチャウ検定です。全期間をひとつの式で推定したときの残差平方和と、期間を2つに分けて別々に推定したときの残差平方和の合計を比べ、分けたことで当てはまりが大きく改善するならF検定で「構造変化あり」と判断します。変化後の期間に1をとるダミー変数を加え、定数項や係数の変化を直接推定する方法もあります。

季節調整

月次や四半期のデータには、年末商戦や決算期、気候、休日数などによって毎年同じ時期に現れる季節変動が含まれます。このままでは「前月より増えたのは季節のせいか、景気が良くなったからか」が判断できません。そこで、時系列を傾向変動・循環変動・季節変動・不規則変動に分けて考え、季節変動を取り除いたものが季節調整済み系列です。

簡便な方法には、前年同期比で比べる、12か月(4四半期)の移動平均をとる、回帰に季節ダミーを入れる、などがあります。公的統計では、移動平均を組み合わせたX-12-ARIMAなどの季節調整法が広く使われています。季節調整済み系列は前期比で比較できる一方、調整方法やデータ改定で数値が後から変わりうる点に注意が必要です。

押さえておきたい公式

F = [ (RSSR − (RSS1 + RSS2)) ÷ k ] ÷ [ (RSS1 + RSS2) ÷ (n − 2k) ]チャウ検定の統計量。自由度(k, n−2k)のF分布に従う
原系列 = 傾向変動 × 循環変動 × 季節変動 × 不規則変動乗法型の分解(加法型で表すこともある)
記号 意味
RSSR 全期間をひとつの式で推定した残差平方和
RSS1、RSS2 変化点の前・後で別々に推定した残差平方和
k 推定するパラメータの数(定数項を含む)
n 全観測数

具体例で確認

単回帰(k=2:定数項と傾き)を40期間(n=40)のデータで推定し、ある制度変更の時点で構造変化があったかを調べます。

  1. 全期間の残差平方和 RSSR = 120、前半 RSS1 = 40、後半 RSS2 = 50
  2. 分子:(120 − 90) ÷ 2 = 15
  3. 分母:90 ÷ (40 − 4) = 2.5
  4. F = 15 ÷ 2.5 = 6.0
  5. 自由度(2, 36)のF分布の5%臨界値は約3.26なので、6.0はこれを上回り、構造変化なしの帰無仮説は棄却されます。

季節調整の例としては、小売売上高が毎年12月に大きく増える場合、原系列の11月→12月の増加をそのまま「景気回復」と読むのは誤りで、季節調整済み系列や前年同月比で確認する必要があります。

試験で問われやすいポイント

  • 構造変化を無視して推定すると係数がゆがみ、予測も誤ること、その確認方法(チャウ検定・ダミー変数)が問われやすいです。
  • チャウ検定のF統計量の計算では、分母の自由度が n − 2k になる点を間違えないようにしましょう。
  • 時系列の4つの変動要因(傾向・循環・季節・不規則)と、季節調整の目的・方法(前年同期比、移動平均、季節ダミー)を整理しておきましょう。
  • 構造変化のある定常系列が単位根検定で単位根ありと誤判定されやすい点は、見落としやすい論点です。
  • 記述式では、データの性質の変化に気づいたときにどう分析を修正するかを説明させる形も考えられます。

要点まとめ

  • 構造変化=途中で平均・トレンド・係数などの性質が変わること
  • 変化点が既知ならチャウ検定、またはダミー変数で変化を推定する
  • 季節調整=毎年くり返す季節変動を取り除き、基調を見やすくする処理
  • 季節調整済み系列は前期比で比べられるが、改定で数値が変わりうる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。