ひとことで言うと

  • レバード・ベータは負債の影響(財務リスク)を含んだ株式のベータ、アンレバード・ベータは負債の影響を取り除いた事業そのもののベータです。
  • 負債が多いほど株主のリスクは高まるため、同じ事業でもレバード・ベータは大きくなります。
  • 類似企業のベータをアンレバー(負債の影響を除く)→評価対象の資本構成でリレバーすることで、非上場企業や資本構成の異なる企業の株主資本コストを推定します。

この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「アンレバード・ベータとレバード・ベータ」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス
大分類 (8) 企業価値評価
協会の学習ポイント アンレバードベータとレバードベータの関係について理解する。

アンレバード・ベータとレバード・ベータとは

株式のベータ(β)は、市場全体の動きに対する株価の感応度で、CAPMで株主資本コストを求めるときに使います。株価のデータから推定されるベータには、その企業の事業のリスクと、負債を使うことによる財務リスクの両方が含まれています。これがレバード・ベータ(βLです。

負債を使うと、事業の成果にかかわらず利息を優先して支払う必要があるため、株主に残る利益の変動は大きくなります。そのため、同じ事業を営む会社でも、負債比率が高いほどレバード・ベータは大きくなります。そこから負債の影響を取り除いた、事業そのもののリスクを表すベータがアンレバード・ベータ(βU、資産ベータ)です。

なぜ変換が必要なのか

非上場企業や事業部門、新規事業などは、株価がないためベータを直接推定できません。また、上場企業でも資本構成が変わる予定がある場合は、過去のベータがそのまま使えません。そこで、同じ事業を営む類似上場企業のレバード・ベータから負債の影響を除いてアンレバード・ベータを求め(アンレバー)、それを評価対象の目標資本構成に合わせてレバード・ベータに戻す(リレバー)という手順を取ります。

代表的な関係式と前提

よく使われるのは、負債のベータをゼロとし、負債額が一定で法人税の節税効果があるという前提のもとでの関係式(ハマダの式)です。負債比率を一定に保つ前提を置く場合は税率の項を含まない式が使われるなど、前提によって式の形は少し変わります。試験では問題文の前提に合った式を使うことが大切です。

押さえておきたい公式

βL = βU × {1 + (1 − t) × D ÷ E}負債のベータ=0、負債額一定・法人税ありの前提(ハマダの式)
βU = βL ÷ {1 + (1 − t) × D ÷ E}アンレバー:類似企業のβLから事業のリスクを取り出す
rE = rf + βL × (市場リスク・プレミアム)リレバーしたβLをCAPMに入れて株主資本コストを求める
記号 意味
βL レバード・ベータ(負債の影響を含む株式ベータ)
βU アンレバード・ベータ(事業そのもののベータ)
D ÷ E 負債と株主資本の比率(原則として時価ベース)
t 法人税率

具体例で確認

非上場のX社の株主資本コストを推定します。類似上場企業は2社で、法人税率は30%です。X社の目標D/Eは0.8、無リスク金利は1%、市場リスク・プレミアムは6%とします。

  1. 類似企業A(βL=1.2、D/E=0.5):βU = 1.2 ÷ (1 + 0.7 × 0.5) = 1.2 ÷ 1.35 ≒ 0.889
  2. 類似企業B(βL=1.0、D/E=0.25):βU = 1.0 ÷ (1 + 0.7 × 0.25) = 1.0 ÷ 1.175 ≒ 0.851
  3. アンレバード・ベータの平均:(0.889 + 0.851) ÷ 2 ≒ 0.870
  4. X社の資本構成でリレバー:βL = 0.870 × (1 + 0.7 × 0.8) = 0.870 × 1.56 ≒ 1.357
  5. 株主資本コスト:1% + 1.357 × 6% ≒ 9.14%

レバード・ベータのまま単純に平均(1.1)すると、X社の高い負債比率が反映されず、株主資本コストを過小評価してしまいます。

試験で問われやすいポイント

  • アンレバー→平均→リレバーという計算の手順を、計算過程を示しながら解けるようにしましょう。
  • 負債比率が上がるとレバード・ベータと株主資本コストが上がるという方向(MM第2命題との関係)が問われやすいです。
  • D/Eは原則として時価ベースを使う点、(1−t)を掛ける位置を間違えやすい点に注意しましょう。
  • 負債のベータをゼロとする前提や、負債額一定か負債比率一定かで式が変わる点を記述式で説明できるようにしましょう。
  • アンレバード・ベータは事業のリスクを表し、WACC法・APV法でのアンレバード資本コストにつながることも押さえておきましょう。

要点まとめ

  • レバード・ベータは事業リスク+財務リスク、アンレバード・ベータは事業リスクのみ
  • βL = βU × {1 + (1 − t) × D/E}(負債ベータ0、負債額一定の前提)
  • 類似企業のベータをアンレバーし、評価対象の目標資本構成でリレバーする
  • 負債比率が高いほどレバード・ベータと株主資本コストは高くなる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。