企業価値と株式価値の違いとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・株式分析
ひとことで言うと
- 企業価値は、企業全体の価値で、株主と債権者(お金を貸している人)の両方に帰属する価値です。
- 株式価値(株主価値)は、そのうち株主の取り分だけの価値で、企業価値から有利子負債などの債権者の取り分を差し引いて求めます。
- 企業価値はFCFF(企業全体のフリー・キャッシュフロー)をWACCで、株式価値はFCFE(株主に帰属するフリー・キャッシュフロー)を株主資本コストで割り引くのが基本です。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅰ「株式分析」の学習ポイントのひとつ「企業価値と株式価値の違い」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅰ/株式分析 |
|---|---|
| 大分類 | (2) 株式投資と企業のファンダメンタル分析 |
| 協会の学習ポイント | 企業価値評価と株式価値評価の違いについて理解する。 |
企業価値と株式価値の違いとは
企業は、株主から集めたお金(株主資本)と、銀行や社債の投資家から借りたお金(有利子負債)を元手に事業を行っています。事業が生み出したキャッシュフローは、まず債権者に利息や元本として支払われ、残りが株主のものになります。つまり、事業全体が生み出す価値は、債権者と株主の2者で分け合っていることになります。
企業価値:株主と債権者の取り分の合計
企業価値は、企業全体の価値であり、株主と債権者を合わせた資金提供者全体に帰属する価値です。本業が生み出す事業価値に、事業に使っていない余剰資金や投資有価証券などの非事業資産の価値を加えたものとして捉えます。
株式価値:株主の取り分
株式価値(株主価値)は、企業価値から有利子負債など債権者に帰属する価値を差し引いた、株主だけの取り分です。これを発行済株式数で割ると、1株当たりの理論価値が求められ、市場の株価と比べることで割高・割安を判断できます。
評価の方法も「誰の取り分か」でそろえる
企業価値を求めるときは、株主と債権者の両方に分配できるキャッシュフローであるFCFFを、両者の要求収益率を加重平均したWACC(加重平均資本コスト)で割り引きます。一方、株式価値を直接求めるときは、債権者への支払い後に株主に残るキャッシュフローであるFCFE(あるいは配当)を、株主資本コストで割り引きます。キャッシュフローと割引率の組み合わせを取り違えないことが重要です。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| D | 有利子負債の価値 |
| E | 株主資本の価値(時価) |
| rD | 負債コスト(債権者の要求収益率) |
| rE | 株主資本コスト(株主の要求収益率) |
| t | 法人税率 |
具体例で確認
毎年100億円のFCFFが永続的に続く企業を考えます。WACCは5%、余剰現金(非事業資産)は200億円、有利子負債は700億円、発行済株式数は1億株とします。
- 事業価値 = 100億円 ÷ 0.05 = 2,000億円
- 企業価値 = 2,000億円 + 200億円 = 2,200億円
- 株式価値 = 2,200億円 − 700億円 = 1,500億円
- 1株当たり株式価値 = 1,500億円 ÷ 1億株 = 1,500円
市場の株価が1,200円なら割安、1,800円なら割高と判断できます。ここで、企業価値2,200億円を株式数で割って「1株2,200円」としてしまうのが典型的な誤りです。企業価値には債権者の取り分が含まれているため、必ず有利子負債を差し引いてから株式数で割ります。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「企業価値評価と株式価値評価の違い、ゴーイング・コンサーンと企業価値」)。
試験で問われやすいポイント
- 企業価値は株主と債権者の両方、株式価値は株主だけに帰属する価値である、という区別が問われやすいです。
- FCFFはWACCで、FCFEは株主資本コストで割り引く、という組み合わせは混同しやすいポイントです。
- 株式価値=企業価値−有利子負債の計算で、負債を差し引き忘れる・加えてしまうミスが狙われやすいです。
- WACCの負債コストに(1−税率)を掛けて税引後にする点も問われやすいです。
- EVを求めるときに現金等を差し引く点、非事業資産を企業価値に加える点にも注意しましょう。
要点まとめ
- 企業価値は株主+債権者、株式価値は株主の取り分
- 株式価値=企業価値−有利子負債
- FCFF×WACCで企業価値、FCFE×株主資本コストで株式価値
- 1株当たりの価値は、負債を差し引いた株式価値を株式数で割る
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
