ひとことで言うと

  • マーケット・モデル(市場モデル)は、個別銘柄のリターンを「α + β × 市場リターン + 誤差項」という1本の回帰式で表すモデルです。
  • リターンを市場に連動する部分その銘柄に固有の部分に分解できます。
  • ベータの推定や、総リスクの市場リスク・非市場リスクへの分解に使われます。

この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「マーケット・モデル」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (1) 現代ポートフォリオ理論
協会の学習ポイント マーケット・モデル(市場モデル)の概要を理解する。

マーケット・モデルとは

マーケット・モデルは、個別銘柄iのリターンRiが、市場全体のリターンRM(TOPIXなどの市場インデックスのリターン)と直線的な関係にあると考えるモデルです。市場が大きく上がる月には多くの銘柄も上がり、市場が下がる月には多くの銘柄も下がる、という関係を1本の式で表しています。

式の各部分の意味

βiは、市場リターンが1%変化したときに銘柄iのリターンが平均して何%変化するかを表す感応度です。αiは市場リターンが0のときの平均的なリターンを表す切片、εiは市場の動きでは説明できないその銘柄固有の変動(誤差項・残差)で、期待値は0と仮定します。

モデルの仮定と使い方

マーケット・モデルでは、誤差項εiは市場リターンと無相関で、さらに異なる銘柄の誤差項どうしも無相関だと仮定するのが一般的です(シングル・インデックス・モデル)。この仮定により、銘柄どうしの共分散はβi × βj × σM2で計算でき、多数の銘柄の共分散をすべて個別に推定する必要がなくなります。ポートフォリオのリスク計算の手間を大きく減らせることが、このモデルの実務上の利点です。

また、過去の銘柄リターンを市場リターンで回帰分析すれば、その傾きとしてベータが推定できます。

CAPMとの違い

CAPMは期待リターンがどう決まるかを示す均衡モデルで、安全利子率や市場リスク・プレミアムが登場します。一方、マーケット・モデルは実際のリターンの動きを市場リターンで説明する統計的なモデルで、均衡を前提にしていません。どちらにもベータが登場するため混同しやすいですが、役割が異なる点に注意しましょう。

押さえておきたい公式

Ri = αi + βi × RM + εiマーケット・モデル(E(εi) = 0、εiはRMと無相関)
σi2 = βi2 × σM2 + σε,i2  Cov(Ri, Rj) = βi × βj × σM2分散の分解と、銘柄間の共分散(誤差項どうしが無相関の場合)

具体例で確認

ある銘柄の月次リターンについて、α = 0.2%、β = 1.1と推定されたとします。

  1. 市場リターンが3%の月に予想される銘柄のリターン:0.2 + 1.1 × 3 = 3.5%
  2. 実際のリターンが5%だった場合、誤差項(固有要因による部分)は 5 − 3.5 = 1.5%です。
  3. 別の銘柄のベータが0.8、市場の月次標準偏差が5%なら、2銘柄の共分散は 1.1 × 0.8 × 0.052 = 0.0022 と計算できます。

試験で問われやすいポイント

  • マーケット・モデルの式Ri = αi + βiRM + εiと、各項の意味が問われやすいです。
  • CAPM(均衡モデル)とマーケット・モデル(統計モデル)の違いを混同させる問題に注意しましょう。
  • 誤差項どうしが無相関という仮定から、共分散がβiβjσM2で計算できる点がよく確認されます。
  • 総リスクを市場リスクと固有リスクに分解する計算は、このモデルを前提にしています。
  • 回帰分析の傾きがベータ、切片がアルファという対応も押さえておきましょう。

要点まとめ

  • マーケット・モデル=銘柄リターンを市場リターンで説明する回帰式
  • βは市場への感応度、εは銘柄固有の変動
  • 誤差項が無相関なら、共分散の推定が大幅に簡単になる
  • CAPMは均衡モデル、マーケット・モデルは統計モデル

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。