オプションの裁定取引とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・デリバティブ分析
ひとことで言うと
- オプションの裁定取引とは、プット・コール・パリティや価格の上限・下限などの理論関係が崩れたときに、割高なほうを売って割安なほうを買い、リスクなしで利益を得る取引です。
- 手順は、①関係式の左辺と右辺を比べる、②割高な側を売り・割安な側を買う、③満期の損益がゼロになることを確認、の3ステップです。
- 裁定利益は、現時点で手元に残る金額(またはその将来価値)として計算します。
この記事では、証券アナリスト1次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「オプションの裁定取引」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅰ/デリバティブ分析 |
|---|---|
| 大分類 | (3) オプション取引の仕組みと評価 |
| 協会の学習ポイント | オプション価格による裁定取引と裁定利益の算出方法を理解する。 |
オプションの裁定取引とは
オプション価格にはいくつかの理論的な関係があります。代表的なのがプット・コール・パリティ「c + PV(K) = p + S」です。市場価格がこの関係から外れると、将来の株価がどうなっても確実に利益が出る組み合わせを作れます。これがオプションの裁定取引です。
パリティの左右を比べる
左辺「コール+行使価格の現在価値(安全資産)」と、右辺「プット+株式」は、満期にどちらもmax(ST, K)になるポートフォリオです。左辺が右辺より高ければ、左辺を売って右辺を買います。右辺が高ければその逆です。
コンバージョンとリバーサル
「株式の買い+プットの買い+コールの売り」の組み合わせは満期に必ずKの価値になり、実質的に安全資産と同じになります。これをコンバージョンと呼び、プットが割安(またはコールが割高)なときに使います。逆に「株式の空売り+プットの売り+コールの買い」はリバーサルと呼ばれ、コールが割安(またはプットが割高)なときに使います。
上限・下限を使った裁定
パリティ以外にも、「コール価格は株価を超えない」「配当のない株式のヨーロピアン・コールはS − PV(K)を下回らない」といった上限・下限の関係が崩れた場合も、同じ考え方で裁定取引を組めます。
押さえておきたい公式
具体例で確認
株価1,000円、行使価格1,000円、金利2%、満期1年のヨーロピアン・オプションで、コールが80円、プットが50円で取引されているとします。
- 左辺:c + PV(K) = 80 + 1,000 ÷ 1.02 ≒ 80 + 980.39 = 1,060.39円
- 右辺:p + S = 50 + 1,000 = 1,050円
- 左辺が割高なので、左辺を売って右辺を買う:コールを80円で売り、980.39円を借り入れ、プットを50円で買い、株式を1,000円で買う
- いまの資金収支:80 + 980.39 − 50 − 1,000 ≒ +10.39円
満期には、株価が1,000円を上回ればコールが行使されて株式を1,000円で渡し、下回ればプットを行使して株式を1,000円で売ります。どちらでも1,000円を受け取り、それで借入の返済額1,000円を支払えるので、満期の損益はゼロです。つまり、いま受け取った約10.39円(満期時点に換算すると10.39 × 1.02 ≒ 10.60円)が確定した裁定利益になります。この取引は、株式の買い+プットの買い+コールの売りなので、コンバージョンにあたります。
試験で問われやすいポイント
- パリティの左右を計算してどちらが割高かを判定し、正しい売買の組み合わせを選ばせる問題がよく出ます。
- 裁定利益を現時点の金額で答えるのか、満期時点の金額で答えるのかを問題文でよく確認しましょう。
- 安全資産の部分は「行使価格の現在価値」の借入・運用で、割り引きを忘れるミスが多い点に注意しましょう。
- コンバージョン(株式買い+プット買い+コール売り)とリバーサル(その逆)の組み合わせを覚えておきましょう。
- 満期のどの株価でも損益がゼロになることを確認できれば、組み合わせが正しいと判断できます。
要点まとめ
- 理論関係が崩れたら、割高な側を売り、割安な側を買う
- パリティの左辺=コール+PV(K)、右辺=プット+株式
- 裁定利益は両辺の差額(現時点)、満期換算なら(1+r)Tを掛ける
- コンバージョンとリバーサルは、パリティを使った代表的な裁定取引
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
