ひとことで言うと

  • 借入金や社債の支払利息は税務上の損金になるため、その分だけ法人税が減ります。これを負債の節税効果(タックス・シールド)といいます。
  • そのため、企業にとっての実質的な負債コストは金利 ×(1 − 税率)になります。
  • WACCで負債コストを税引後で使うのは、この節税効果を反映するためです。

この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「負債の節税効果」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス
大分類 (5) 資本コストと資本構成
協会の学習ポイント 資本コストと負債の節税効果について理解する。

負債の節税効果とは

企業が資金を調達する方法には、大きく分けて負債(借入・社債)株主資本(株式)があります。負債で調達すると利息を支払い、株式で調達すると株主に配当を支払います。どちらも資金の提供者への見返りですが、税金の扱いが大きく違います。

法人税は利益(課税所得)に対してかかります。支払利息は費用(損金)として利益から差し引かれるため、利息を払うと課税所得が減り、法人税も減ります。一方、配当は税引後の利益から支払われるため、配当を払っても法人税は減りません。この差が「負債の節税効果」です。

実質的な負債コストは「金利×(1-税率)」

たとえば金利4%で借り入れ、税率が30%なら、利息を払うたびにその30%分の税金が浮きます。企業が実際に負担するコストは4%×(1-0.3)=2.8%です。資本コストを考えるときは、負債コストをこの税引後の値で扱います。WACCの式で負債コストに(1-t)を掛けるのはこのためです。

節税効果は企業価値を高める

税金が減るということは、その分だけ債権者と株主の手元に残るキャッシュフローが増えるということです。法人税がある世界では、負債を使うことで企業価値が高まると考えられます。モディリアーニ=ミラー(MM)の修正命題では、負債を一定額で永久に維持する場合、節税効果の現在価値は税率 × 負債額(tD)となり、負債のある企業の価値は「負債のない企業の価値+tD」と表されます。

ただし負債は多ければよいわけではない

節税効果だけを見ると負債は多いほど得に見えますが、実際には負債が増えると倒産リスクや財務的困難のコストが高まります。また、利益が十分に出ていなければ損金にしても税金は減らず、節税効果は得られません。節税効果と倒産コストのバランスで負債の水準を考えるのが、次の論点である最適資本構成です。

押さえておきたい公式

税引後負債コスト = rD × (1 − t)支払利息が損金になる分だけ実質コストが下がる
毎年の節税額 = 支払利息 × t = rD × D × t利息を払うことで減る法人税の額
節税効果の現在価値 = t × D  VL = VU + t × D負債Dを永久に維持し、節税額を負債コストで割り引く場合(MMの修正命題)
WACC = D ÷ (D + E) × rD × (1 − t) + E ÷ (D + E) × rE負債コストは税引後で加重平均する
記号 意味
rD 負債コスト(税引前の金利・利回り)
t 法人税率(実効税率)
D、E 負債、株主資本の時価
VL、VU 負債のある企業の価値、負債のない企業の価値
rE 株主資本コスト

具体例で確認

営業利益が1,000万円の企業が、1億円を金利4%で借り入れているケースと、借入がないケースを比べます。税率は30%とします。

項目 借入なし 借入1億円
営業利益 1,000万円 1,000万円
支払利息 0円 400万円
税引前利益 1,000万円 600万円
法人税(30%) 300万円 180万円
債権者と株主の受取合計 700万円 400万円+420万円=820万円
  1. 法人税は300万円から180万円へ120万円減少します。これは支払利息400万円×30%と一致します。
  2. 債権者と株主が受け取る合計も700万円から820万円へ、ちょうど120万円増えています。
  3. 実質的な負債コストは、(400万円-120万円)÷1億円=2.8%、つまり4%×(1-0.3)です。
  4. この借入を永久に続けるなら、節税効果の現在価値は0.3×1億円=3,000万円(120万円÷4%)です。

試験で問われやすいポイント

  • 支払利息は損金になるが、配当は損金にならないという税務上の違いが、節税効果の出発点として問われやすいです。
  • 税引後負債コスト=rD×(1-t)の計算と、WACCで負債コストだけに(1-t)を掛ける理由を確認しましょう。株主資本コストには掛けない点がひっかけになりやすいです。
  • 毎年の節税額=支払利息×税率、永久に負債を維持する場合の現在価値=t×Dの計算が狙われやすいです。
  • 税率が上がると節税効果は大きくなり、税引後負債コストは下がるという影響の方向に注意しましょう。
  • 赤字で課税所得がない場合は節税効果が得られないこと、負債の増加は倒産コストも高めることも押さえておきましょう。

要点まとめ

  • 支払利息は損金になるため、負債には法人税を減らす節税効果がある
  • 実質的な負債コストは金利×(1-税率)で、WACCでも税引後で使う
  • 永久負債の節税効果の現在価値はt×Dで、VL=VU+tD
  • 節税効果は倒産コストとのバランスで評価する必要がある

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。