ひとことで言うと

  • 偏微分とは、多変数関数で1つの変数だけを動かし、他の変数は定数とみなして微分することです。
  • 記号は∂f/∂xやfxなどを使います。
  • 偏微分を組み合わせた全微分で、複数の変数が同時に動いたときの変化を近似できます。

この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「多変数関数と偏微分」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計
大分類 (8) 微分の基礎
協会の学習ポイント 多変数関数の微分、偏微分とその計算方法と応用例について理解する。

多変数関数と偏微分とは

ファイナンスで扱う量は、多くの場合、複数の要因に左右されます。ポートフォリオのリスクは各資産の投資比率に、オプション価格は原資産価格・ボラティリティ・金利・残存期間に依存します。このように変数が2つ以上ある関数を多変数関数といいます。

偏微分の考え方

f(x, y)で、yを固定したままxだけを少し動かしたときの変化の割合を「xについての偏微分」といい、∂f/∂x(ラウンド・エフ・ラウンド・エックス)と書きます。計算方法は簡単で、y を定数とみなして、1変数のときと同じようにxで微分するだけです。同様にyについての偏微分∂f/∂yも求められます。

全微分

xとyが同時に少しずつ動いたときの関数の変化は、それぞれの偏微分に変化量を掛けて足し合わせたもので近似できます。これを全微分といい、df=(∂f/∂x)dx+(∂f/∂y)dyと書きます。テーラー展開の1次近似を多変数に広げたものと考えられます。

応用例

オプション価格を原資産価格で偏微分したものがデルタ、ボラティリティで偏微分したものがベガ、といったように、各要因に対する感応度(グリークス)は偏微分そのものです。また、ポートフォリオの分散を投資比率の関数として偏微分し、ゼロとおいて解くことで最小分散ポートフォリオを求めるなど、最適化の計算でも偏微分は欠かせません。偏微分をもう一度偏微分した2階偏微分もあり、∂2f/∂x2や∂2f/∂x∂yと書きます。

押さえておきたい公式

∂f/∂x = limh→0 {f(x+h, y) - f(x, y)} ÷ hyを固定してxだけを動かしたときの変化の割合
df ≒ (∂f/∂x) dx + (∂f/∂y) dy全微分:複数の変数が同時に少し動いたときの近似
記号 意味
∂f/∂x、fx xについての偏微分(1階偏導関数)
2f/∂x2、fxx xについて2回偏微分したもの
2f/∂x∂y、fxy xとyで1回ずつ偏微分したもの(交差偏微分)
dx、dy 各変数の微小な変化量

具体例で確認

f(x, y)=x2y+3y2について考えます。

  1. xについて偏微分(yは定数扱い):∂f/∂x = 2xy
  2. yについて偏微分(xは定数扱い):∂f/∂y = x2 + 6y
  3. 点(2, 1)では、∂f/∂x = 4、∂f/∂y = 4 + 6 = 10、f(2, 1) = 4 + 3 = 7
  4. xが0.1、yが0.05増えたときの全微分による近似:df ≒ 4×0.1 + 10×0.05 = 0.9 → f ≒ 7.9
  5. 実際の値:f(2.1, 1.05) = 4.41×1.05 + 3×1.052 ≒ 7.938

全微分で、2つの変数が同時に動いたときの変化をおおむね近似できていることがわかります。なお交差偏微分は ∂2f/∂x∂y = 2x で、どちらの順に微分しても同じになります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「多変数関数の微分、偏微分とその計算方法・応用例を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 偏微分は他の変数を定数とみなして微分する、という計算ルールが基本です。定数扱いすべき項を残すミスに注意しましょう。
  • ∂f/∂xなどの記号の意味、2階偏微分・交差偏微分の表記を読み取れるようにしておきましょう。
  • 全微分df=fxdx+fydyによる近似計算が問われやすいです。
  • オプションのグリークスやポートフォリオのリスク感応度など、偏微分=ある要因に対する感応度という解釈がよく使われます。
  • 最適化ではすべての偏微分を0とおくことが最適点の必要条件になる点につながります。

要点まとめ

  • 偏微分=1つの変数だけ動かし、他は定数として微分
  • 記号は∂f/∂x、fxなど
  • 全微分 df≒fxdx+fydy で同時変化を近似
  • グリークスや最小分散ポートフォリオの計算に使う

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。