金利変動モデル(確率過程)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・債券分析
ひとことで言うと
- 金利の動きを、平均的な方向を表すドリフト項と、ランダムな揺れを表すボラティリティ項からなる確率過程で表したものが金利変動モデルです。
- パラメータから理論的にイールドカーブを導く均衡モデル(バシチェック、CIRなど)と、現在の市場カーブに合うように作る無裁定モデル(ホー・リー、ハル・ホワイトなど)に大別されます。
この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「確率過程による金利モデル」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 金利変動モデルに基づく債券価格評価 |
| 協会の学習ポイント | 確率過程による金利変動モデルの仕組み、イールドカーブの導出と利用法を理解する。 |
確率過程による金利モデルとは
将来の金利は不確実ですが、「平均的にはこちらへ動く」という傾向と「予測できない揺れ」の2つに分けて考えることができます。金利変動モデルでは、短期金利rのごく短い時間dtでの変化drを、ドリフト(期待される変化)とボラティリティ(ランダムな変化の大きさ)を使った式で表します。ランダムな部分は標準ブラウン運動dzで表され、その分散はdtに比例します。
均衡モデル
経済の前提から短期金利の動きを決め、そこから理論的に各年限の債券価格やイールドカーブを導くモデルです。バシチェック・モデルは、金利が長期平均bに向かって速さaで引き戻される平均回帰性を持ちますが、ボラティリティが一定なので金利がマイナスになる可能性があります。CIRモデルはボラティリティを√rに比例させることで、金利が低いほど揺れが小さくなり、金利が負になりにくい性質を持ちます。少ないパラメータで経済的な解釈がしやすい反面、導かれるカーブが現在の市場カーブと一致するとは限りません。
無裁定モデル
現在の市場のイールドカーブを所与として、それと完全に整合するようにドリフトを時間に応じて決めるモデルです。ホー・リー・モデルは時間に依存するドリフトθtと一定のボラティリティを持ち、ハル・ホワイト・モデルはこれに平均回帰性を加えたものです。市場価格と整合するため、オプション付き債券や金利デリバティブの評価に向いています。二項ツリーのカリブレーションも、この考え方に沿ったものです。
イールドカーブの導出と利用
モデルで将来の短期金利の分布が決まれば、各満期の割引債価格(=将来の短期金利による割引の期待値)が計算でき、そこからスポットレートのカーブが得られます。均衡モデルでは理論カーブと市場カーブを比べて割安・割高を判断する使い方が、無裁定モデルでは市場と整合した価格でオプションを評価する使い方が典型的です。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| a | 平均回帰の速さ |
| b | 短期金利の長期平均水準 |
| σ | 金利のボラティリティ |
| dz | 標準ブラウン運動の増分(平均0、分散dt) |
具体例で確認
バシチェック・モデルで、a=0.2、b=3.0%、σ=1.0%、現在の短期金利r=1.0%とします。1か月(dt=1/12年)の変化を考えます。
- ドリフト(期待される変化):0.2×(3.0%−1.0%)×1/12≒+0.033%
- ランダムな変化の標準偏差:1.0%×√(1/12)≒0.289%
金利が長期平均より低いので平均的には上昇方向に引き戻されますが、1か月単位ではランダムな揺れのほうがずっと大きいことがわかります。金利が長期平均を上回っていれば、ドリフトはマイナスになります。
試験で問われやすいポイント
- 均衡モデルと無裁定モデルの違い(市場カーブと一致するか、何に使うか)が問われやすいです。
- バシチェックとCIRの違い、特にボラティリティの形と負の金利の可能性を区別しましょう。
- 平均回帰項a(b−r)の符号から金利の期待される方向を判断させる問題に注意しましょう。
- 記述式では、オプション付き債券の評価に無裁定モデルが好まれる理由を説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- 金利の変化=ドリフト項+ボラティリティ項で表す
- 均衡モデル(バシチェック、CIR)は経済的な前提からカーブを導く
- 無裁定モデル(ホー・リー、ハル・ホワイト)は現在のカーブと一致させる
- 平均回帰性は金利を長期平均へ引き戻す性質
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
