DCF法とマルチプル法の関係とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- マルチプル(倍率)は、DCF法の前提(資本コスト・成長率・資本利益率)を1つの数字に凝縮したものと捉えられます。
- そのため、DCF法とマルチプル法は対立するものではなく、互いの結果をチェックし合う関係にあります。
この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「DCF法とマルチプル法の関係」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (8) 企業価値評価 |
| 協会の学習ポイント | DCF法とマルチプル法の関係について理解する。 |
DCF法とマルチプル法の関係とは
DCF法は、将来のフリー・キャッシュフロー(FCF)を予測し、資本コストで割り引いて企業価値を求める方法です。企業固有の見通しを細かく反映できる反面、予測や割引率の置き方で結果が大きく変わります。一方、マルチプル法は類似企業の倍率を使うため手軽で市場の評価を反映しやすいものの、なぜその倍率なのかという根拠が見えにくい面があります。
両者をつなぐのは、「倍率は割引モデルを変形したもの」という考え方です。一定成長を仮定すると、EV/EBITDAやPERは資本コスト・成長率・再投資の効率で決まる式に書き直せます。つまり、ある倍率を使うことは、暗黙のうちに特定の資本コストや成長率を仮定していることになります。
相互チェックの2つの使い方
1つ目は、DCFの結果を倍率に換算して確かめる方法です。DCFで求めた企業価値を来期EBITDAなどで割り、類似企業の倍率とかけ離れていないかを見ます。大きく外れていれば、成長率や利益率の前提が楽観的すぎないかを見直すきっかけになります。
2つ目は、市場の倍率からDCFの前提を逆算する方法です。市場の倍率が暗に示している成長率(インプライド成長率)を求め、それが業界の見通しとして妥当かどうかを考えます。
ターミナル・バリューでの使い分け
DCF法のターミナル・バリュー(継続価値)は、永久成長率を使う方法のほか、予測最終年度のEBITDAに倍率を掛ける方法(エグジット・マルチプル法)でも求められます。両方で計算して整合しているかを確認するのも、実務でよく行われるチェックです。
押さえておきたい公式
| 比較 | DCF法 | マルチプル法 |
|---|---|---|
| 価値の根拠 | 将来のFCFと資本コスト | 類似企業の市場評価 |
| 長所 | 企業固有の前提を反映できる | 簡便で市場の見方を反映しやすい |
| 短所 | 予測・割引率の感応度が高い | 前提が見えにくく、市場全体の過熱も取り込む |
具体例で確認
例1:倍率からの逆算
類似企業のEV/EBITDAが8倍、評価対象のFCF÷EBITDAが0.4、WACCが8%とします。
- 0.4 ÷ (0.08 − g)=8 → 0.08 − g=0.05
- インプライド成長率 g=3%
業界の長期成長見通しが1%程度なら、この倍率をそのまま当てはめると割高な評価になるおそれがあります。
例2:ターミナル・バリューの整合性確認
予測最終年度(5年目)のFCFが50、EBITDAが120、WACC8%、永久成長率2%とします。永久成長率法のターミナル・バリューは50 × 1.02 ÷ (0.08 − 0.02)=850で、EBITDA比では約7.1倍です。類似企業の倍率が10倍前後なら、どちらの前提がずれているのかを検討します。
試験で問われやすいポイント
- 倍率は資本コスト・成長率・資本利益率の関数であり、DCFと理論的につながっているという説明が問われやすいです。
- 倍率からインプライド成長率や資本コストを逆算する計算に慣れておきましょう。
- ターミナル・バリューを永久成長率法とエグジット・マルチプル法で求め、両者の整合性を確認する考え方が出題されやすいです。
- 記述式では、DCF法とマルチプル法の長所・短所や、評価結果が食い違ったときの原因を説明させる形が考えられます。
- マルチプル法は市場全体が割高なときにその割高さを取り込んでしまう、という限界にも注意しましょう。
要点まとめ
- マルチプルはDCFの前提を1つの数字に凝縮したもの
- DCFの結果を倍率に直す、倍率から前提を逆算する、の2方向でチェックできる
- ターミナル・バリューは永久成長率法とエグジット・マルチプル法で比べると確認しやすい
- どちらか一方に頼らず、併用して評価の妥当性を高める
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
